ADHD(注意欠如多動症)の特徴の一つに〝衝動性″があります。
例えば、順番が待てない、自分が思ったことをすぐに口にしてしまう、せっかち、物事をじっくり考えることが苦手、すぐにやりたい気持ちが抑えられない、などが特徴とてあります。
それでは、ADHDの衝動性を理解し支援していく上で、どのような視点が重要なのでしょうか?
そこで、今回は、ADHDの衝動性への理解と支援について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきます。
今回参考にする資料は、「米澤好史(2015)発達障害・愛着障害:現場で正しくこどもを理解し、こどもに合った支援をする:「愛情の器」モデルに基づく愛着修復プログラム.福村出版.」です。
衝動性への理解について:実行機能を例に
〝衝動性″を理解する上で、外せないキーワードに〝実行機能”があります。
それでは、以下、著書を参照しながら〝衝動性″について理解を深めていきます。
衝動性とは、実行機能(Executive Function)の弱さであり、深く考えずに、その場しのぎの行動をしてしまうことを指します。
実行機能とは、計画を立て、その計画通りに集中することの維持、別の刺激に飛びつくことを抑制するプロセスに関わっている高次の脳機能のことを言います。
衝動性のある人は実行機能の弱さから、自分がやってしまった行為に気づいたり振り返ることが苦手です。
実行機能に修正が加えられないと行動の改善が難しいとされています。
そのため、同じミスや失敗を繰り返してしまうことになります。
さらに、大人や周囲がそうした行動を叱責すると、より行動がエスカレートしたり、関係性の面でも悪循環に陥る場合もあります。
衝動性への支援方法について:2つのポイントを例に
支援方法として、①すぐに報酬を与えるという方法(言葉などで)、②振り返りのスコープ設定支援などがあります。
①すぐに報酬を与えるという方法は、ADHDの人の特性でもある報酬遅延の課題への対応となります。
つまり、ADHDの人はすぐに報酬を好む傾向があり、じっくり長期的なスパンで何かを取り組むのを苦手としています。
そのため、長期的に何かを取り組む際にも、何かすぐに達成感が得られる報酬を必要とします。
現場での対応として、子どもの行動をすぐに褒めるということが重要になります。
例えば、「○○と○○が終わったらやりたい遊びができるよ」ではなく、「準備ができたら褒める」、「片付けができたら褒める」など、一つひとつの過程を褒めるということが重要になります。
こうした即時強化(褒める)と一緒に、「何のために」の目的支援と「どのように」の手段支援を付加すると成功しやすいと考えられています。
他にも、集団の中で普段は集団から外れた行動(椅子に座らないなど)をとっていた子どもが、集団に合わせた行動(椅子に座るなど)をとった時に「座っているね!すばらしい!」などと、その行動をすぐに褒めることが大切になります。
こうした地道な取り組みが重要であり、望ましい行動が強化され増えてくることで、相対的な問題行動への頻度が低下していくといった支援効果が期待できます。
②振り返りのスコープ設定支援とは、実行機能といった自分の行動を振り返り反省することを苦手としている人に活用できる方法です。
具体的な支援内容として、実際の行動を細分化し、行動単位で区切る支援を言います。
例えば、「最初、ここにいた時、何してた?」、「棒をもって人に向けて振り回していたよね?」などと区切って聞き(できれば具体物をもった方が記憶を引き出すのに有効)振り返りをしていきます。
そして、振り返りながら「次は○○していこう」などと、細かい行動単位ごとに、その都度、すぐに振り返り・即時強化することが大切になります。
また、大人と一緒に振り返ることで、大人との人間関係の構築にも効果があるとされています。
やってはいけない振り返りの対応として、「今、何やったの?全部言ってみて?」など、アバウトな指示では振り返りが苦手な子どもには効果が全くないということです。大切なことは行動の細分化や具体性です。
著者の経験談
最後に、著者の療育現場での経験から、個人的な意見や課題などをお伝えしていきます。
著者自身も、現場で衝動性の特性のある子どもへの対応の難しさを感じながら試行錯誤を繰り返しています。
衝動性の特性がある子どもは、確かに、考える前にやってしまう、そして、自分の行動を振り返る力が弱いなどの特徴があると実感しています。
そのため、療育現場でもできた行動をしっかりと褒める、そして、改善点を振り返るなどの対応を取るようにしています。
取り組みの効果は短期ではそれほど感じませんが、長期で見ると非常に変わったと感じるケースもあります。
衝動性の行動に対して、叱責や過度な注意は一時的な効果があるかもしれませんが、大人との信頼関係の上でデメリットが多いと思います。
例えば、厳しく注意する人の言うことは聞くようになっても、その人がいない、見ていな場所では効果がないのであれば、やはりその子どもの成長にとってプラスに働いたと解釈するのは難しいと思います。
人によって態度をコロコロ変えるのは、自分の行動がしっかりと内省でき、悪い所を修正する力が育まれているとは言えないと感じます。また、職員間での支援の格差が生まれ、よいチームではなくなるリスクもあると思います。
著者の中で大切にしていることは、衝動性への知識を他の職員と一緒に深め共有していきながら、支援策を考えること、そして、長期的な視座に立った継続的な取り組みの実施と評価です。
行動特性の理解を、現場の子どもの行動を観察していきながら、知識も併せて分析していくことが深い理解に繋がると思います。
そして、一人では支援が難しいということから、チームでしっかりと情報を共有することが重要だと思います。
課題としては、対応する職員の負担が限定される場合があるということ、そして、効果がなかなか見えにくい行動改善に向けて、どうやってモチベーションを維持し長期的な展望を描いていけるかだと思っています。
こうした課題に対しては、また別の記事で内容を深堀していきたいと思います。
今後も、衝動性など、一見すると問題視されやすい行動に対して、どう理解し、どう支援していけばいいのか、他の職員と力を合わせ、どん欲に知識を吸収していきながら、課題解決を探っていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
ADHDに関するお勧め書籍紹介
関連記事:「ADHDに関するおすすめ本【初級~中級編】」
関連記事:「ADHDに関するおすすめ本【中級~上級編】」
米澤好史(2015)発達障害・愛着障害:現場で正しくこどもを理解し、こどもに合った支援をする:「愛情の器」モデルに基づく愛着修復プログラム.福村出版.