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子どもの成長を感じるとき①:発達支援の現場から考える

投稿日:2020年6月21日 更新日:

長年にわって発達支援の現場に関わっていると子どもたちの成長を実感する場面に出会うことがあります。

そして、その実感を他の職員や保護者の方と共有できることは素晴らしいことだと感じます。

日々の現場の中では、どちらかという安全・安心できる環境を作ることを大切にしており、そうした中で、困った出来事などが割合多く取り上げられることが多くあります。

何が問題であるか?という問題や課題設定とそれに対する対応は、どの現場でも非常に重視され、話の大半を占めることが多いのではないかと思います。

一方で、子どもたちは日々成長しており、大人が気づかないところで、これまでできなかったことができるようになる、興味の幅が増える、困った時でも人に頼れるようになるなど、多くの成長が見られます。

今回は、発達支援の現場で、子どもの成長を感じた私の体験を最近の出来事からお伝えしていこうと思います。

 


私はこれまで、療育施設で未就学児を対象とした療育の指導員、そして、現在は放課後等デイサービスで支援員として働いています。

こうした現場には重度から高機能と言われる知的に遅れのない子、その中でも、様々な発達特性のあるお子さんたちが利用されています。

こうした発達支援の現場で私が最近子どもたちの成長を感じた出来事がいくつかあります。今回はその中の1事例についてお話します。

小学生男子のA君は、私が初めてA君に会ってから、2年以上になるお子さんです。最初は、とにかく落ち着きがなくじっとしていることが苦手、そして、自分のやり方やルールがあり思うようにいかないと癇癪を起こすことが多くありました。

大人や他児に対しても言動が気になるとすぐに言動への説明を求めたりします。A君が大人の説明を理解することは難しく、徐々に不満が高まり、気づくと爆発するということが何度もありました。

こうして一度爆発すると落ち着くまでに時間がかかります。気持ちのコントロールに関しては、一人の支援者がしっかりと付きながら時間をかけて対応してきました。

こうしたA君でしたが、ここ最近大きな変化がありました。

まずは、大人の話を理解できるという場面が増えました。これまで、説明しても理解が難しかった場面でも、「そーなんだ」「わかったよ」などA君から納得したという返答が増えました。

説明内容も、子どもたちに応じてわかりやすくを意識していますが、以前のA君と比べても同じような説明内容、あるいは少し難しい表現でも理解できていると感じることが多くなりました。

また、周囲の状況をよく見られるようになったのも大きな特徴です。これまで、ゲームなどをして負けると癇癪を起すなどの場面がありましたが、負けは負けとして認めたり、「○○くんは○○したかったんじゃない」など他児の気持ちを察する言葉も出てきました。

ですので、他児との遊びがうまくいったという体験も以前よりも非常に多くなったと感じます。

表情も大人の表情をよく見たり、他児の様子を観察しているような表情も見られるようになりました。

こうした理解力や周囲の状況把握ができるようになり、さらに、気持ちのコントロールにも変化がありました。これまで、何かがうまくいかないとすぐに気持ちが沸点に達することが多かったA君ですが、そうしたこともほとんどなくなり、気持ちが高まる前に、大人と相談することで落ち着く様子が増えました。

私はこうした行動の変化から、当時のA君とは別人だと感じることが最近多くあります。

こうした変化は、ある一つの出来事というよりは、出来事と出来事が積み重なりながら成長を実感することが多くあります。

ですので、成長の感じ方は急にというよりも、過去を振り返ってみたときに、じわじわと実感することが多いように思います。

また、A君の行動の変化は、ご家庭や学校でも同じように変わったと共感できる部分も多く、どこかで身に着けた(あるいは複数の場で)能力が、他の場所でも般化できているのだと感じます。

 


発達支援の現場に関わっていると、日々の困難さに自然と目が向くことが多くあります。当然、こうした問題への着目と対応は必要です。

しかし、子どもたちの成長に目を向ける時間を意識的にとることで、自分たちの取り組みの意味がより明確になるのではないかと感じます。

こうした子どもたちの成長は、本人の頑張りだけでなく、保護者や学校の先生、そして他児など周囲の支えがあって初めて縦に伸びる成長だと思います。

今度も自分自身の取り組みを見直す上でも、子どもたちの成長といったポジティブな側面にもより目を向けていこうと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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