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ADHD タイプ

ADHDのタイプについて:のび太型とジャイアン型について考える

投稿日:2020年5月5日 更新日:

ADHD(注意欠如/多動性)とは、不注意、多動性、衝動性を特徴とした発達障害です。

皆さんの中には、ADHDと聞いて何となく落ち着きがない人、常に動き回っている人などバイタリティーがあり、元気な状態をイメージする方もいるかと思います。しかし、ADHDだからといって必ずしも多動・衝動的であるとは限りません。

今回は、ADHDの人たちの中にもいくつかタイプがあるということを説明していきながら、私の現場など実体験からその状態像についてもお伝えしていこうと思います。

今回参考にする資料として、司馬理英子著「最新版 真っ先に読むADHDの本:落ち着きがない、忘れ物が多い、待つのが苦手な子のために」を参照していこうと思います。

 

ADHDについて

ADHDは注意の維持ができないといった不注意、じっとしていることが苦手といった多動性、順番が待てないといった衝動性の3つを特徴としています。

未就学児までは元気な子と捉えられることがあり、比較的目立つことは少ないですが、小学校に上がり集団行動が増えてくるとその特徴が目立ってくると言われています。

発症頻度は5%程度で、男子の方が女子よりも多く見られます。

また、遺伝性も高く、ご家庭に同じ特性のある方も多く見られます。

ADHDの原因として、物事を計画し注意を持続するといった機能がうまく働かない実行機能の問題や、自分の興味や関心にすぐ目が行き目先の楽しさを優先するといったことから、報酬系の機能がうまく機能していない等が原因と考えられています。

 

ADHDのタイプについて

それでは、ADHDにはどういったタイプが存在するのでしょうか?

タイトルにもある通り、のび太型(不注意優勢型)ジャイアン型(多動・衝動性優勢型)、そして、両方の特性が見られる混合型の3種類があると言われています。

 

のび太型(不注意優勢型)とは、気が散りやすい、忍耐強くない、困ったことを他人のせいにしてしまう、何か作業をしているときなど空想にふけりやすいなどおとなしくて優しいなど問題行動を起こしにくい特徴があり、比較的に困り感が気づかれにくいといえます。

 

ジャイアン型(多動・衝動性優勢型)とは、かっとなりやすい、他の子に手がでる(あるいは口がでる)、順番を守ることが苦手などの特徴がありますが、エネルギッシュで周囲を引っ張っていくリーダー的な存在にもなります。ジャイアン型は、衝動的で学校では集中力がなく、落ち着きがない、感情の起伏が激しいといったことから古典的なADHDのタイプと言われています。

以上が、ADHDのタイプの説明になります。

 

著者の体験談

ここから先に私が現場で関わったADHDのタイプの事例について紹介していこうと思います。

小学校高学年のA君は、いつもせわしなく何か面白いことはないかと動き回っています。

他の子の気になる行動や言動に対しては非常に敏感で、すぐに注意したり、時には手や足がでることもあります。

遊びになると最初はルールを守っていても、周囲のペースに合わせることが難しく一人逸脱することが多くあります。

彼は典型的なジャイアン型(多動・衝動性優勢型)だと考えられます。

そんな彼もその行動力から新しい遊びを考えたり、その遊びの中で他の子供たちを引っ張っていく様子も見られます。

周囲の子供たちからは少し乱暴だが、A君と一緒に遊ぶことを楽しみにしてくるお子さんたちもいました。

このように、ジャイアン型にも一見困る特徴が見られながらも、時には周囲を引っ張るリーダー的な行動を示すなど長所といえる面もあるかと思います。

次のお子さんは小学校低学年のB君です。

彼はとにかく忘れ物が多い、注意散漫でいろんなことに気が散る、時々自分の世界に入りぼーっとしているなどまさにのび太型(不注意優勢型)の特徴が見られます。

ですので、活動も大人がしっかりと計画や段取りを組まないと物事が進まない、そして、物の管理も適宜大人が声をかけるなどの対応が必要になります。

一方、B君には大人や他児に優しい言葉をかける、自分が使っていたおもちゃを貸してあげるなど優しい行動が見られます。

 


以上、2つの事例からADHDののび太型(不注意優勢型)とジャイアン型(多動・衝動性優勢型)の2つのタイプを見てきましたが、もちろん両方が混在するケースも現場では見られます。

ADHDの人たちは、こうした特性ゆえに周囲から理解されずに叱責されることも多く見られます。

周囲が彼らのこうした特性への理解をすることで肯定的な関わりが増えることが彼らの自尊心を高める上で非常に大切なことだと思います。

今後も私自身、現場の経験と知識とを掛け合わせながら、人の発達を深く理解し、より良い支援を考えていきたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

司馬理英子(2020)最新版 真っ先に読むADHDの本:落ち着きがない、忘れ物が多い、待つのが苦手な子のために.主婦の友社.

-ADHD, タイプ

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