療育(発達支援)といった言葉が以前よりも社会の中で浸透し始めている印象があります。
こうした背景には、発達障害への理解が進み、児童発達支援や放課後等デイサービスなどの支援の拡充が影響してると言えます。
一方で、療育といった言葉を様々な書籍で調べると、様々な定義の違いがあるように思います。
それでは、療育とはそもそもどのように定義されているのでしょうか?
そこで、今回は、療育とはどのように定義されているのかについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「てんねんDr.(2025)子どもの発達障害がよくわかる本 これ1冊で理解もサポートも!SB Creative.」です。
療育とはどのように定義されているのか?
以下、著書を引用しながら見ていきます。
実は療育には定義がありません。しかし「障害があるか、もしくはあるかもしれない子どもに対し、個々の状態や特性に応じた発達を促す支援のこと」と捉えればよいでしょう。
著書の内容から、実は療育には厳密な定義はないと記載されています。
その上で著書には、障害のある子ども(その可能性のある子どもも含め)に対して、豊かな発達を促すための支援をしていくといった非常に広義な意味が含まれていると言えます。
最近では、療育とほぼ同義の言葉である〝発達支援″といった言葉も使用されるようになってきています。
これまで以上に、医療モデル→社会モデルが強調されるようになったことが〝発達支援″といった言葉が使用されるようになった背景だと言われています。
また、他の書籍等を参照すると、〝療育とは社会の中で生きていく力を育むことを目的としたもの″といった定義が多いと言えます。
このように、療育(発達支援)には、厳密な定義はないにしても、概ね、子どもの豊かな発達を支援する、社会の中で生きていく力を育むといった意味が含まれていると言えます。
著者の経験談
療育(発達支援)の言葉の定義を理解していく上で、多くの実践経験がとても大切だと言えます。
なぜなら、いくら言葉の定義を知っていたとしても、実践者が腑に落ちる感覚がないと、言葉が持つ本質的な意味を理解したことにはならないからです。
ここでは、著者のこれまで10年以上にわたる療育経験を踏まえて、療育の定義について改めて考えてみたいと思います。
ポイントは大きく、1:個人要因、2:環境要因、3:時間軸にあると感じています。
1:個人要因
まずは、〝個人要因″ですが、これは、例えば、発達特性といった本来持っている特徴に対して、苦手なことへの配慮、得意なことを見つけ伸ばしていくことなどがあると言えます。
例えば、苦手なことは可能な限り克服するように努めるのではなく、人に相談する力を養うこと、苦手を補うツール(文字がうまく書けない→パソコン・タブレットを使用する)をうまく活用できるようになるなどがあります。
得意なことは、好きなことと密接に関連づいていることがあります。
中でも、子どもの興味関心の把握は、その後の趣味や学びの拡充に繋げていくことに大きく貢献していくと思います。
このように、〝個人要因″への理解・支援は、子どもの豊かな成長においてとても大切だと実感しています。
2:環境要因
次に、〝環境要因″ですが、これは、例えば、家庭や学校など繋がりの中で、子どもを理解していくことだと言えます。
子どもは一つの環境だけで過ごすわけではありません。
様々な環境を横断して日々を過ごしています。
そのため、子どもが過ごす様々な環境に対して、理解を深めていくこと(アセスメント・情報共有など)で、子どもが今どのような日々を過ごしているのか?環境の違いに対してどのような行動を取っているのか?といった生態学的な理解を深めていくことができます。
著者は放課後等デイサービスで療育をしているため、子どもが過ごす様々な環境を理解していくことで、放課後等デイサービスの意味(療育の本質)がよりクリアに見えてくることがあります。
例えば、家庭や学校とは異なる体験価値の提供、居場所支援など重要なキーワードが見えてくることを実感しています。
3:時間軸
最後に〝時間軸″があります。
これは、子どもの育ちを、過去↔現在↔未来といった時間軸で理解する視点だと言えます(〝発達的視点″とも言えます)。
著者は、これまで縦断的に多くの子どもの成長を見守ってきました。
そのため、例えば、1年生の頃の姿、6年生の頃の姿の違いを様々なケースを通して体感していくことで、改めて新1年生と出会った場合、どのような時間軸(発達段階)を今この子どもは歩いているのか?といった理解に繋げていくことができます。
その他、子どもの今の姿は過去の積み重ねでできている、ある程度先の未来を想定して今できる取り組みは何かを考えることができるなど、多くの利点が〝時間軸″の視点にはあると実感しています。
以上、【療育とはどのように定義されているのか?】療育経験を通して考えるについて見てきました。
療育当初は、個人要因にばかり目が向きがちでした。
それもそのはずで、環境要因や特に時間軸に関しては、ある程度、経験知が高まっていかないと理解できない点が多いからです。
一方で、豊富な経験値のもと、自ら子どもの発達に真摯に向き合い、今、そして、これから必要な支援を考えていくことで、療育(発達支援)の本質が少しずつ見えてくるのだと思います。
そして、その時、はじめて療育の定義が肌感覚においても理解可能になっていくのだと言えます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育実践を通して、療育の定義・意味・目的への理解を深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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