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行動障害について【特徴・症状の程度・発症しやすいタイプ】 

投稿日:2022年12月6日 更新日:

行動障害(Challenging Behaviour)とは、自傷や他害、パニックや癇癪、器物破損など、その行動が自他に悪い影響を及ぼすものだとされています。

また、行動障害と強度行動障害とを定義上分類している方もおりますが、今回は、以下の参照資料に基づいて「行動障害」に統一して話を進めていきたいと思います。

 

関連記事:「行動障害と強度行動障害の違いについて-行動障害の背景にあるものとは?-

 

それでは、行動障害にはどのような特徴・症状の程度・発症しやすいタイプがあるのでしょうか?

 

そこで、今回は、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、行動障害について、どのような特徴・症状の程度・発症しやすいタイプがあるのかについて考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「英国行動障害支援協会(編)清水直治(監訳)ゲラ弘美(編訳)(2015)行動障害の理解と適切行動支援 英国における行動問題への対処アプローチ.ジアース教育新社.」です。

 

 

行動障害の特徴

行動障害には、攻撃行動(殴る・蹴る・噛みつく)、破壊行動(器物破損)、自傷(頭を叩く・手を噛む)、かんしゃく、逃走行動、異食症、常同行動などがあり、その行動が自他に危害を加えるものだといった特徴があります。

 

関連記事:「強度行動障害とは何か?療育経験を通して関わり方で大切な視点について考える

 

著者がこれまで療育現場で見てきた人たちの中にも、自傷や他害、破壊行動、かんしゃく、逃走行動など上記の内容の大部分は目にしてきたという実感があります。

特に、未就学児を対象とした療育現場やグループホームといった障害の程度が比較的重い人たちに多く見られるといった印象があります。

 

 

行動障害の症状の程度

以下、著書を引用しながら見ていきます。

行動障害の症状の程度には、重度から軽症までかなり幅があります。非常に重度の行動障害では、眼球を指で突いたり頭をはげしく叩きつけた結果、視力が失われてしまったり脳損傷になることもある

 

著書の内容から、行動障害の症状の程度には、重度から軽度まで幅があるとの記載があります。

これは、実際に現場で行動障害のある人たちと関わったことのある人であれば容易に理解できるかと思います。

著者が以前勤務していたグループホームでは、成人の重度の知的障害・自閉症の人たちと関わる機会がありましたが、ここで見られた行動障害は特に著者にとって症状の程度が重いと感じたエピソードがいくつかありました。

例えば、成人男性Aさんは、その日の出来事で何か不満なことがあった様子で一人二階の一室に籠りイライラしていました。時々、慣れているスタッフが様子を見に行っていました。

著者はAさんとは関わりはじめて間もなかったこともあり、一階で他の利用者の人たちを見ていました。

利用者の人たちの就寝準備を終え、周囲が静かになってきた頃に問題が発生しました。

著者と他のスタッフが一階の階段付近の廊下で、小声で話していた次の瞬間、二階からタンスがすごい勢いできて階段の下まで落ちてきました。

そして、Aさんが大声を上げながら部屋中の物を倒したり・破壊する行動に走りだしました。

幸い、Aさんを含め、けが人はなく済みましたが、その日の不満やストレスを溜め過ぎた結果、取らざるおえなかった行動だったのだと思います。

Aさんのエピソード以外にも、相手の顔を殴りかかろうとする、もの投げ、自分の服を引き裂くなどのなど様々なエピソードがありました。

 

 

行動障害が発生しやすいタイプ

以下、著者を引用しながら見ていきます。

行動障害は、観察しようとしている行動のタイプや当人の年齢によってその現れ方はかなり異なりますが、一般的には障害のない人たちよりも障害のある人たちによく観察されます。

 

著書の内容から、行動障害が発生しやすいタイプは、行動の内容や年齢などに応じても現れ方は異なるとしています。

また、障害のある人たちの方が一般的にはよく見られると言われています。

著者の実感としても、障害のある人、そして、障害の程度が重い人の方が行動障害はよく見られるといった感じがあります。

中でも、重度の知的障害児・者、重度の自閉症児・者にはよく見られるといった印象があります。

一方で、軽度の知的障害など障害の程度が比較的軽いと感じる子どもにも行動障害の特徴が見られることもこれまでの療育経験から感じています。

 

 


以上、行動障害について【特徴・症状の程度・発症しやすいタイプ】について見てきました。

著者が療育の仕事をはじめたのは今から10年以上前になりますが、当時は行動障害についての理解はほとんどなかったため、単純に問題行動として捉えてしまっていた面が強くあったように思います。

しかし、こうした行動障害について学びを進めて行く中で、適切な理解と対応がとても大切なのだと実感できるようになりました。

私自身、まだまだ未熟であり、行動障害への実践経験も不十分ですが、今後も行動障害への理解を深めていきながら、より良い実践へと繋げていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

英国行動障害支援協会(編)清水直治(監訳)ゲラ弘美(編訳)(2015)行動障害の理解と適切行動支援 英国における行動問題への対処アプローチ.ジアース教育新社.

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