自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)は、対人・コミュニケーションの困難さと限定的興味と反復的(常同)行動を主な特徴としています。
著者は療育現場での経験を通して、未就学児から学童期、そして、成人の方まで様々なASDの方と関わる機会がありました。
こうした経験を通して、ASDの方には確かに共通する行動特徴があると実感しています。
それでは、こうしたASDの行動特徴は児童期から成人期にかけてどのような特徴があるのでしょうか?
今回は、ASDの中でも児童期から成人期の興味の偏りの部分に焦点を絞り、著者の療育経験も踏まえてその特徴についてお伝えします。
今回、参照する資料は、「公認心理師のための「発達障害」講義」です。
ASDにおける児童期から成人期の行動特徴(興味の偏り)
以下、著書から行動特徴を引用します。
・変わったものへの興味
・行動、思考が硬い
・切り替えが苦手
・融通がききにくい
・予定が変わると混乱する
・全体の把握が苦手
・感覚の敏感/鈍感さ
・感覚面への興味
それでは、著者の経験も含め、一つ一つ見ていきたいと思います。
・変わったものへの興味
ASDの特徴で良く見られるものです。興味関心が狭く、その興味も独特であることが特徴としてあります。
例えば、カレンダーの日程、電車の時刻、幾何学模様、電話番号など、非常に興味が限定されているものもあれば、電車や車、虫、天体、植物などある種、一般的とも言われるものまであるかと思います。
後者の方は、子どもたちの中に興味を持つ人も多いと思いますが、一極集中の興味という印象があります。
著者の療育現場でも、こうした興味関心が非常に限定されている人は多くいます。
こうしたある種、限定されたものへの興味関心は、強みにもなりまし、ASDの人と信頼関係をつくる重要な共有ツールになります。
そのため、ASDの人の興味関心を知りながら関わりを深めていくことがとても大切です。
・行動、思考が硬い
行動・思考が硬いという特徴は、例えば、AならばB、CならばDというように、直線的に物事を考える特徴があります。
そのため、AだけどBもCもあるという柔軟な思考が難しいため、例えば、遊びのルールを設定すると、それを頑なに守ろうとするなどの行動・思考の特徴が見られます。
著者の療育現場でも、一度ルールを決めるとそれを変更することが難しい場合があります。
こうした場合には、簡単なルールから始め、時には無理のない程度に変化を加えたり、視覚的な情報なども活用し、少しずつステップアップしていけるように関わっています。
・切り替えが苦手
ASDには過集中傾向が多く見られます。そのため、ある活動をしていると、他の活動に切り替えるのに時間がかかることがよくあります。
著者の療育現場でも、切り替えの苦手な人たちは多くいます。例えば、一度遊びを始めると遊びを中断できないなどです。
こうした場合には、事前に活動のスケジュールなどを示す、終わりを示すなどの対応するようにしています。
・融通がききにくい
融通がききにくとは、臨機応変な行動が難しいことでもあります。
ASDは変化に柔軟に対応することが特性上難しいため、融通がききにくいことが特徴としてあります。
療育現場でも、一つのことを言っても一つの理解という人は多いため、できるだけ情報量を減らし、端的に説明するようにしています。
・予定が変わると混乱する
ASDによく見られる特徴です。ASDの方は、実行機能に困難さがあるため、急な予定変更が難しいことが多くあります。
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著者の療育現場では、予定の変更による混乱は非常によく起こるため、事前の見通しを立てることをとても大切にしています。
どうしても予定の変更が必要な際には、できるだけ早めに予定の変更を伝えたり、変更の理由をわかりやすく伝えるようにしています。
また、前もってわかっている変更であれば、前日や数日前から伝えることもあります。
・全体の把握が苦手
ASDの人は、細部に目が行きやすいため、全体把握が苦手なことも特徴としてあります。こうした特徴を、統合の苦手さと表現することもあります。
関連記事:「自閉症の中枢性統合/全体的統合について考える」
著者の療育現場でも、当事者スタッフなどと関わっていると、全体把握といったマルチタスクが苦手な方が多い印象があります。
一方で、部分的な処理、一つひとつ物事を処理するようなシングルタスクは得意な方が多いと感じます。
そのため、シングルタスクの強みを活かしながら、マルチタスクを減らしサポートできるように工夫しています。
・感覚の敏感/鈍感さ
ASDには感覚の敏感さや鈍感さが見られることがあります。
例えば、大きな音が苦手、機械音が苦手、子どもの泣き声が苦手、ベタベタな触感が苦手といったものがあります。
関連記事:「自閉症の感覚:感覚探求と低登録について考える」
著者の療育現場でも、感覚に関する問題を抱えている人は多くいます。
鈍感な人に対しては、感覚情報を多くしたり(遊びを通して不足している刺激を入れるなど)、敏感な人に対しては、苦手な感覚情報を少なくする(音に過敏→環境を分ける・イヤマフの活用など)などの取り組みを心掛けています。
・感覚面への興味
特定の感覚に強い興味を持つことがあります。
例えば、水や砂、車輪(回るもの)など、特定の触感や視覚的な感覚などがあるかと思います。
著者の療育現場でも、こうした特定の感覚に強い興味を持つ人たちは多くいます。
こうした人たちには、感覚遊びを取り入れ、ある程度、感覚への満足度を与えながら、他に興味のある刺激や遊びなどはないか?といった活動の幅を広げる視点も大切にしています。
以上が、ASDの児童期から成人期にかけての興味の偏りの特徴になります。
ASDの興味の偏りは、時には強みに変わることもあります。
興味が限定されていることや、予定の変更や融通の利きにくさ、そして、部分にフォーカスする特徴などは、特定の興味の領域を自分のペースでやり続け、その能力を伸ばすことに繋がる可能性もあります。
それは、仕事に活かされることもありますし、趣味の領域に活かされることもあるかと思います。
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私自身、まだまだ未熟ですが、今後もASDの特性理解をさらに深め、療育(発達支援)の現場にその知見を活かしていけるように学びを深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
下山晴彦(監修)(2018)公認心理師のための「発達障害」講義.北大路書房.