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【発達障害児はなぜ片付けが苦手なのか?】片付けが苦手な理由と対応について考える

投稿日:2024年7月17日 更新日:

 

発達障害(神経発達障害)には、ASD(自閉症スペクトラム障害)、ADHD(注意欠如多動性障害)、SLD(限局性学習症)、DCD(発達性協調運動障害)、ID(知的障害)など様々なものがあります。

著者は長年、療育現場で発達障害のある子どもと関わってきています。

その中で、〝片付け″を苦手とする子どもが多いといった印象を受けることがあります。

そして、実際に様々な現場からの声、書籍等を踏まえても〝片付け″の苦手さがあると実感しています。

 

それでは、なぜ、発達障害児は片付けを苦手としているのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達障害児はなぜ片付けが苦手なのかについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、片付けが苦手な理由と対応について理解を深めていきたいと思います。

 

※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。

 

 

今回参照する資料は「加藤博之(2023)がんばりすぎない!発達障害の子ども支援.青弓社.」です。

 

 

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なぜ、発達障害児は片付けが苦手なのか?

以下、著書を引用しながら見ていきます。

片づけられない子どもの特徴として、「毎日少しずつ」が苦手なことが挙げられます。物事を計画的に進めることができないのです。

 

著書の内容から、〝片付け″が苦手な背景として、計画的に物事を進める難しさ、つまり、〝実行機能の弱さ″があります。

実行機能″とは、ある目標・目的に向けて、注意を維持しながら実行する力の事を指します。

別名、〝やり遂げる力″とも言われています。

発達障害児の多くは、〝実行機能の弱さ″を抱えているケースが見られます。

 

著者が見ている療育現場の子どもたちも、物事を計画的に進める難しさがあります。

例えば、帰り支度に向かう際に、帰りの片付けをする→帰りの準備をする、その前提に帰り時間に間に合うように活動を計画的に進める必要があります。

実行機能の弱さ″があると、計画を立てることの難しさに加えて、仮に計画をうまく立てることができても、実行すること、実行を継続する苦手さがあります。

著者が見ている子どもの多くは、〝注意の転導性の高さ″が目立ち、様々な刺激や情報に気持ちが振られることがよくあります。

そのため、〝片付け″そのものに注意が向きづらい、片付けの最中に他の事が気になる、といったことがよく起こります。

 

 

片付けへの対応について

以下、著書を引用しながら見ていきます。

まずは、片づけ上手を目指さないことです。きちんと片づけるのではなく、おおまかに片づけることを目標にします。

 

著書には、〝片付け″の対応として必要なことは、完璧さを求めないこと、上手さを目指さずに、ほどほどにできればよいと記載されています。

つまり、〝片付け″を苦手としている子どもに対して、高いハードルを設定しないことが大切です。

 

著者が見ている子どもたちとの関わりを通して感じることは、毎日の〝片付け″を完璧に行うことは非常に難しいということです。

ある程度ムラがあるのは当然と考え、よくできた際にはしっかりと褒める、できなかった場合には次に繋げる、総量として徐々に成功したという部分を増やしていければ良いと思っています。

こうした考え方・対応方法の方が、長期的に見て、成功事例が増えているといった印象があります。

また、〝片付け″を行いやすくするための〝構造化″も必要です。

どこに何を片付ければいいのかが〝視覚化″されていることが重要です。

 

さらに、著書には、構造化の必要性について、以下の点を重要視しています(以下、著書引用)。

空間把握に弱さがあり、位置関係がよくわからないケースも見られます。

 

空間を意識する活動例

鬼ごっこ、ジャングルジム、アスレチック、地図を見ながら町を歩く、各種パズル、ブロック・積み木の見本合わせ、折り紙、あやとり。

 

著者の内容から、〝構造化″が特に必要な理由として、発達障害児が抱える〝空間把握の弱さ″があるからだと考えられています。

物事の位置関係の理解が難しいと、当然、〝片付け″にも影響していきます。

そのため、引用文にある活動例を実施することもまた長期的に見て、〝片付け″の上達に繋がると言えます。

 

 


以上、【発達障害児はなぜ片付けが苦手なのか?】片付けが苦手な理由と対応について考えるについて見てきました。

今回見てきたように〝片付け″に対して、完璧さを目指さずに、苦手な背景となっている〝実行機能の弱さ″や〝空間把握の弱さ″などを踏まえた理解と対応が大切だと言えます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で日々向き合うことになる片付けに対して、理解と対応方法をしっかりと考えながら実践に結び付けていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【発達障害児は〝片付け″が苦手?】〝片付け″がうまくなるためのコツについて考える

 

 

加藤博之(2023)がんばりすぎない!発達障害の子ども支援.青弓社.

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