何か自分の見通しと違うことが起こった!予定が急に変更になった!
このような“いつもと違う状況”を苦手とするのが自閉症児の特徴とされています。そして、そのようなときにとる行動の一つに「パニック」があります。
それでは、自閉症児における「パニック」にはどのように対応すれば良いのでしょうか?
今回は、自閉症児のパニック行動について、著者の経験からその時とってきた対応方法などをお伝えしていこうと思います。
今回参照する資料は「本田秀夫(2017)自閉スペクトラム症の理解と支援.星和書店.」です。
パニックとは
パニックとは、「突発的な不安や恐怖による混乱した心理状態、またはそれに伴う行動」と定義(本田,2017)されています。
著者の体験談
それでは、以下にいくつか事例を紹介していいきます。
最初に上げる事例として、自閉症児小学生男子A君です。A君は予定の変更などを非常に苦手としています。A君を車で送迎しご家庭まで送りとどけるときの話です。A君を含め他に3人のお子さんと、運転手含め大人2人の合計5人が同乗していました。私は、A君の送迎前に初めて行く他児のお子さん家がわからず途中で道を間違えてしまいました。
それまで、静かに車内で本を読んでいたA君が急に普段通らない道を走っていることに気がつき、「どうしてこの道走ってるの?」と言い始め、急に不安がエスカレートしてきました!結果、数分後には、パニックとなり泣き・叫ぶを繰り返しました!
完全に道を間違えた私のミスなのですが、A君がここまで変更に弱いことを知らなかった、想定していなかったこともミスに繋がりました。A君とはこの時点で関わりはじめてからまだ日が浅い頃のことでした。
以降、A君に対しては、しっかりと見通しを伝えたり、何か予定が変更になる可能性がある場合には早めに伝えるように心がけるようになりました。事前に伝えることで、変更があっても理解できる様子が増えてきた印象があります。
次に、小学生男子B君についてです。B君はとにかく音に非常に過敏です。ある日、B君の隣の部屋で他児が大声で泣き始めました。その声に、パニックを起こしたB君は急に暴れ始めました!
その時に、まずは他児に被害が及ばないように周囲の他児を離し、次に、危険物がないかを確認しました。時々、ボールや棒状のものがあるとそれを振り回すことがあるからです。そして、環境を整備しながら、パニックがおさまるまで見守るという対応をとりました。パニックおさまったB君は少し冷静になり、何が嫌だったかを話してくれました。
以降、少し音が気になる時にはイヤーマフ(音を遮断するもの)を付けたり、大人と過ごしやすい静かな環境を選ぶように話し合いができる場面がでてきました。
著者のコメント
こうした事例を見ていると自閉症児が乱暴に聞こえるかもしれませんが、彼らはむしろ他の他児と比べても静かなくらいです。それもあってか、むしろパニックになると違うキャラクターになったかのような振る舞いをします。
こうした背景には、自閉症の特性である同一性保持があります。これは、常に同じ状態を好む、変化や変更を嫌うというものです。また、二つ目の事例でお伝えした、感覚過敏・鈍感が特徴としてあります。
私がこれまで複数の自閉症児・者と関わってきましたが、パニックが起きる背景には、上記の特徴が多く関与していた印象があります。
対応としては前もってできることとして、事前の伝えを大切にしていくこと、スケジュールの確認をしていくこと、過敏性に関しては、環境調整を大切にしていくことが重要になります。
パニックが起こってしまったときには、事故や怪我に繋がらないようにすることがまず重要になります。そのために、周囲の他児を離す、危険物となりそうなものを離す、そして、パニックがおさまるまで待つ、おさまったら振り返りをする(可能な状況であれば)という手順を自分の職場では実施しています。
パニックが起こると大人も動揺してしまう場合がありますが、大切なのは冷静な判断と対応です。これができるには、経験も必要になるかと思います。また、今回は取り上げませんでしたが、周囲との連携も重要になります。
私自身も数々のパニックに出くわすことで自閉症児・者が苦手とすることを知ることができたと思います。時にはパニックの原因は私自身にもあるという場合もありますが・・・。
今回は子供を中心にお伝えしてきましたが、こうした行動は成人の自閉症の方にもよく見られる行動でもあります。今後も行動の背景には理由があるという認識をもって日々現場で取り組んでいこうと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
本田秀夫(2017)自閉スペクトラム症の理解と支援.星和書店.