人間が運動するには様々な身体部位や筋肉を連動・協応させる必要があります。
こうした連動・協応した動作は「協調運動」とも言われています。
そして、協調運動における障害を「発達性協調運動障害(DCD)」と言い、最近では、自閉症やADHD、そして学習障害に次いで注目を集めるようになってきています。
また、協調運動の問題も発達段階に応じて異なる特徴が見られます。
それでは、学童期(小学生の時期)には、どのような協調運動の問題が見られるのでしょうか?
そこで、今回は、学童期の協調運動の問題について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながらお伝えしていきます。
今回参照する資料は「辻井正次・宮原資英(監修)澤江幸則・増田貴人・七木田敦(編著)(2019)発達性協調運動障害[DCD]不器用さのある子どもの理解と支援.金子書房.」です。
学童期の協調運動の問題について
著書の中で、小学生の運動の問題についてのアンケート調査結果が記載されています。
以下、その中で、特に見られやすい問題について、粗大運動と微細運動に分けて引用しながら見ていきます。
粗大運動の問題について
以下、著書を引用します。
粗大運動で全体的に多かった回答が「姿勢が崩れやすい」「長縄跳びでタイミングよく入れない」「狙ったところにボールがいかない」「ボールを上手にキャッチできない」「ドッチボールですぐに当たる」「動きがぎこちない」であった。
小学生の回答ですので、粗大運動(全身運動)の多くは体育の授業などで見られやすいことから、回答の多くも球技や縄跳び、姿勢やバランスなどに関するものが多く上がっています。
協調運動は様々な身体部位や筋肉の連動が必要なため、中でも、より協調運動の能力が求められるような運動が苦手ということがこの結果から見えてきます。
長縄跳びや球技などは、目で動く対象を捉えること、そして、相手の動き(相手が動かす動き)に応じて自分の動きも合わせることが求められます。
そのため、固定したものに対して体を使うというものではなく、相手ありきの運動も多いため、非常に高度な運動スキルが要求されることが考えられます。
微細運動の問題について
以下、著書を引用します。
微細運動では、「文字が升目からはみ出る」「雑巾をしっかり絞れない」「プリントをきれいに折れない」「書写で文字のバランスが悪い」「食べ方が汚い」が多く挙げられた。
小学生の学校生活は、多くの授業で文字を書くことが求められます。そのため、書字に必要な手の運動といった微細運動に問題があると、学校生活そのものが非常に大変になることが予想されます。
また、雑巾絞りやブリント折り、食事などは右手と左手とで異なる運動が必要になるため、これらは運動に問題がある子どもにとって、とても高い運動スキルが求められることから、苦手する子どもが多いことが考えられます。
それでは、次に著者の経験談から学童期の運動の問題について見ていきます。
著者の経験談
著者は現在、放課後等デイサービスで小学生を対象に療育をしています。
放課後等デイサービスでは、遊びなど子どもたちがやりたい好きな活動を中心に行っているため、遊びといった活動の中で様々な協調運動の問題が見られます。
まずは、粗大運動を例に見ていきましょう。
ボール遊びでは、相手とうまくボールを投げ合うのが苦手、的に上手にボールを当てるのが苦手な子どもたちが多い印象があります。
その他、縄跳びもよくやる活動ですが、タイミングに応じて縄を跳ぶといった運動が思いのほか難しい子どもたちもよく見受けられます。
また、鬼ごっこなどをしていると、どこか走り方がぎこちないといった子どもたちも多く見られます。
次に、微細運動を例に見ていきましょう。
まずは目につくのがハサミや定規など道具の使用です。
工作遊びをよくすることが多いのですが、道具の使用は、細かい手の運動に加え、右手と左手で別の動きが必要になるため、苦手としている人が多いといった印象があります。
また、折り紙もよくやりますが、線にそって折れない、角に合わせて折るが難しい子どもたちが多くいます。
上記の放課後等デイサービスでの療育経験は、前述した小学生の粗大運動と微細運動で多かった内容と非常に合致しているといった実感があります。
もちろん、運動の問題も個人差があるため、子どもの中で、得意・不得意など個人間差・個人内差もあるかと思います。
今回は、全般的に多く見られる運動の問題に焦点を当てて述べてきました。
以上、学童期の協調運動の問題について【療育経験を通して考える】について見てきました。
学童期の課題というと、勉強を通しての達成感や、仲間関係の構築やそこで得られる自己肯定感など様々な発達課題があります。
一方では、今回見てきたように、協調運動に問題があると、学童期の発達課題に支障が出てくる可能性があります。
そのため、今後さらに教育現場や福祉現場を中心に、協調運動といった問題についても理解や支援が必要になると感じています。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も運動の問題についても理解を深めていきたいと思っています。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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辻井正次・宮原資英(監修)澤江幸則・増田貴人・七木田敦(編著)(2019)発達性協調運動障害[DCD]不器用さのある子どもの理解と支援.金子書房.