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自閉症児と関係性をつくる上で大切なこと-関係発達論の視点から-

投稿日:2022年7月20日 更新日:

著者はこれまで療育現場で、自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)の子どもたちと多く関わってきました。

自閉症は、本来、対人・コミュニケーションやこだわり行動、感覚過敏などを特徴としていることもあり、他者との関係をつくることは難しいといった印象があります。

著者も、ケースバイケースですが、関係づくりが難しい子の中には、自閉症児が比較的多いといった印象があります。

 

それでは、自閉症児と関係性をつくる上で大切な視点はあるのでしょうか?

 

そこで、今回は、著者の療育経験も交えながら、関係発達論の視点から、この点について考えていきたいと思います。

 

今回参照する資料は「小林隆児・鯨岡峻(編)(2005)自閉症の関係発達臨床.日本評論社.」です。

 

 

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関係発達論とは?

以下、著書を引用します。

「関係の営みの中で人は発達する」という、ごく当たり前のことに帰着します。それが「関係発達」という考え方の基本なのです。

著書の内容から、関係発達論とは、個人の能力の育ちといった個の視点で人間を理解するのではなく、関係の中で人は育ち-育てられるといった関係の軸で人の成長(発達)を理解していくという考え方になります。

つまり、関わる大人がどのように関わるのか、それによって子どもがどのような反応を見せるのかといった相互の関係性を時間といったスケールも合わせて考えるという視点になります。

 

 


それでは次に、こうした関係発達論の視点から自閉症児と関係性をつくる上で大切な視点について見ていきたいと思います。

 

自閉症児と関係性をつくる上で大切なこと(関係発達論の視点から)

著書の中では、人が人に関わる関わり方(態度)には2種類あるとしています(以下、引用)。

ⓐ 自分の思い通りに他者を動かそうとする(自分の思い通りに相手を動かしたい)、ⓑ 相手の思いを受け止めて、それに応じる、の2つです

著書の内容から、人が人に関わる態度には、上記のⓐとⓑの2種類あるとしています。

こうした2種類の関わり方(ⓐ、ⓑ)があるとした中で、自閉症児において次の関わりが重要だと述べています(以下、引用)。

少なくとも関係発達論の立場から言えることは、対人関係がある程度熟するまではⓑを基調に関わり、ⓐを前面に押したてないことがまず必要だと言えます。そして対人関係が熟してきて、身近な他者=支援者が馴染んだ他者になり、ⓑの対応によって支援者が本人から見て脅威に感じられず、むしろ親しみの接触欲求の対象と見られるようになれば、関わり手はもっぱらの受容の態度ではなく、子どもの思いを受け止めながら(略)、関わり手も一個の主体として、自分の思いを子どもに伝えていく必要が出てきます。

著書の内容から、自閉症児と初期の関係性をつくるためには、相手の思いを受け止めるという対応がとても重要だということになります。

それは、自閉症児が定型児と比べて、外界に対して強い警戒心を持っているため(人の行動がよくわからない、感覚過敏など)、より丁寧に受容的態度で接していくこが求められます。

こうした態度により、ある程度の関係がつくれてきた際に、大人側の思いを少しずつ出していくという関わりが必要になってきます。

ある程度の関係とは、甘え等の身体接触が可能になるなどが一つの指標になるかと思います。

 

 


それでは、次に、著者の療育経験から関係発達論の視点の重要性についてお伝えします。

 

著者の経験談

ここでは、当時未就学であった重度の自閉症児A君を取り上げます。

A君は外の世界に強い警戒心を持っている子どもでした。

また、こだわり行動や感覚過敏なども強かったため、私はA君との関係づくりに非常に苦慮しました。

A君がとる行動の多くは周囲から見るとわがままにうつってしまう行動も多く、こうした行動に対して、周囲の大人はとにかく注意する対応になってしまうことがありました。

私は、注意するよりもA君がなぜこのような行動をとるのかを考えること、また、少しでも安心して楽しく過ごすにはどのような関わりが良いのかを考えることに徹しました。

そうした中で出会ったのが、「関係発達論」の視点(今回取り上げた著書)でした。

関係発達論の視点は、A君のことが書いてあるのではないかと思うほど、私の感覚にすんなり入り込んできました。

これを基点に、私はある程度関係ができるまで、まずはA君に対して受容的態度で関わることに非常に重きを置きました。

もちろん、自傷や他害などの危険行為は止めざるおえませんが、意識としてA君の思いを受け止めるということを強く心掛けました。

だいぶ時間がかかりましたが、その後、A君は私に対して警戒心が弱まり、身体接触といった甘え行動も出てきました。

こうした関わりができるようになって初めて私は自分の思いを少しずつ出すようになっていきました。

私が自分の思いを出すことで、A君も少しずつではありますが、私が意図することを理解していく様子が増えていきました。

 

 


以上、関係発達論の視点からの著者の療育経験になります。

このような事例は他にもありますが、私が一番参考になった点は、自閉症児の独特な感覚や認知なども踏まえた上でどのような関わりが長期的な面で良いのかを考える大きなヒントになったことです。

そして、関わりの中で迷走していた私に何を大切にしていけば良いのかを教えてくれた大切な視点だと思っています。

今後も、様々な知識や実践例などを学びながら、より良い発達理解と発達支援を目指していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

小林隆児・鯨岡峻(編)(2005)自閉症の関係発達臨床.日本評論社.

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