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【療育(発達支援)の成果】サードプレイスと興味関心をキーワードに考える

投稿日:2025年4月8日 更新日:

 

療育(発達支援)を長年行っていると、子どもたちの成長を実感する機会に多く出会うことがあります。

こうした出会いは、療育(発達支援)の〝成果″を感じる時でもあります。

もちろん、療育(発達支援)の成果は、複合的な要因が影響していることが多いため、特定の因果関係からは語ることができない難しさがあります。

一方で、〝○○の発達が大きく影響して○○の成果が出た可能性がある″〝○○の支援が大きく影響して○○の成果がでた可能性がある″といった仮説を立てることも可能だと言えます。

そして、長期的な子どもとの関わりを通して、この○○に当てはまるものが徐々に見えてくることがあります。

さらに、多くの事例を通して、仮説の精度を高めていくことが可能になっていきます。

 

それでは、療育(発達支援)の成果を感じる時として、どのような事例があるのでしょうか?

 

そこで、今回は、療育(発達支援)の成果について、臨床発達心理士である著者の経験談から、サードプレイスと興味関心をキーワードに理解を深めていきたいと思います。

 

※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。

 

 

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【療育(発達支援)の成果】サードプレイスと興味関心をキーワードに考える

事例:小学校中学年のAさん(当時)

Aさんが、著者が勤める事業所に最初に来たのは小学校中学年の頃のことでした。

最初は母から離れることが難しかったことから、母と一緒に事業所で短い時間過ごす日が続きました。

なかなか母から離れることが難しく、母から話を聞くと、これまで学校と家以外の場所でじっくり過ごした経験がほとんどないとのことでした。

また、学校も行けない日が続いていたため、実質、自宅で、そして、家族と多くの時間を過ごすことが多い状況でした。

一方で、母がいる状況の中で、大人とであれば、それほど緊張せずに過ごすことができました。

著者はAさんとの関わりの中で、興味関心が独特でありながらも、自分の興味関心のあることに対して多くの知識を持っていること、そして、その知識を非常に熱弁して話す様子から、Aさんは好奇心旺盛な長所があると感じることができました。

そのため、Aさんに対して、学校や家以外にも安心できる環境、つまり、サードプレイスの存在の必要性、そして、Aさんの興味関心に寄り添うことが支援の入り口としてとても大切だと感じました。

 

 


それでは、次に、サードプレイスと興味関心をキーワードに支援の経過をお伝えしていきます。

 

サードプレイスと興味関心への支援から見たAさんの変化

著者はAさんが安心して事業所で過ごすことができるように、まずは、Aさんとの信頼関係の構築を考えていきました。

もちろん、信頼関係は大人との関係もありますが、事業所といった環境への安心感を様々な視点からアプローチすることも大切だと言えます。

そのため、まずはAさんが安心できる活動空間を整えること(他者がいない静かな空間)、スケジュールの設定(1.○○の遊び、2.おやつ、3.○○の遊び・・・)、興味関心を中心とした遊びの考案共感・受容的関わりなどを継続していきました。

その結果、Aさんは、最初は短い時間における母と一緒の過ごしから、少しずつ母が離れた状況においての過ごしができるようになり、さらには、一人で事業所に来て過ごすことができるようになっていきました。

当初、母と一緒に特定の空間で短い時間過ごしていたことを振り返って見ても、急激な成長だと言えます。

そして、Aさんは、特定の空間以外での過ごしが増えていく中で、少しずつ、他児との交流も増えていきました。

著者は、Aさんの興味関心の把握をもとに、同じような興味関心を持つ他児と、部分的に関わる機会が持てるように、どちらか一方が行っている遊びに巻き込む声掛けなどを行っていきました。

Aさんは、他児との交流の中で、部分的ではありますが、興味関心が合うと、非常にワクワク・イキイキした表情で過ごす様子が見られるようになっていきました。

そして、事業所での様々な経験の中で、楽しかったこと・興味のある内容を楽しそうに話す様子も出てきました。

 

一方で、支援は常に順調に進むものではないと実感することもありました。

それは、ある時から、急に事業所への行き渋りが見られるようになったことです。

何かはっきりとしたきっかけがあったわけではありませんが(著者の推測ですが)、Aさんを自宅に迎えに行くと険しい表情になることが多くなっていきました。

その後、しばらくの間、Aさんとは個別の関わりが続くことが多くありました。

しかし、Aさんは個別の関わりの中でも、これまで事業所で過ごしてきた経験などを自ら楽しそうに振り返る様子は継続して見られていました。

また、Aさんが興味関心のある話題を、Aさんに個別に関わる大人に対して、楽しそうに話す様子は変わりなくありました。

著者は、これまで通りAさんに対して、興味関心に寄り添いながら、共感的・受容的な態度で接し続けていきました。

そこから、しばらくの期間が経つと、Aさんは事業所にまた変わりなく来れるようになりました。

もちろん、浮き沈みは時折ありますが、それでも、来所当時と比べて、格段に、事業所に対する安心感、来る喜び、興味関心を嬉しそうに話すことの高まりなどが見れるようになったと実感しています。

こうした変化は、Aさん自身がこれまで経験として持つことのなかったサードプレイスの必要性を感じることができたこと、そして、興味関心を共有する喜びを持てたことが大きく影響したのだと感じています。

 

 

関連記事:「発達障害児にとって大切な〝サードプレイス″の価値について考える

関連記事:「【発達障害児と信頼関係をつくるために大切な2つのこと】自閉症を例に考える

関連記事:「【発達障害児はなぜ興味関心が広がりにくいのか?】定型発達児との違いを通して考える

 

 


以上、【療育(発達支援)の成果】サードプレイスと興味関心をキーワードに考えるについて見てきました。

子どもたちにとって、家や学校以外の第三の居場所の存在はとても大切だと言えます。

そして、こうしたサードプレイスの価値を作り出していく取り組みが今後ますます必要になってくると感じています。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も貴重な療育実践を風化させないように、様々な経験を振り返りながら、その中で見えてくる価値・意味を見出していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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