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【発達障害児の〝問題行動″の理解の仕方について】療育経験を通して考える

投稿日:2023年7月3日 更新日:

 

発達障害のある子どもの中には、癇癪やパニックなど〝問題行動″が見られることがあります。

定型発達の人とは異なり、問題行動の理由がわかりにくいことも特徴としてあります。

 

それでは、発達障害児に見られる〝問題行動″についてどのような理解の仕方が良いと考えられているのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達障害児の〝問題行動″の理解の仕方について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。

 

※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。

 

 

今回参照する資料は「小嶋悠紀(2023)発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた声かけ・接し方大全 イライラ・不安・パニックを減らす100のスキル.講談社.」です。

 

 

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発達障害児の〝問題行動″の理解の仕方について

以下、著書を引用しながら見ていきます。

子どもは「困っているから」行動します。逆に言うと、子どもの行動は、「その子が困っていること」を突き止める、貴重な手がかりなのです。

 

著書には、問題行動への理解の仕方として、問題行動を否定的に捉えるのではなく、〝その子の困り感を理解するヒント・手がかり″として理解していくことが大切であると記載されています。

問題行動が生じると周囲の大人たちの思いとしては、〝すぐになんとかしないと!″〝迷惑な行為で嫌だ!″〝はやくおさまってほしい″などネガティブな気持ちになることが多いと思います。

一方で、〝問題行動″への捉え方として大切なことは、著書にあるように困り感を理解する手がかりとして捉えるといった視点です。

もちろん、こうして視点にたどり着くことはすぐにできないと思いますが、少しでも良いので〝問題行動″への理解のフレームを再構築することが、後に〝問題行動″を減らしていくためには大切だと言えます。

 


さらに、〝問題行動″の理解が不足すると以下のような状態になる場合があります(以下、著書引用)。

大人への信頼感が低下していると、困ったことがあっても表現しなくなり、より激しいパニックを起こすようになるのです。

 

著書にあるように、〝問題行動″の理解が不足することは、大人との信頼関係の低下にも繋がり(信頼関係が低下したため〝問題行動″が増えたとも言える)、自分の困り感を抑制したり、過剰な表出に繋がっていくと記載されています。

人間のネガティブ感情は特に、信頼のおける相手にその思いを理解してもらうことで、少しずつ気持ちの整理(感情の言語化)ができるようになり、そして、その気持ちの表出方法もまた学習していくことができます。

 

 


それでは次に、〝問題行動″の理解の仕方に関する著者の経験談を見ていきます。

 

著者の経験談

著者が勤める放課後等デイサービスには、発達障害のある子どもたちが通所してきています。

そして、子どもたちの中には、大小さまざまな〝問題行動″が見られます。

例えば、自傷や他害、物にあたる、暴言を吐くといった〝問題行動″です。

こうした行為に対して、療育をはじめたばかりの著者は〝まずはとめないと!″〝はやくおさめないと!″といった思いがわき、そして、その思いの背後には、〝やめてほしい″といったネガティブな気持ちがあったことは今でもよく覚えています。

一方で、少しずつ子どもの〝問題行動″の背景に目を向けるようになっていきました(ネガティブに捉えても改善効果がなかったため)。

なぜ、○○君は、○○の〝問題行動″を起こしたのだろうか?といった行動を分析する視点です。

こうした〝なぜ″の視点は、先ほど著書にあった〝問題行動″は困り感を理解する手がかりとして捉えるといった視点と同じであると思います。

そして、〝なぜ″を追求していくことで、〝問題行動″の背景要因へのさまざまな仮説が浮かび上がってきました。

仮説が立つようになった後は、どのように支援していけば良いかのアイディアも同時に少しずつ出てくるようになりました。

そして、長い目で見た時に、〝問題行動″とは、困り感を理解する手がかりとして見る視点に変換し対応していくことで、結果として〝問題行動″の軽減に繋がっていくという実感が徐々に肌感覚としてつかめるようになっていきました。

そのため、著者の経験を振り返って見ても、〝問題行動″の理解の仕方(子どもを理解する手がかり・ヒントとしての見方)はとても大切であると実感しています。

 

 


以上、【発達障害児の〝問題行動″の理解の仕方について】療育経験を通して考えるについて見てきました。

〝問題行動″は時として関わり手を非常に疲弊させるなど大変な対応に迫られることがあります。

そのため、支援に携わる人たちは統一した考えのもとチームで支援していくことが必要不可欠だと思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も問題行動への背景要因を深く追求していきながら、関わる子どもたちの将来が豊かになるような支援を目指していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

小嶋悠紀(2023)発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた声かけ・接し方大全 イライラ・不安・パニックを減らす100のスキル.講談社.

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