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自閉症(ASD)と合併症-療育経験を通して考える-

投稿日:2022年6月9日 更新日:

 

自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)とは、対人・コミュニケーションの困難さと限定的興味と反復的(常同)行動を主な特徴としています。

ASDには、様々な合併症があると言われています。

著者の療育現場でも、ASDの特性だけが顕著に目立つケースはむしろ少なく、様々な合併症が見られるケースの方が多い印象があります。

 

そこで、今回は、著者の療育経験も交えながら、自閉症(ASD)の合併症についてお伝えします。

 

※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。

 

 

今回、参照する資料は「岡田尊司(2020)自閉スペクトラム症:「発達障害」最新の理解と治療革命.幻冬舎新書.」です。

 

 

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自閉症(ASD)と合併症-療育経験を通して考える-

それでは、著書を参照しながらASDの合併症について見ていきます。

子どもの自閉症の三大合併症・・・・・・てんかん、睡眠障害、消火器疾患

著者の療育現場で多いのと感じるのは、睡眠障害です。これは、夜中に目を覚ます、寝付くまで時間がかかるといったケースがよく見られます。

そのため、療育では、生活リズムを整えることを目的に、未就学児ではお昼寝を取り入れたり、学童期ではその日の活動の過ごしなどを工夫していきます。

また、睡眠障害といった睡眠の問題は大人の当事者の方にも多く見られます。

 


不安障害、身体化症状・・・・・・頻度の高いものとして、パニック障害や社交不安障害などの不安障害が挙げられます。

著者の職場には当事者スタッフがおりますが、ストレスなどで頭痛などの身体化症状が見れる方もおります。背景要因は様々かと思いますが、頭痛は気圧の変化などの影響を受けると話されている方も多くいます。

 


適応障害、うつ状態・・・・・・学校や職場での生活が行き詰まる適応障害、それに伴ううつ状態も、頻度の高い問題です。

著者が見ている中でも、適応障害やうつ状態は多い印象があります。

著者は放課後等デイサービスで働いていることもあり、学校に通っている子を預かっていますが、学校での過ごしの状態が放課後にも影響するため、学校の情報や学校との連携は必須かと思います。

また、環境への不適応状態が続き、その気持ちの矛先が内在化するとうつに状態になるため、環境への適応状態を把握していくことが、予防の視点から見てとても大切だと思います。

 


ADHDや注意の問題・・・・・・注意力の問題や多動もよくみられ、約三割がADHDの診断基準にも当てはまるとされます。

著者が見ている子どもたちの中に、ADHDの特徴を示す子は多くおります(著者の見立てですが)。

これは、もともと併存・重複しているケースから、ASDの特徴がADHDのような特徴として見えるケースまで考えられます。

そのため、特性理解がとても重要であり、どちらの特性もあれば、両方の特性を理解しそれに対する配慮が必要になります。

こうしたケースは成人期以降の大人にもよく見られます。

ASDとADHDの両方の理解と支援は、療育スタッフにとってとても大切な視点だと実感しています。

 


協調運動や音韻の障害・・・・・・・(略)協調運動がスムーズにいかない発達性協調運動障害や、言葉の発音などに困難がある音韻障害などを伴うことも少なくありません。

著者の療育現場で、不器用さなど、全身運動がどこかぎこちない、手先の動作が思うようにいかないといったケースは最近特に増えている印象があります。

これは、発達性協調運動障害(DCD)が発達障害に加わり、より運動要素の理解が進んできているためだと考えられます。

音韻障害がある子も少なからずいるといった印象です。言語発達に関する理解は、現場ではまだまだ途上といった感じもしますが、外部に言語聴覚士など専門化もおりますので、今後もますます連携を踏まえ、理解と支援の上で重要になってくると思います。

 


アレルギーやホルモン機能異常・・・・・・・ASDの人には、アトピー性皮膚炎や気管支喘息、アレルギー性鼻炎などのアレルギーの合併症が多いと言えます。

アトピーや喘息、鼻炎なども著者の療育現場でよく見られます。

そのため、アトピーがあるとなかなか活動に集中できなかったり、喘息があると運動への配慮の必要性といった理解が重要になります。

 

 


以上、ASDと合併症について見てきました。

これらの症状で最近著者が多いと実感するのが、睡眠障害、ADHD、協調運動障害です。

そのため、ADHDや協調運動障害など他の発達特性の理解や配慮事項などは押さえておく必要があると考えています。

また、睡眠障害の研究は思いのほか少ない印象があります。それだけ睡眠研究はまだわからないことが多いのだと思います。

 

ASDへの理解と支援をしていく中で、合併症の観点はとても重要になります。

私自身、これまで取り上げてきた内容を踏まえてその子を理解していかないと、断片的理解に留まってしまう気がします。

今後も合併症など他の疾患や他の発達障害への理解も進めていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

関連記事:「【発達障害児が抱える睡眠障害(睡眠の問題)】6つの背景要因を通して考える

 

岡田尊司(2020)自閉スペクトラム症:「発達障害」最新の理解と治療革命.幻冬舎新書.

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-合併症, 自閉症

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