ADHD(注意欠陥多動性障害)がよく発症する二次障害には、反抗挑戦性障害があります。
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反抗挑戦性障害の特徴として、周囲に対する反抗的な態度や攻撃性などがあります。
著者が勤める療育現場においても、こうした二次障害が発症している子どもたちがいるため、今後さらに症状を悪化させない取り組み、さらには、二次障害傾向が見られる子どもへの予防的支援の重要性を感じています。
それでは、ADHDの二次障害としてよく知られている反抗挑戦性障害はいつ頃発症し、最も大変となる時期はいつ頃なのでしょうか?
そこで、今回は、ADHDの特徴として、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、ADHDの二次障害として反抗挑戦性障害について大変な時期や予後について考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「齊藤万比古(編著)(2009)発達障害が引き起こす二次障害へのケアとサポート.学研.」です。
ADHDの特徴【大変な時期とは?予後は?反抗挑戦性障害の視点から考える】
以下、著書を引用しながら見ていきます。
ADHDの子どもの最も大きな危機の時代は学童期にあることが多い。その時期に家庭と学校によって適切に支えられた子どもは、思春期に入るとADHDの症状の改善が進み、生来もっている衝動性の高さや不注意をカバーするスキルが飛躍的に増大する時期となる。
著書の内容を踏まえて考えると、反抗挑戦性障害の症状は、幼児期から学童期早期に目立ち始めると言われています。そして、その中で最も危機的な時期は学童期(小学校1~6年)にあるとしています。
著者も療育経験からの実感として、学童期の子どもとの関わりが多いため、二次障害の症状がより顕著になってくるのが小学校の頃だと感じています。
それは、言動の荒々しさや、攻撃性の高さ、他者への批判的態度などがより顕著になっていくという様子からも伺えます。
もちろん、二次障害への理解と対応がしっかり取られている子どもは症状の悪化が緩やかであったり、軽減していく傾向があると思います。
著書にあるように、学童期に適切な支援が行われると、思春期以降にはADHDの衝動性などをカバーする力がついてきて、症状の改善が見られるとしています。
つまり、学童期には本来のADHDの衝動性などの特徴が顕著になり、それを自身でコントロールすることが難しいことに加え、周囲の理解や対応がその子の自尊心を低下させるようなものであると二次障害などの症状が悪化するということが言えるのだと思います。
一方で、年齢が上がり、衝動性などの特性をうまくコントロールできるようになってくると(周囲の対応がとても大切)、症状が改善していくとされています。
著者の療育経験からも、本人の自己肯定感を下げずに、高めるような対応をしていったことで、二次障害の症状が軽減し、さらに、成熟による衝動性の低下に加え、衝動性との付き合い方を学習していったことから(と推測される)、全体的な行動や言動が落ち着いてきた子どもたちはいます。
こうした経験から、改めて、発達障害の特性理解に加え、二次障害への早期の対応がとても大切なのだと感じます。
以上、ADHDの特徴【大変な時期とは?予後は?反抗挑戦性障害の視点から考える】について見てきました。
反抗挑戦性障害への適切な理解や対応がなされないと、思春期以降には、素行障害に繋がるなど、より症状が悪化するケースもあります。
上記のように、行動が社会に対する反抗や批判など外に表出するものを外在化と言います。
一方で、不安障害やうつなど自分の内部に負の感情が蓄積されていくケースもあり、これを内在化と言います。
どちらも、二次障害が悪化していく経過ですが、療育で大切なことは、できるだけ早期にこうした悪化のルートを防ぐということです。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も発達障害の特性理解に加え、二次障害への理解と対応についても理解を深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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齊藤万比古(編著)(2009)発達障害が引き起こす二次障害へのケアとサポート.学研.