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【発達障害の二次障害の予防】自閉症とADHDの症状のダメージの違いから考える

投稿日:2023年9月28日 更新日:

発達障害児の支援では〝二次障害″の予防がとても大切です。

関わる大人たちによる過度な叱責や注意を受けると子どもたちの自尊心は低下し、ダメージを受け続けることで〝二次障害″となって現れることがあります。

一方で、発達障害の中でも、特性によってダメージの受け方が異なると考えられています。

 

それでは、発達障害のダメージの受け方にはどのような違いがあるのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達障害の二次障害を予防していくために、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、自閉症(ASD)とADHDの症状のダメージの違いについて理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「小嶋悠紀(2022)小嶋悠紀の「特別支援教育・究極の指導システム」①.教育技術研究所.」です。

 

 

ADHDのダメージの受け方→〝蓄積型″

以下、著書を引用しながら見ていきます。

ADHDの子供たちは「ダメージを受けにくい」場合がほとんどだ。(中略)蓄積していったダメージがある量を超えると二次障害を発生させる。多くは反抗挑戦性障害である。

 

著書の内容から、ADHDのダメージの受け方は〝蓄積型″だと考えられています。

蓄積型″とは、一見すると大人からの叱責や注意を繰り返されてもダメージが無いように見えても、徐々にダメージが蓄積されることでそれが後々症状として現れるというものです。

そして、ADHDの二次障害の典型的な症状は〝反抗挑戦性障害″です。

 

関連記事:「発達障害の二次障害について:ADHDを例に考える

 

 

ASDのダメージの受け方→〝一触即発型″

以下、著書を引用しながら見ていきます。

ASDの子供たちの多くは「ダメージに弱い」ことが知られている。一回の出来事で、トラウマを発生させてしまうような「一触即発型」のダメージの受け方をしてしまう。

 

著書の内容から、ASDのダメージの受け方は〝一触即発型″だと考えられています。

一触即発型″とは、文字通り一度でも子どもにダメージを与えてしまうような責や注意の仕方をしてしまうと、その影響が直ぐにダメージとなって現れるというものです。

特に、ASDの子供たちは、記憶力が良く視覚的な能力が高いため、ネガティブな記憶も長期的に残り続け何かの拍子にフラッシュバックしてしまったり、ネガティブな視覚情報(叱責している大人の顔など)が残り続けてしまうケースがよくあります。

 

 

著者の経験談

著者もこれまでの療育経験も含め現在もASDとADHDの子どもたちと接する機会が多くあります。

その中で、上記に見たようなダメージの受け方をしているという実感がありました。

例えば、ADHD児に対しては、注意を続けても聞いて無いように見えたり、直ぐに忘れてしまっている様子から、ダメージが無いように見えることがよくありました。

そのため、注意をし続けてしまい、後にイライラ感や自尊心の低下を引き起こす対応を著者はしてしまっていたことがありました。

また、ASD児に対しては、特性からくるこだわり行動に向けてとっさに過度な注意をしてしまっていたことがありました。

その時のASD児の反応はとてもびっくりした様子で、その後、著者は数か月その子どもと関係を取ることが難しくなってしまったことを今でもよく覚えています。

こうした経験を通して、著者はこれらの対応はけっしてよくないやり方であったということを学び、子どもたちに対する関わり方を見直すきっかけになりました。

もちろん、上記の例に上げた子どもたちとの関係も関わり方を見直すことで良好な関係になっていきました。

 

 

ダメージを防ぐための方法

それでは最後に、こうしたダメージを無くす、あるいは、軽減していくために大切なことをお伝えします。

以下、再び著書を引用します。

ダメージを防ぐためには、「教えて→褒める」が基本になる。

 

低学年段階では、「大人がダメージから守る」ということが絶対に必要だ。

 

青年期では「どのようにダメージ原因から回避するか」を教えてあげてほしい。

 

著書にあるように、ダメージへの対応方法はまずは〝教えて→褒める″が基本になります。

そして、年齢に応じてダメージの防ぎ方を、大人が守る→本人がスキルとして学ぶ、というように関わり方を変えていく(根底には〝教えて→褒める″が基本にある)といった方法をとることが重要だと記載されています。

 

 


以上、【発達障害の二次障害の予防】自閉症とADHDの症状のダメージの違いから考えるについて見てきました。

私たちは子どもたちの行動に対して半ば無意識的に注意や叱責をしてしまうことがあります。

こうした対応を繰り返すことで長期的な目で見ると(もちろん短期的にも)子どもたちへのダメージは思いのほか大きくなってしまうことがあります。

二次障害へと繋がってしまう前に、発達障害の特性やダメージの違いなどを理解し関わり方を見直していくことがとても大切だと感じます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、これからも発達障害について理解を深めていきながら、二次障害への予防に努めていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 


 

参考となる書籍の紹介は以下です。

関連記事:「発達障害の支援に関するおすすめ本【初級~中級編】

 

小嶋悠紀(2022)小嶋悠紀の「特別支援教育・究極の指導システム」①.教育技術研究所.

 

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