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自閉症児の遊びの発達について【お絵描きを例にとり】

投稿日:2020年6月29日 更新日:

自閉症の人たちは興味・関心が独特であると言われています。

遊びに関しても、例えば、「○○博士」と言われるように、ある領域に非常に詳しい人たちも多くいます。

私がこれまで見てきた子どもたちにも、道路標識や鉄道などある特定のものが非常に詳しいという子どもたちが多くいました。

彼らは、自分の興味・関心の強い領域に関しては、徹底的にのめり込んで知識を吸収する傾向にあります。

ですので、大人との遊びでの関わり方に関しても特徴があります。それは、人との関わり以上に、自分の興味・関心を優先するという傾向が強いということです。

そこで、今回は私が数年間にわたって関わりのある自閉症児を例に取り、遊びの発達について、お絵描きを例に取りその行動の変化をお伝えしていこうと思います。

 


今回取り上げる自閉症児と最初に出会ったのは今から3年以上前になります。ここでは仮にA君とします。関わった場所は放課後等デイサービスになります。

小学学生のA君は、大のゲーム好きです。いつもポケモンやマリオなどゲームの攻略本を黙々と読んでいました。

A君は、本を読むこと以外にも絵を描くことが好きです。私が最初にA君と会った時には、ゲームのキャラクターなどの絵を描いていたことを思い出します。

そんなA君ですが、ある日、職員がもってきた「あいうえお表」にハマります。これは、ひらがなを覚える表で、例えば、「あ」という文字の下に「あひる」の絵が描いてあるなど、文字と絵がリンクしているものになります。A君は、「あいうえお表」を見ながら、一人黙々と、それを書き写すことを繰り返していました。「あいうえお表」も繰り返すことで、完成度上がり、本物に近い状態になりました。また、色も加え、さらに完成度が増しました。

そらから、数ヶ月が過ぎてから、A君に変化が起きます。A君は、「あ」のつくものは「○○のキャラクター」など、文字と絵とを繋げた発言が多く見られるようになりました。気がつくと、これまで描いていたキャラクターに名前を付けるようになっていました。

文字と絵が関連づくということをA君なりに学習し、そこから遊びがさらに発展します。

A君は、自分が描くことが難しいキャラクターなどを大人にお願いしてくることが増えました。私は何故かマリオ担当で、マリオに出てくる様々なキャラクターを一人ずつ繰り返し何度も描き、それにA君がキャラクターの名前をつけ足すという感じです。

A君は私を見ると「あ!きてきた!」と言ってお絵描き遊びに誘います。その後は、一人でも描けるようになり、私はそばでA君がうまく描けない絵をサポートするという役割になりました。

興味深いのは、非常に描くのが得意になってきたA君ですが、これまで知っている絵や文字を組み合わせてオリジナルな絵を描くこと増えてきたことです。以前は、見て写すということがほとんどだったため、こうした様子は私の中で大きな変化と感じました。さらに、そこにストーリー性のある内容(イラストや吹き出し)なども考え大人に話してくれるようになりました。

まさに、お絵描き一つとっても絵が上達するだけでなく、文字との関係づけや、ストーリーを自分で考える力など多くの知的要素の成長が見られました。

このように自閉症児は、自分の興味・関心から遊びを発展させ、認知能力などを向上させていく様子が見られます。

周囲から見ると独特な方法のようですが、自閉症の認知特性(興味・関心の偏りなど)から見ると自然なことのように思います。

最後に、こうした遊びの発達は大人や他児といった人との関わりにも変化が出てきました。

A君は、自分の興味・関心を共有する相手とたくさん話すようになりました。私も、A君の興味・関心を理解し共有することでA君のことがわかってきたと感じることが多くあります。

A君の興味・関心の世界は描画だけではなく、大人や他児とのごっこ遊びにも見られるなど(A君の好きなゲームでの)、遊びの広がりを見ることができました。

ですので、私が3年以上前にあったA君と、今のA君とでは遊びの内容や遊び方など多く点で変化がありました。

 


私自身、これまで多くの自閉症児と関わりがあり、その中で、興味・関心の大切さをわかっていたつもりでも、彼ら一人ひとりの成長の結果は予測できません。重要なのは、彼らがのめり込むことができるものを一緒に探すこと、そして、それができる環境を保障することだと思います。

子どもたちにおいて、遊びは大切です。そして、自閉症児においては興味・関心は独特ですが、その世界に共有していくことで様々な能力が育まれると実感することも多くあります。

今後も、長期的な視野にたち、自閉症児との関わり方について遊びという視点からも理解を深めていきたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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