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【〝スクリプト″から見たコミュニケーション支援について】療育経験を通して考える

投稿日:2023年3月18日 更新日:

コミュニケーションの発達過程の中で、〝スクリプト″を獲得する時期があります。

スクリプト″とは、〝ある出来事に対するまとまった知識のこと″を言います。

 

関連記事:「【〝スクリプト″から見たことばの発達】療育経験を通して考える

 

著者は療育現場で子どもたちとの関わりを通して、まさに〝スクリプト″を獲得していくことがコミュニケーション支援においてとても大切だと感じることがあります。

 

それでは、コミュニケーション支援において、〝スクリプト″が持つ意味にはどのようなものがあるのでしょうか?

 

そこで、今回は、〝スクリプト″から見たコミュニケーション支援について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「秦野悦子(編)(2010)シリーズ子どもへの発達支援のエッセンス 第1巻 生きたことばの力とコミュニケーションの回復.金子書房.」です。

 

 

〝スクリプト″から見たコミュニケーション支援について

以下、著書を引用しながら見ていきます。

言語・コミュニケーションの支援とは、文化(スクリプトの集合体)そのものを習得し、継承し、創造する過程を支援することといえるのではないだろうか。

 

私たちと障害のある子どもたち・人々が相互に、共に生きる新たな文化を作り上げながら、「生活の型、生活スタイル」=スクリプトのなかでお互いの社会的スキルを学んでいく。

 

著書の内容から、コミュニケーション支援では、〝スクリプト(生活の型・生活スタイル)″を他者と共に作り上げていくことが重要であり、その中で、〝スクリプト″の集合体といった〝文化″の伝承・継承が行われることが支援においてはとても大切だと言えます。

そのためには、まずは、〝スクリプト″といった共有世界を他者との間で経験していくことがコミュニケーション支援の基盤として必要になります。

人は他者と様々な体験を共有していく中で、ある出来事へのまとまった知識を獲得していきます。

そして、さらに、経験を重ねていく中で、〝スクリプト″の集合体である〝文化″を他者から学ぶことで自分の中に他者と同様な〝文化″を獲得していくことができます。

つまり、コミュニケーション支援で大切なことは、他者と様々な世界を共有していくことと、そして、すでに様々な世界を知っている他者から〝文化″を学ぶといったことが上げられます。

 

 

著者の経験談

著者の療育現場では、様々な活動を行っていますが、昔から引き継がれている遊びもあります。

その中に、例えば、〝戦いごっこ″といった〝集団遊び″があります。

〝戦いごっこ″では、子ども同士が主に仲間となり、大人が敵役となる場合が多くあります(分かりやすいルール設定のため意図的にそうしています)。

また、段ボール工作で武器を作成することもよく行われています。

つまり、一つの遊びの中に様々な要素があり、進化・発展していく遊びです。

こうした〝集団遊び″はある種の〝スクリプト″として、子どもたちの中に、まとまった知識として習得されていくといった印象があります。

新しく入ってきた子どもは、他児や大人と〝戦いごっこ″の経験を重ねていく中で、共有世界を深めていきます。

そして、その中で、〝戦いごっこ″のルールや楽しみ方などを先輩他児や大人から伝承・継承されながら、遊びの〝文化″を獲得していきます。

こうした〝文化″には、単に遊びのルールや楽しみ方だけではなく、これまでの〝戦いごっこ″で起こった歴史なども含まれています。

これまで行われてきて楽しかった出来事やこれからの遊びを期待して未来について語る子どもたちの様子を見て、コミュニケーション支援において大切なことは、楽しかった出来事・大きく気持ちが揺れ動いた体験を他者と共有し創造していくことにあるのだと思います。

そして、こうした経験をすでに〝スクリプト″や〝文化″として獲得している他者が教える、そしてその他者から学ぶといった経験も大切だと思います。

 

 


以上、【〝スクリプト″から見たコミュニケーション支援について】療育経験を通して考えるについて見てきました。

人は様々な経験を重ねていく中で、経験からあるまとまった知識としての〝スクリプト″を獲得していきます。

そして、〝スクリプト″が増えていく中でそれは〝文化″としての意味も出てきます。

〝スクリプト″や〝文化″は他者から伝承・継承されることでその人の内部に取り込まれていきますが、そのベースとなるのは他者と共有世界を積み重ねていくことにあります。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も子どもたちと様々な体験を共有していきながら、子どもたちの内部に良い経験を作っていけるような支援を目指していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【コミュニケーションとは何か?】共有世界の発達段階について考える

 

 

秦野悦子(編)(2010)シリーズ子どもへの発達支援のエッセンス 第1巻 生きたことばの力とコミュニケーションの回復.金子書房.

-コミュニケーション, スクリプト, 支援

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