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【自閉症児の遊びの特徴について】療育経験を通して考える

投稿日:2024年6月26日 更新日:

自閉症(自閉スペクトラム症:ASD)とは、〝社会性の障害″〝コミュニケーションの障害″〝こだわり行動″を特徴とする発達障害です。

自閉症児は定型発達児とは異なり、〝遊び″にも特徴があると言われています。

自閉症児の〝遊び″の特徴を理解していくことで、自閉症児への関わり方のヒントを得ることができます。

 

それでは、自閉症児の遊びにはどのような特徴があると考えられているのでしょうか?

 

そこで、今回は、自閉症児の遊びの特徴について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「白石雅一(2024)おもちゃ教材で育む人間関係と自閉スペクトラム症の療育~親・保育園・幼稚園・学校・児童発達支援・放課後等デイサービスのためのガイド~.東京書籍.」です。

 

 

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自閉症児の遊びの特徴について

以下、著書を引用しながら見ていきます。

①感覚刺激遊び (視覚、聴覚、嗅覚、触覚、口唇への偏り)

②常同的遊び (常同行動がその代表)

③独り遊び (人を寄せつけず、人から離れる)

④空想的遊び (ファンタジーの世界への没入)

⑤こだわり遊び (ルーチン重視。飽きても変えない、やめない、始めない)

 

著書には、以上の〝5つの特徴″が記載されています。

これら5つの特徴から、自閉症児には、〝一人の世界を重視する遊び″が多い印象を受けます。

それは、〝他者との関わり″〝他者との共有経験″といった誰かと○○を共有するといった遊びを連想することの難しさを感じるからです。

そして、実際の著者の経験を通しても、自閉症児の〝遊び″は、〝一人遊びが多く″、〝一人の感覚や世界への没頭″、〝自分の遊び方(ペース)を大切にする″といった〝人間関係″の発展に難しさを感じることもまたよく見受けられます。

 

 


それでは、次に、以上5つの遊びの特徴について、著者の経験談を踏まえて見ていきます。

 

①感覚刺激遊び (視覚、聴覚、嗅覚、触覚、口唇への偏り)

特定の感覚への没頭・固執行動はよく見られます。

例えば、砂・水に触りはじめると止まらない、クルクル回るタイヤを見続ける、絵本をパラパラめくる感覚を楽しむ、好きな曲を聴き続けるなどがあります。

一度、特定の感覚に没頭すると周囲の声がけが入りにくかったり、遊びを止めることが難しいこともまた特徴としてあると感じています。

 

②常同的遊び (常同行動がその代表)

同じ動作・同じ遊びを繰り返すこともまたよく見られます。

動作では、手をヒラヒラさせる、体をコマのようにして回るなどが見られます。

また、特定の遊びを繰り返すこともまた特徴としてよく見られます。

そのため、一度、遊びにハマるとその遊びを翌日も、翌々日、翌週も繰り返し飽きずに行う光景をよく目にします。

 

③独り遊び (人を寄せつけず、人から離れる)

〝他者との遊び″以上に〝独り遊び″がよく見られます。

周囲が様々な遊びを大声を出しながら楽しそうに行っていても、自分の遊びに没頭することも少なくありません。

周囲から見ると〝異空間″にも見える光景にも映ります。

また、賑やかな集団や集団そのものをあえて避け、独りの空間を確保しようとする様子もよく見られます。

 

④空想的遊び (ファンタジーの世界への没入)

〝ファンタジーの世界″への没頭はよく見られます。

例えば、ごっこ遊びをする際には、自分で作り出したオリジナルなキャラクターたちを登場させ物語を展開していったり、既存のキャラクターたちがオリジナルストーリーにそって様々な動きを見せるなど、ある種の独創的な遊びを行う様子もよく見られます。

このような自閉症児によく見られる〝ファンタジーの世界″を大事にすることはとても大切だと感じています。

 

⑤こだわり遊び (ルーチン重視。飽きても変えない、やめない、始めない)

いわゆる〝こだわり″が影響しているのですが、この特徴には、〝変えない″〝やめない″〝始めない″といったものが見られます。

例えば、ルーチン重視では、一日の遊びの順番(ルーチン)が決まっていることもあります。

著者が見てきた子どもの中には、遊びはじめには必ずトーマス図鑑を読み切ってから次の遊びを行う(その時のブームよっても変わる)などのルーチンが見られる子も多くいました。

 

関連記事:「【自閉症児のこだわり行動の3つの特徴】〝変えない″〝やめない″〝始めない″を通して考える

 

 


以上、【自閉症児の遊びの特徴について】療育経験を通して考えるについて見てきました。

自閉症児と接したことのある人は、上記の遊びの特徴をすんなりと理解することはできると思います。

一方で、あまり接したことのない人からすると、不思議な行動として映るのかもしれません。

大切なことは、こうした遊びの特徴には、自閉症児ならではの意味や背景があるといった視点を持つことだと思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で自閉症児との遊びを通して、彼らの遊びの世界の意味を理解するとともに、その世界を一緒に共有・共感できる関わり方を見出していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「自閉症のこだわり-こだわりの強さとその対象について考える-

 

 

白石雅一(2024)おもちゃ教材で育む人間関係と自閉スペクトラム症の療育~親・保育園・幼稚園・学校・児童発達支援・放課後等デイサービスのためのガイド~.東京書籍.

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