子どもは不快・不安な気持ちが生じた際に、その気持ちを緩和・回避しようといった心の無意識の働きである〝防衛機制″が生じることがあります。
〝防衛機制″には、大きく〝身体化″〝行動化″〝言語化″があると言われています。
そこで、今回は、防衛機制とは何かについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、身体化・行動化・言語化の視点から理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「てんねんDr.(2025)子どもの発達障害がよくわかる本 これ1冊で理解もサポートも!SB Creative.」です。
防衛機制:〝身体化″について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
子どもは特にそうなのですが、自分の内面のモヤモヤを言葉で表現することがまだ難しい場合、「身体化が起こりやすい」といわれています。
防衛機制の一つ目は〝身体化″であり、これは、子どもが自分の不安や不快な思いをうまく言葉にできないことから身体化に繋がりやすいと記載されています。
著者の周りには、調子が悪くると腹痛を訴えはじめるなど、心といった内面の問題が身体に現れるケースが少なからず見られることがあります。
一方で、内面といった心の問題がすべて身体に出るとは限りませんので、他の要因がないかも検討していくことが大切だと言えます。
防衛機制:〝行動化″について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
行動化もまた、内面のモヤモヤを言葉で表現することが難しいときに出てくるものです。
防衛機制の二つ目は〝行動化″であり、これは、子どもが自分の不安や不快な思いをうまく言葉にできないことから行動として現れるものだと記載されています。
著者の療育現場では〝行動化″はよく見られると感じています。
例えば、自分の見通しが急に崩れた際にパニック・癇癪を起こすケース、不快な音が急に聞こえた際にパニック・癇癪を起こすケース、他者との関わりがうまくいかず徐々にイライラしはじめた結果、人や物に当たり始める(手が出る・物を投げるなど)ケースなど数多くあります。
自分の不安や不快な思いがまだうまく言葉で表現できないと、その思いがマイナスな行動として表出されることは子どもだけではなく、大人に置き変えてもあると言えます。
それほど、言葉は自己制御において重要な働きをしているのだと言えます。
防衛機制:〝言語化″について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
言語化は理想的な表現法です。言語化とは、心配があるとき、人に悩みとして打ち明けられることができたり、相手に対して不満があるとき、自分で言葉を上手に選んで自己主張ができたりすることです。
防衛機制の三つ目は〝言語化″であり、これは、子どもが自分の不安や不快な思いをうまく言葉で表現することができるといった、まさに、理想的な表現法だと記載されています。
著者は、子どもが自分の様々な思いをうまく言葉で表現できるようになった頃から、特に情緒が安定してくことを実感しています。
もちろん、急激に言語化が可能になるわけではありませんが、子どもに関わる大人が、多くの情動交流を基盤として、子どもの思いを代弁したり、嫌な気持ち・事柄を一緒に紙に書き出すなど、様々なアプローチを取っていくことで、言語化の力は徐々に高まっていくのだと感じています。
著者がこれまで見てきた子どもの中には、嫌なことがあると大人に相談できるようになったり、嫌な出来事を自ら紙に書き出すことで嫌な気持ちを鎮めることができるようになっていったケースもありました。
また、著書にもありますが、言葉での表現が難しい場合には、絵カードなど他のツールの活用も〝言語化″の一種だとしています。
著者も療育現場において、絵カードや写真などを活用していくことで、子どもが自分のやりたいことをうまく示せるようになったことで、情緒が安定していったケースもありました。
そのため、療育(発達支援)において重要なことは、〝言語化″の力をどう育てていくかということが一つ大きな課題だと言えます。
以上、【防衛機制とは何か?】身体化・行動化・言語化の視点から考えるについて見てきました。
子どもたちは生活の中で、様々な不安や葛藤を抱えて生きています。
その際に、防衛機制が働くことはよく起こります。
特に、発達障害児においては、自分の不安や不快な気持ちの表出を苦手としていることがよくあります。
そのため、表出方法もパニック・癇癪や暴力行為といったネガティブな方法を取らざるおえないのだと言えます。
こうした場合において、今回見てきたように、いかに言語化の力を育てていけるかが鍵になるのだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育実践の中で、子どもたちの言語化の力を育てていくための手立てを試行錯誤していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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