療育現場で子どもたちと関わっていると、様々な感覚の問題が見られることがあります。
例えば、感覚過敏、感覚探求、低登録、感覚回避など、様々な感覚の問題があります。
自閉症の人たちは、こうした感覚の問題を抱えているケースが多いとされています。
それでは、自閉症の人にはどのような感覚の問題の特徴があるのでしょうか?
そこで、今回は、自閉症の人によく見られる感覚探求と低登録について、臨床発達心理士である著者の経験談を踏まえて理解を深めていきたいと思います。
感覚探求とは
感覚刺激に対する反応が弱いため感覚刺激を求めて対処行動をとることを感覚探求といいます。
例:砂遊びや泥遊びを一度やると止まらない、また、コマのようにクルクルとまわり続けるなど
低登録とは
感覚刺激に対する反応が弱いことを低登録といいます。
例:名前を呼んでもなかなか振り向かない、痛みへの反応が鈍いなど
今回は、事例紹介は致しませんが、感覚探求と低登録以外にも、感覚過敏や感覚回避もまたよく見られる感覚の問題です。
感覚過敏とは
大きなもの音を聞いて気分が不安定になるなど感覚刺激に対する反応が強く過剰となる状態を感覚過敏と言います。
感覚回避とは
不快な音から離れるなど感覚刺激に対する反応が強くその刺激を回避する行動をとなる状態を感覚回避と言います。
感覚過敏と感覚回避などは一般的には感覚過敏と表現されています。
著者の療育経験の中では感覚過敏について話題に上がることが多くありますが、低登録や感覚探求に関してはあまり話題に上がらない印象があります。
これらは、感覚の問題というくくりで説明していることも多いのではないかと思います。
関連記事:「自閉症の感覚過敏について:感覚過敏への対処方法について療育経験を通して考える」
それでは、次に、3つの事例を紹介していきます。
著者の療育経験(3つの事例紹介):感覚探求と低登録
最初に紹介するのは小学生男子A君です。
A君はトランポリン好き、コマのように体をクルクル回すなどの行動がよく見られていました。
こうした行動特徴は、先ほど紹介した感覚刺激に対する反応が弱いため感覚刺激を求めて対処行動をとる感覚探求に該当します。
こういった感覚探求を理解しておくことで、A君の理解や対応に違いが出てくると言えます。
例えば、A君は帰りの会など、ある活動をしている際に急にその場から飛び出して行き、トランポリンを飛ぶことがあります。それはお昼の時間にご飯を食べているときにもよく起こります。
最初に、この行動を見た著者はただ遊びたくてやっているのだと思っていました。
しかし、感覚に関する知識を学んでからは、感覚刺激が不足したことで生じる行動なのではないか?といった新たな仮説を立てるようになりました。
こうした仮説を立てることで、ある程度、満足のいくまで刺激を入れるように配慮する、普段の生活の中に感覚遊びを取り入れるなどの視点が少しずつ見てきたのだと言えます。
次に紹介するのは小学生男子B君です。
B君は名前を呼んでもなかなか振り向いたり返事をすることが少ない、さらに、トントンと肩を叩いて呼び掛けても反応が少ないなどの行動特徴が見られていました。
こうした特徴は、先ほど紹介した感覚刺激に対する反応が弱い低登録に該当します。
B君は帰り支度など活動の切り替えに時間がかかります。
著者は低登録の特徴があると理解していくことで、B君に対して、できるだけ他の刺激を減らす工夫や、一つの一つやるべき手順を伝えていくなどの対応をするようになりました。
自閉症児は刺激が多い環境にいると、様々な刺激に気を取られてしまい、注意すべきことに対して、注意が向きにくいといった様子が見られます。
そんため、活動空間はできるだけシンプルに構造化することを意識する必要が出てきます。
刺激量を調整することで、声をかけたときの気づきを促すことにも繋がっていきます。
他にも、B君は少し強めのマッサージを好みます。
刺激が弱いと外からの働きかけをしても、意識に上がりずらい様子があるため、B君とは時々マッサージごっこをして、外からの刺激に対する意識を高める遊びをすることを心がけるようになりました。
最後に紹介するのは、療育施設で著者が担任をしたC君です。
C君は擦り傷やあざができるような怪我をしても反応が少ない低登録や、水や砂遊びに没頭するといった感覚探求が見られていました。
C君は非常によく動きまわる元気なお子さんで転ぶことが多いため体は傷だらけでした。
そのため、我々職員はできるだけ怪我のチェックをしっかりするようにして、保護者の方に共有するということを念入りに行っていました。
また、水や砂遊びへの没入感も大切にして、C君が好きな遊びを存分にできるように多めに時間をとるなどの対応を継続していました。
感覚が満たされるで、情緒が整うことが多く、その日の活動が安定することが多かったという印象がありました。
以上から低登録や感覚探求について現場での事例を見てきました。
どれも自閉症のお子さんたちです。
最初はこういった用語の理解はほとんどなく、手探り状態でした。手探りしていきながら、子供たちの行動特徴を考える際に感覚への知識は非常に重要だと思います。感覚への理解を深めることは相手への理解や対応に少なからず良き変化を生じさせます。
今後も感覚への理解を深めていきながら支援のヒントを探っていこうと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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