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ASDとADHDの違いについて【医学的見地から考える】

投稿日:2022年12月3日 更新日:

療育現場で発達に躓きのある子どもたちと関わる上で発達特性に応じた理解と対応はとても大切になります。

発達特性とは、例えば、ASD(自閉症スペクトラム障害)特性で考えると、対人・コミュニケーションの苦手さがあるため、関わるスタッフはASD児に他者の意図を伝達したり、関わり方を調整していくなどの理解と対応が必要になります。

ASDには様々な他の障害が併存すると言われています。その中には、ADHDがあり、両者の併存率も高いことから、現場にいて、○○君は、ASDとの診断があるが、ADHDの兆候もあるのではないか?逆に、○○君は、ADHDとの診断があるが、ASDの兆候もあるのではないか?など、多くの疑問が出てきます。もちろん、診断をすることは、その人をより深く理解し(抱えている困難さなど)、質の高い支援に繋げるためです。

療育現場で働いている人たちはもちろん医師ではないので診断はできません。

しかし、発達特性について各々が現場を通して学び、特性に応じた理解と配慮・支援をしていくことは大切なことだと思います。

特性への見立てを誤ると、支援がうまく進まないということが現場にいて往々にしてあるということも実感しています。

 

それでは、ASDとADHDの違いはどこにあるのでしょうか?

 

そこで、今回は、ASDとADHDの違いについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、医学的見地から両者の違いについて活用できる視点について考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「ADHDの診断・治療指針に関する研究会・齋藤万比古(編)(2003)注意欠如・多動症-ADHD-の診断・治療ガイドライン第4版.じほう.」です。

 

 

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ASDとADHDの違いについて【医学的見地から考える】

以下、著書を引用しながら見ていきます。

鑑別のためには、詳細な発達歴、家族歴、現症、心理検査などから総合的に、かつ縦断的に判断しなければならない。

 

著書では、ASDとADHDの鑑別診断が非常に難しい場合には、現症や診察室だけでの判断は難しいとしており、発達歴、家族歴、現症、心理検査などからの情報収集を行い総合的に判断する必要があるとしています。

 

 


それでは次に、上記の内容の中で、療育現場のスタッフでも活用できる考え方の視点として、1.発達歴からの情報収集、2.現症での注意点、についてお伝えします。

 

 

1.発達歴からの情報収集

ASDとADHDは併存している場合もあれば、単独で現れる場合もあります。

そのため、その子がどの時期・どのような環境で生活していたのか、そして、その頃の行動などを聞き取り・分析していくことはとても大切です。

例えば、小さい頃には、多くの子どもに多動傾向があります。そのため、この時期に、ADHD特性があるのかどうか判別は難しいと言われています。

一方で、ASD特性の方が、比較的わかりやすいと言われています。

例えば、視線の合いにくさ、模倣がない(少ない)、ごっこ遊びをしない(少ない)、興味関心が限定されているなどの特徴があります。

しかし、あまり人を求めようとしない、1人が遊びの多さなどから手のかからない大人しい子と見られることもあり発見が遅くなることもあります。

両者の特徴が顕著に出てくるのは、保育園や小学校など集団生活場面が増えた頃だと言われています。

特に、ADHDの方がより顕著になると言われています。

ASDの方が、母子間など、養育者と子どもとの関わりの中で、養育者が違和感を持ちやすいのだと思います。

ADHDは、集団活動になると、物の管理の苦手さや忘れ物が目立つなどの不注意行動、順番が待てない・ルールが守れないなどの背景要因でもある多動・衝動的行動など、集団活動の中でマイナスとして目立つ行動が増えることがあります。

このように、その子が置かれている環境や時期によって、特性の出方も変化してくるため、発達歴からの情報がとても大切になります。

著者は発達特性などが見えにくい子どもに対しては特に発達歴を大切にしています。

つまり、今目の前で行っている行動は氷山の一角であり、これまでの過程を辿ることで初めて理解の本質に行き着くのだという実感があります。

 

 

2.現症での注意点

DSM-5によると、ADHD診断で注意が必要な個所が記載されています(以下、著書引用)。

DSM-5では不注意、多動性-衝動性のそれぞれの症状項目より前に「注」として記載されている重要な文章がある。それは「それらの症状は、単なる反抗的行動、挑戦、敵意の表れではなく、課題や指示を理解できないことでもない」という箇所である。つまり故意に指示に従わない、またその指示の理解が十分でないから従えないというのはそれぞれの症状に含めない。一見症状が存在するようにみえても、実際にはADHDの症状と判断すべきではない大切なポイントである。

 

療育現場で子どもたちを見ていると、多動・衝動的な行動を示す子どもが少なからずいます。

こうした衝動的な行動を見ると、ADHD特性があるのでは?と思ってしまいます。

その中には、大人に対する反抗的な態度、挑発行動を行う子どもたちが混在しています。

こうした行動は、大人側からすると、後先考えず行っている行動(→衝動性)として目に映ります。

また、大人が言っていることを理解していないように見える、あるいは聞いていないように見える、無視をしているように見えるなど、認知能力とも関連して、それが結果として、ADHDと類似した行動に見てしまうこともあります。

一方で、今回取り上げたDSM-5の注意の記載をみると、反抗的態度や挑発行動など故意に指示に従わない行動や、大人が言ったことを理解していないといった指示理解の不十分さは、ADHDの症状(不注意、多動・衝動性)とは判断すべきではないということです。

このように、ADHD特性かと思わる行動も、医学的見地といった別の角度から見ることで、異なる症状や特徴があることが想定されます。

先の、反抗的態度や挑発行動などは二次的な症状の可能性もありますし、また、指示理解の不十分さは知的障害の可能性があるかもしれません。

ここで大切なことは、様々な情報を集める中で(先の発達歴を含め)、適切な見立てを行うということです。

それが、より良い発達理解と発達支援に繋がっていくことは確かだと思います。

 

 


以上、ASDとADHDの違いについて【医学的見地から考える】について見てきました。

著者はこれまで多くの子どもたちと療育現場を通して関わってきましたが、その中で、支援を受ける側(子ども)と支援を行う側(大人)の両方にとって困難な状態は、的確な見立てができないということです。

的確な見立てができないと支援がうまく進まないばかりか、支援を行う側の疲労感が蓄積していきます。

的確な見立をしていくには、現場での一次情報に加え、様々な情報収集を行い(今回取り上げた内容を含め)、他者との対話の中で納得のいく考えを地道に作り上げていく作業が大切なのだと思います。

私自身、現場での小さな疑問を発見し、その情報を調べる、というプロセスを繰り返していくことで、少しずつ子どもたちの躓きの意味が理解できるようになったと思います。

まだまだ未熟ではありますが、今後も、医学的見地からの知識も時に借りながら、より良い支援を目指していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

関連記事:「ASDとADHDの違い-違いはどこで見分けるのか?-

関連記事:「ASDとADHDは似ている?-似ているが行動の背景は異なる-

 

ADHDの診断・治療指針に関する研究会・齋藤万比古(編)(2003)注意欠如・多動症-ADHD-の診断・治療ガイドライン第4版.じほう.

※現在、参考書は第5版が出版されています。

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