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【発達障害児に見られる偏食への対応】SST・ペアトレ・感覚統合からのアプローチ

投稿日:2024年12月31日 更新日:

 

発達障害児は、発達特性などが影響して、生活の様々な所で困り感が生じる場合があります。

著者は長年、療育現場で発達障害児支援を行っていますが、個々の発達特性や発達段階等を踏まえたオーダーメイドな支援はとても大切だと感じています。

 

それでは、発達障害児に見られる偏食に対して、どのような対応方法が有効だと考えられているのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達障害児に見られる偏食への対応について、SST・ペアトレ・感覚統合からのアプローチを通して理解を深めていきたいと思います。

 

※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。

 

 

今回参照する資料は「岩坂英巳・宮崎義博(2021)「うまくいかない」ことが「うまくいく」に変わる!発達障害のある子どもがいきいきと輝く「かかわり方」と「工夫」.幻冬舎.」です。

 

 

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偏食はなぜ生じるのか?

ここでは、著書を参照しながら、偏食の背景要因について3つの視点から見ていきます。

 

1つ目として、〝感覚過敏″です。

感覚の問題″には、様々なものがあります。

例えば、食べ物の臭いが苦手、食べた時の食感(硬さ・柔らかさなど)が苦手、食べ物の温度が苦手、など様々な感覚の問題があります。

発達障害児の多くが、感覚の問題、中でも〝感覚過敏″さを抱えていると言われています。

そのため、目には見えにくい感覚の問題が影響して偏食が生じている可能性もあります。

 

2つ目として、〝こだわり・不安″です。

自閉症児に見られる〝こだわり″の強さは、特定の物しか食べないことにも繋がっていることがあります。

また、〝不安″の強さも、新規な食べ物を拒否する行動に繋がっていることがあります。

 

3つ目として、〝他者承認の理解の弱さ″です。

例えば、子どもが初めて目にする食べ物を食べ、親がそれを褒めたことで、また新しい食べ物にも挑戦しようといった動機が湧くことがあります。

自閉症児においては、定型発達児よりも他者を意識することの弱さ、つまり、他者承認の理解の弱さがあります。

そのため、新しい食べ物を食べようする動機が湧いてこないこともまた偏食に影響していると考えられています。

 

 

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偏食への対応について

著書には、偏食への対応として、〝①SST(ソーシャルスキルトレーニング)″〝②ペアレントトレーニング″〝③感覚統合療法″の3つからのアプローチ方法が記載されています。

 

 


それでは、次に、①②③のそれぞれのアプローチ方法について具体的に見ていきます。

 

① SST(ソーシャルスキルトレーニング)

以下、著書を引用しながら、SSTからのアプローチを見ていきます。

・感覚が嫌で食べられないものは、達成可能な目標を考えてみる

 

感覚の問題などは達成可能な目標を立てる″ことです。

感覚の問題、食感の問題などは苦手な食材の量を調整したり、好きな食べ物に混ぜることで食べられる場合があります。

また、苦手な食材の調理方法を変えてみることも大切です。

この際に、無理な目標を設定せずに、一口食べたら褒める、など達成可能な目標を立てる必要があります。

 

 

② ペアレントトレーニング

以下、著書を引用しながら、ペアレントトレーニングからのアプローチを見ていきます。

・食事を楽しむ環境づくりをする

 

・「できて、褒められてうれしい」という機会をもつ

 

まずは、〝食事を楽しむ環境を作る″ことです。

著書によれば、不安の強さと偏食の強さは関連性があると記載されています。

そのため、楽しんで食事ができる環境を整えていくことが大切です。

頑張って食べられたことを褒めたり、たんぱく質を取ると筋肉が増える、野菜を取ると健康になるなど、食べ物に関してポジティブな会話をすることも必要です。

 

次に、〝褒める機会を作る″ことです。

他者からの承認は子どもの内発性を高めることに繋がります。

そのため、食事に関して、頑張って食べた、楽しく食べた、など良い点をどんどん見つけて褒めていくことが大切です。

 

 

③ 感覚統合療法

以下、著書を引用しながら、感覚統合療法からのアプローチを見ていきます。

・無理強いせず少しずつ少しずつ広げていく

 

・探索や試行錯誤をさせる

 

・承認欲求が高まるまで待つ

 

まずは、〝できることから少しずつ取り組む″ことです。

過度に苦手な物を食べることを促すと、余計に不安が高まり、食べること・食材への拒否が増えていきます。

そのため、現状、無理のはい範囲でできる量の調整調理法の工夫他の食材に混ぜるなどの対応が大切です。

 

次に、〝探索や試行錯誤を行う″ことです。

例えば、苦手な食材を触ったり、切って見せたりすることも食材を理解する上で大切です。

また、苦手な食材を使って調理をしてみることで、自分が作った物なら大丈夫だと感じる子どももいます。

様々な食材を使って新しい料理を試行錯誤して作ることも大切です。

 

次に、〝承認欲求が高まるまで待つ″ことです。

承認欲求が満たされることで、子どもは新しいことに挑戦しようとします。

そのため、大人に褒められたい・認められたいといった承認欲求が育ってくるまで待つことも大切です。

 

 


以上、【発達障害児に見られる偏食への対応】SST・ペアトレ・感覚統合からのアプローチについて見てきました。

偏食は発達障害児によく見られる特徴です。

一方で、偏食に至る背景要因は子どもによって異なります。

そのため、子どもに応じた偏食への対応を工夫していくことが大切です。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で関わる子どもたちにより良い支援を届けていけるように、様々な視点から学びを深めていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【偏食への理解と対応①】発達障害児支援の現場を通して考える

関連記事:「【偏食への理解と対応②】発達障害児支援の現場を通して考える

関連記事:「【偏食への理解と対応③】発達障害児支援の現場を通して考える

 

 


感覚統合に関するお勧め書籍紹介

関連記事:「感覚統合に関するおすすめ本【初級~中級編】

関連記事:「感覚統合に関するおすすめ本【中級~上級編】

 

 

岩坂英巳・宮崎義博(2021)「うまくいかない」ことが「うまくいく」に変わる!発達障害のある子どもがいきいきと輝く「かかわり方」と「工夫」.幻冬舎.

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