【自閉症と心の理論】“他人だけでなく自分も分かりにくい”は本当か?

心の理論

自閉症における「心の理論」といえば、一般的には「他者の気持ちを理解することの難しさ」が注目されることが多いテーマです。

一方で、近年では、こうした他者理解だけでなく、「自分自身の気持ちをどのように捉えているのか」という視点にも関心が向けられています。

実際に、自閉症の人の中には、自分の感情に気づきにくい、あるいは言葉としてうまく表現できないといった特徴が見られることがあります。これは単なる言語の問題ではなく、「自己の心の状態をどのように理解しているか」という点とも関係している可能性があります。

 

それでは、自閉症の人は、自分の気持ちをどのように捉えているのでしょうか?

 

本記事では、自閉症における心の理論の特徴を「自己理解」という視点から捉え直し、その背景やメカニズムについて整理していきます。

 

※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。

 

 

今回参照する資料は「下山晴彦(監修)(2018)公認心理師のための「発達障害」講義.北大路書房.」です。

 

 

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【自閉症と心の理論】“他人だけでなく自分も分かりにくい”は本当か?

以下、著書を引用しながら見ていきます。

「心の理論」の障害だけでなく「自己の心の理論」にも障害があるのでは、ということが欧米で注目されるようになりました

 

ASDは、自分の感情をうまく認知できないために、将来的にうつ病や不安症になったり、社会での適応がいっそう困難になったりするリスクが高いと考えています。

 

著書の内容から、自閉症の人たちは、〝心の理論″の障害に加え、〝自己の心の理論″にも障害があると考えられるようになってきています。

そして、自分の気持ちへの認知ができない(弱い)ことが影響して、うつ病や不安症など社会適応の難しさが生じる可能性が高いと考えられています。

心の理論″とは、英語で〝theory of mind″と表記されます。

一方、〝自己の心の理論″とは、英語で〝theory of own mind″との表記があります。

〝自己の心の理論″とは、自分の感情状態への気づきや自分の感情を言語化する能力とも言えるかと思います。

自閉症の人たちは、他者の心の状態への理解の難しさに加え、自分自身の気持ち(感情)の理解にも困難さがあると考えられています。

補足として、〝自己の心の理論″の困難さには、〝心の理論″の障害以外にも、〝実行機能の障害″や〝弱い中枢性統合″なども影響していると考えられています。

 

 

著者のコメント

著者はこれまでの療育現場を通して、様々な自閉症の人たちとの関わりがあります。

その中で、自閉症の人たちは〝心の理論″の困難さといった〝他者の心の状態の理解の難しさ″が見られるのと同時に、自分の気持ちの理解にも難しさがあると感じることが多くあります。

例えば、他児から嫌なことをされた、または、嫌な出来事があった際に、何も話すことなく自分の気持ちに蓋をしているように見える子や、ただただイライラし続けている子もいます。

こうした子どもたちに、著者が自分の気持ちを言葉にして伝えることを促してもほとんど返答が来ないため、さらに、著者が子どもたちの気持ちを推測して〝○○があったから嫌な思いになったのかな?″などと問いかけると頷くといった感じです(何も返事がない場合もあります)。

一方で、うれしい気持ちを言葉にする方がうまくできる子どもたちが多いといった印象があります。

例えば、〝○○君と遊べて楽しかった!″〝○○遊びが楽しかった!″など肯定的な感情の方が理解しやすいように感じます。

さらに、肯定的・否定的感情を問わず、自己の複雑な感情認知となるとさらに難易度が上がると思います。

例えば、他児との関わりの中で、色々と嫌なこともあったが良いこともあり、結果として様々な感情を他児と共感できてよかったという体験は非常に複雑な感情が混ざっています。

白・黒と明瞭に分けることは難しいですが(そもそも感情とは主観的であり白黒をつけることが難しいのですが・・・)、人は様々な経験の中で快・不快といった感情を体験していきながら自分の内にある気持ちの変化(ゆらぎ)について理解していきます。

このような、複雑な感情状態についての言語化となると、大人の自閉症の方でも難しさがあるように感じます。

 


以上、【自閉症と心の理論】“他人だけでなく自分も分かりにくい”は本当か?について見てきました。

自分の気持ちを言葉にすることは想像以上に難しいことです。

そして、自分の気持ちを言葉にしていくためには、他者との共感や他者(大人)が気持ちを言葉にして伝え、それを理解する力が必要になります。

そのため、著者も子どもたちとの関わりの中で、気持ちを言葉にして伝えていくように心がけているのと同時に、子どもたちの感情の育ちに貢献する体験を常に与えていくことを目指しています。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で子どもたちの感情の育ちに寄与していけるような療育を目指していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

自閉症の自己理解に関する記事は以下で紹介しています。

関連記事:「【なぜ自己理解(特性理解)は必要?】大人の発達障害(ASD)の自己理解の必要性

関連記事:「【自閉症児への自己理解の支援】発達障害児支援の現場を通して考える

 

心の理論に関するお勧め書籍は以下で紹介しています。

関連記事:「【臨床発達心理士が厳選】心の理論に関するおすすめ本:初級~中級者向け

 

下山晴彦(監修)(2018)公認心理師のための「発達障害」講義.北大路書房.

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