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療育で大切なこと【子どもの「主体性」を育てることについて考える】

投稿日:2022年7月6日 更新日:

子どもたちが自らの意思や考えで行動することを「主体性」があると言います。

教育現場でも、自ら考え行動するといった「主体性」を育てることを大切にしています。

著者は療育現場に長年にわたり関わってきていますが、子どもの「主体性」を育てることはとても大切なことだと考えています。

 

それでは、子どもの「主体性」を育てるためには、根本的には何が必要なのでしょうか?

 

今回は、著者の療育経験も踏まえ、子どもの「主体性」を育てることについて考えていきたいと思います。

 

 

今回、参照する資料は「小林隆児・鯨岡峻(編)(2005)自閉症の関係発達臨床.日本評論社.」です。

 

 

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子どもの「主体性」を育てるには何が大切か?

以下、著書を引用します。

多くの経験を与えるという前に人との関係をしっかり作ること、そして自分を肯定し、周囲を信頼する心の基盤を作ること、それが主体として生きる原点だと思います。その基盤があれば、子どもの側から自分の世界を広げる動きが出てきて、自然に経験世界が豊かになって行くと思う(略)

著書の内容では、「主体性」を育む原点は、人との信頼関係にあるとして、自他を肯定し信頼することが主体を育み、その後、自分で世界を広げていく原動力になると述べています。

一方で、「主体性」を阻害する要因とはなんでしょうか?

著者が考えるに、大人など周囲からの押し付けが強くなることだと考えます。

特に親や先生などは子どもたちのためを思ってか様々なことを教えようとします。これ自体悪いことではありませんが(自然なことだと思いますが)、過度な押し付けや、大人の価値観を無理に子どもに強要することは、「主体性」が弱まり、周囲に合わせることがよいといった、自分で考え行動することからは遠のいてしまいます。

また、子どもは周囲の大人をモデルとして成長していきます。周囲の大人が子どもにとって真似したくない存在だと、これもまた「主体性」の成長から遠のいてしまいます(例外として、反面教師的な存在から学ぶということもあるかもしれませんが・・)。

このように、子どもの「主体性」を育むためには、大人が過度な価値観の押し付けをせずに、大人自体が子どものモデルとなるような存在になるということが必要だと思います。

過度な押し付けをしないということは、子どものことをよく観察したり、子どもの思いに寄り添う姿勢を見せることでもあります。

また、モデルとなる存在というと何かハードルが高いとったイメージがあるかと思いますが、これは、大人と関わる子どもがその大人の中に取り込みたい良いところがあるかどうかといった認識で良いのかと思います。

何もすべてを完璧にこなし、常に高い目標を持って行動しているなどといったハードルが高いものではありません。子どもが良いと感じる点が少しでもあれば良いと思います。

 

 


それでは、次に、著者の療育経験から「主体性」が強くなったと感じる事例について紹介していきます。

 

著者の経験談

著者の療育現場でも子どもたちの「主体性」が高まったと感じるケースがあります。

小学校の高学年のA君は、低学年時には大人からの過度な叱責を受けることがよくありました。

元々、好奇心旺盛なA君でしたが、今と比べると周囲への興味関心は乏しく、いつも大人の顔色をうかがう様子もありました。

また、活動もなんとなく大人に決めてもらったり、大人にやってと要求するなど投げやりな様子もありました。

それが、学年が上がり周囲の大人の関わりに変化が出てきました。

関わり方として、過度な叱責が減り、じっくり丁寧にA君に向き合う様子が増えたという印象です。

こうした関わりにより、A君は周囲の大人に信頼を寄せる様子が増えていきました。

こうした信頼関係は大人との関係だけではなく、A君自身の自信にも繋がっていきました。

A君は、自らやってみたい活動を自分で考えたり、活動の種類やできることも増えるなど、自ら「主体性」を持って行動する様子が増えていきました。

A君のケースから考えられることは、大人が丁寧にA君との関わりを見直し・変えていったことにあり、その中で信頼関係を構築できたことが大きな要因としてあると思います。

また、A君も丁寧に寄り添う大人の姿勢を見て、他児に対しても優しい声掛けなどができるようになってきました。

まさに、大人が良いモデルとなることの重要性を再認識しました。

 


以上、事例も踏まえて子ども「主体性」を育てることの大切さについてお伝えしてきました。

子どもの中にどのような可能性や成長の芽があるのかはわかりません。それは、「主体性」が育まれることで徐々に露わになるのだと思います。

私たち大人は、こうした子どもたちの「主体性」を阻害せずに、自然に育てていけるように関わっていく必要があるのだと思います。

そういう私もまだまだ未熟ですが、こらからも子どもの発達の可能性を阻害せずに、丁寧な療育を心掛けていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

小林隆児・鯨岡峻(編)(2005)自閉症の関係発達臨床.日本評論社.

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