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ASDとADHDの併存について【症状の発現過程から考える】

投稿日:2022年12月17日 更新日:

 

ASD(自閉スペクトラム症)ADHD(注意欠如多動症)は、単独で発症することもありますが、併存して見られることも多くあると考えられています。

 

それでは、ASDとADHDが併存している場合には、発達上、どのような経過が見られるのでしょうか?

 

そこで、今回は、ASDとADHDの併存について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、併存していた場合に見られる症状の発現過程について理解を深めていきたいと思います。

 

※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。

 

 

今回参照する資料は「岩波明(監修)小野和哉・林寧哲・柏涼ほか(2020)おとなの発達障害 診断・治療・支援の最前線.光文社新書.」です。

 

 

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ASDとADHDの併存について【症状の発現過程から考える】

以下、著書を引用しながら見ていきます。

最初に現れるのは多動です。少し年齢が上がると、多動、衝動が現れてきて、学歴期になると不注意の問題も顕在化してきます。思春期以降になって社会性の問題が顕在化する頃には、衝動性が下がってきます。さらに、不注意、こだわり、社会性の問題が徐々に強くなり、多動、衝動が見えなくなってくることもあります。

 

著書には、ASDとADHDが併存した場合に、どのような症状の発現過程が見られるのかが図に記載されています。

症状として、多動→多動・衝動→不注意・多動・衝動→不注意・多動・社会性→不注意・こだわり・社会性の順序で見られるとなっています。

こうしてみると、初めはADHDの特性が優位であり、思春期以降からASDの特性が優位になる(ADHDの症状は不注意が残り)という順序があると言えます。

もちろん、これには脳の成熟過程に加え環境要因も影響してくるなど、個人差もあると言えます。

医学的な研究知見から、こうした順序があることが分かってきています。

さらに、ASDとADHDが併存した場合には、単独よりも症状が重くるなるとも考えられています。

 

 


それでは次に、著者の経験から、ASDとADHDの併存についての症状の発現過程について見ていきます。

 

著者の経験談

著者の周囲には大人になってから発達障害の診断を受けた人たちが少なからずいます。

その中には、ASDとADHDの両方の診断を受けた人もいます。

また、診断は受けてはいませんが、両方の傾向が見られる人もいます。

こうした人たちを見ていると、特に不注意が目立ちます。

例えば、車の運転でぶつける頻度が高い、忘れ物が多い、ついさっき言ったことを忘れてしまう、時間を守れないなどがあります。

一方、多動・衝動性が高いと感じる行動はむしろあまり多くないといった印象を受けます。

もちろん、どこかせわしなく動いている様子や、落ち着きのなさなどはありますが、不注意ほど目立った印象はありません。

不注意に関しては、自分なりの対処方法を活用するなどして未然に防いでいる人もいますが、環境の変化や偶発的な出来事などが起こった際に目立つ感じがします。

また、自分なりのルールや順序にこだわる様子、人との関わりの難しさなども見られます。

例えば、複数人いる会食などになると、どのように話していいかがわからない、雑談が苦手などです。

こどわりに関しては、自分なりの生活リズムを優先する、自分が取り組んでいることをまずは第一優先として考えるなど、他者に合わせる難しさに影響が出てくるように思います。

こうした内容には、個人差がありますし、見方を変えると強みに転じることもあります。

例えば、自分が取り組んでいることを優先することは、仕事において成果を発揮することに繋がるといった具合です。

 

 


以上、ASDとADHDの併存について【症状の発現過程から考える】について見てきました。

このように時系列から併存の症状の発現について見ていくと、著者の経験からも納得できることが多くあるように思います。

大切なことは、その時期に見られる困り感の背景要因(発達特性)を考え、それに対する理解と対応について、本人と周囲とが理解を深めていくことだと思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も時間軸という視点からも、様々な障害像を理解していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

関連記事:「発達障害の診断名はなぜ変わることがあるのか

 

岩波明(監修)小野和哉・林寧哲・柏涼ほか(2020)おとなの発達障害 診断・治療・支援の最前線.光文社新書.

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