療育(発達支援)を長年行っていると、子どもたちの成長を実感する機会に多く出会うことがあります。
こうした出会いは、療育(発達支援)の〝成果″を感じる時でもあります。
もちろん、療育(発達支援)の成果は、複合的な要因が影響していることが多いため、特定の因果関係からは語ることができない難しさがあります。
一方で、〝○○の発達が大きく影響して○○の成果が出た可能性がある″〝○○の支援が大きく影響して○○の成果がでた可能性がある″といった仮説を立てることも可能だと言えます。
そして、長期的な子どもとの関わりを通して、この○○に当てはまるものが徐々に見えてくることがあります。
さらに、多くの事例を通して、仮説の精度を高めていくことが可能になっていきます。
それでは、療育(発達支援)の成果を感じる時として、どのような事例があるのでしょうか?
そこで、今回は、療育(発達支援)の成果について、臨床発達心理士である著者の経験談から、象徴機能の発達の重要性をキーワードに理解を深めていきたいと思います。
【療育(発達支援)の成果】象徴機能の発達の重要性をキーワードに考える
事例:小学校高学年のA君(当時)
A君とは、著者が低学年の頃から関わりのあった子どもです。
そのため、小学校という学童期すべてにおいて携わることができました。
A君が低学年の頃には、大人と一対一の過ごしが多く、遊びの内容はプラレール遊び、粘土や工作遊び、読書などが中心でした。
中学年(3、4年生)以降になると、ごっこ遊びなど集団遊びへと遊びの内容が展開していきました。
さらに、高学年(6年生)になると、カードゲームなど、少し難しいルール遊びも加わっていきました。
A君との関わりにおいて難しいと感じたことは、ごっこ遊びの際に遊びのイメージがうまく持てないことにありました。
例えば、戦いごっこなど、何となく面白そうな集団遊びに意欲的に参加してくるも、他児たちが○○したいといった遊びのイメージを理解することが難しく、自分がやりたいように遊びを進めようとしてしまい(もちろん、A君に悪気はありません)、他児から注意を受けることも少なからずありました。
こうしたA君の行動の背景として、象徴機能(イメージする力)の育ちがまだ未成熟であったことが考えられました。
それでは、次に、象徴機能をキーワードに支援の経過をお伝えしていきます。
象徴機能への支援から見たA君の変化
A君には、自閉症スペクトラム障害(ASD)の特性に加え、知的レベルにも遅れがありました。
そのため、著者はA君が集団遊びに興味を持っていることを基点(興味関心を基点に)に、まずは集団全体にとって分かりやすいごっこ遊びを構想していきました。
例えば、大人(著者)VS子どもチームでの戦いごっこといったように、極力、ルールを単純化していくなどです。
ルールを単純化したごっこ遊びによって、A君はごっこ遊びでの楽しい経験の積み重ね、成功体験を多く積み上げていきました。
その過程の中で、A君は他児への意識・理解を深めていくこともできていったように思います。
例えば、戦いごっこには、チームで協力する要素があります。
そうなると、A君は自分の役割を意識しながら、同時に他児の役割も意識するようになっていきます。
その過程の中で、A君は○○君という他児は戦いごっこの中で、ピンチの時に強いキャラとして登場するボスのような存在(役割)である、また、○○君という他児は色々な戦術を思いつく存在(役割)であるなど、個々の違いを意識・理解できるようになっていきます。
象徴機能の育ちにおいて大切なことは、遊びの中で様々な意味を取り出し、取り出した意味(要素)を関連づけていくことにあります。
ごっこ遊びなどに見られる集団遊びは、象徴機能を育てる上でとても有効なものだと言えます。
一方で、関わり手がどのようにごっこ遊びを展開していくかという型にはまらない創造性や、他児同士を繋ぐ声掛けなど臨機応変さもまた要求されると思います。
A君は、大人・他児とのごっこ遊びを中心に、象徴機能を発達させていきました。
そして、象徴機能(イメージする力)の発達は、言葉の力の基盤(認知能力)の形成にも大きく影響していきました。
A君は、これまで理解が難しかったカードゲームなどにおいても、ルールを単純化したことで(言葉や視覚による簡単な説明の理解)、A君の中で〝わかる″〝楽しい″といった世界が開けていきました。
さらに、遊びの中で、他児の言動や行動の背景を深く考える・感じる力(心の理論の力)も育まれていきました。
もちろん、こうした背景には、他者と関わりことが楽しいといった対人的な動機付けも大きく影響していたと思います(○○さん、○○くんと遊びたい!)。
その後のA君は、トランプやウノなど、さらに難易度の高いカードゲームにおいても、大人のサポートがなくても楽しめる姿が出てきました。
著者が昔、カードゲームなどルール性のある遊びにおいて、A君が集団の輪にうまく混ざることができなかったことを思い起こすと、非常に大きな成長だと感じます。
このように、象徴機能の育ちには、言語発達(認知能力の発達)に大きく影響して、言語発達は他者の心の状態を理解する力に大きく影響していくのだと、療育での実践を通して学ぶことができた大切なケースだと感じています。
以上、【療育(発達支援)の成果】象徴機能の発達の重要性をキーワードに考えるについて見てきました。
療育で大切なことは、子どもの興味関心から世界を広げていく視点だと言えます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も多くの療育実践を通して、子どもの将来が豊かになる関わりを目指していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「【言葉の発達で大切な〝象徴機能″を育てるために必要なこと】療育経験を通して考える」
関連記事:「【療育(発達支援)で大切なこと】〝イメージする力″を育てることの重要性」
関連記事:「【心の理論と言語能力の関係について】自閉症児との療育経験を通した関わりから考える」