発達性協調運動障害とは、粗大運動(体の大きな運動)や微細運動(手先の運動)といった運動の障害であり、最近少しずつですが、子どもを中心に注目されるケースが増えてきています。
詳しくは、「不器用さについて考える:発達性協調運動障害とは?」に記載しています。
一方、視覚情報処理の困難さとは、視機能、視知覚/視覚認知、視覚から運動出力のすべて、あるいは、いずれかに困難さを抱えることを言います。
詳しくは、「視覚情報処理について」に記載しています。
まだまだ、社会的な認識は低いとされていますが、発達障害のある人の中には、視覚情報処理にも困難を抱えている場合が多いとされています。
発達性協調運動障害や視覚情報処理の困難さは学習においてネガティブに働くと言われています。以下にそれぞれの困り感の例を記載します。
発達性協調運動障害と視覚情報処理の困難さについて
発達性協調運動障害の場合
- 筆圧が弱い
- 文字のパーツの比率がおかしい
- 文字や文がはみ出している
- 文字の大きさが揃っていない
- 行がゆがんでいる
- 書くのが遅い
- 楽器の使用など物の操作がうまくできない
- 体育で、縄跳びや器械体操、球技などが苦手
視覚情報処理の困難さの場合
①視機能の問題
- 読んでいる時に行や列を読み飛ばす
- 同じところを繰り返し読む
- 長時間集中して読めない
- 黒板を写すのに時間がかかる
- 計算は得意だが、百ます計算が苦手
②視知覚/視覚認知の問題
- 文字や数字の習得が遅い
- 表やグラフを読み取るのが苦手
- 図形や絵を書き写すのが苦手
以上、学習面を中心にそれぞれの困難さを見てきました。
対応方法について
それでは、両者においてどのような対応が必要なのでしょうか?
以下に、それぞれの対応について記載します。
発達性協調運動障害の場合
トップダウン的アプローチ:機能低下の状態を前提として、「できること」を増やす働きかけ(例として以下)
- ノート、プリント、解答用紙の書くスペースを大きくして、書きやすさを確保する。
- 書く量を減らす工夫をする。プリントや本に書き込む、黒板の文字や図を写すと時に一部を写真でとることを許可するなど。
- 定規やコンパス、鉛筆などを機能的に使うための補助器具や特殊な用具を使う。協調運動障害があっても扱いやすい用具が市販されている。
- 姿勢を保ちやすいような座面の工夫をする。作業療法士が学校に巡回している場合、個人に適した椅子や座面の調節を依頼することができる。
- 上手にできなくても将来困ることにならない場合、教育的配慮の範囲内で、リコーダーや縄跳び、器械体操の達成目標を低めに設定する。
- 運動会の演技、特に組体操の参加位置に配慮する。
- 本人が丁寧に作業した時には、その結果を否定しない。
ボトムアップ的アプローチ:機能低下を改善する働きかけで、そのためにも、作業療法による訓練を考えることも必要
視覚情報処理の困難さの場合
トップダウン的アプローチ:機能低下の状態を前提として、「できること」を増やす働きかけ(例として以下)
- 教科書やプリント、解答用紙の拡大
- 表示の字詰まり、図詰まりを回避する、空白のスペースを広くとる
- 1つの面に多くの情報を盛り込まないようにする、複数面に分ける
- コントラストを強くする
- 背景をシンプルにする
ボトムアップ的アプローチ:機能低下を改善する働きかけで、ビジョントレーニングなどがある
以上がそれぞれの対応の例になります。
発達性協調運動障害や視覚情報処理の困難さはまだまだ社会の中での認識は低いですが、私自身、長年、療育の現場に勤めていると、これらに困難さを抱えている子どもたちは(大人も)たくさんいるという印象があります。
今後も人の発達をより深く知るために、上記の内容への理解も深めていきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
若宮英司(2017)特集 限局性学習症(学習障害) LDとDCD,視覚情報処理障害.児童青年期精神医学とその近接領域,58(2),246-253.