自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)の特徴の一つに、特定のものに固執する〝こだわり行動“と呼ばれるものがあります。
著者も療育現場の中で、自閉症の子どもたちと関わる機会が多くありますが、こうしたお子さんの中には、自分のやり方や手順にこだわったり、また、特定の対象に興味関心が強いといった特徴がよく見られます。
自閉症スペクトラム障害は、その名の通りスペクトラム(連続体)ですので、こだわりも個々に応じて強度や対象が異なると言われています。
それでは、自閉症のこだわりの強さやこだわりの対象にはどのようなものがあるのでしょうか?
そこで、今回は、自閉症のこだわりについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、こだわりの強さとその対象について理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は、「本田秀夫(2017)自閉スペクトラム症の理解と支援.星和書店.」です。
自閉症のこだわりの強さ
著書の中では、〝こだわりの強さ“として以下の内容を挙げています(以下、著書引用)。
関心
特定の物に強い興味を持つ(反面、それ以外の物にはほとんど興味がない)
やり方
特定の手順を繰り返すことにこだわる
常同的な動作を繰り返す
ペースの維持
他者にペースを乱されたくない
著者は、これまでの自閉症児・者との関わりの中で、様々な〝こだわりの強さ“を実感する場面が多くありました。
〝関心の強さ″の例として、電車、車、虫、道路標識、数字、植物、アニメ、漫画などがあります。
当時、小学6年生の男子は、道路標識に興味があり、標識に関する本を繰り返しみており、著者に対して問題を多く出してきました。
当時、小学6年生の男子は、数字に興味があり、紙に数字を書いて色々と並べ変えたり、カードゲームや攻略本の数字に没頭している様子が多くありました。
こうした興味関心は特定の対象に強くでる傾向があります。
そして、他の対象にはあまり興味がないといったように非常に限定的です。
〝やり方“の例として、目的地に向かう道順が同じ、手をひらひらさせる、全身をコマのようにクルクル回るなどがあります。
当時、未就学の男子は、部屋の中央で体をコマのようにクルクルと回り続けることがよくありました。
当時、小学6年生の女子は、活動がうまく定まらないときなど、手持ち無沙汰のせいか、手をひらひらさせる様子が多く見られることがありました。
〝ペースの維持“の例として、何かの活動に集中している時に声をかけると、途端に機嫌が悪くなる、他の用事が入ると急に機嫌が悪くなるなどがあります。
こうした特徴は、著者が関わることがあった成人の方によく見られていました。
自分の作業や予定が中断や変更されることで、それによって生じる不機嫌度が少し度を超えていると思うことがありました。いわゆるキレる(あるいはそれに近い)状態まで感情が揺れ動くこともよくありました。
自閉症のこだわりの対象
以下、著書を引用しながら〝こだわりの対象“について見ていきます。
こだわりの対象:頻度の多いもの
・身体を使った常同行動、物の配置
・スケジュール、段取り
・相手と場所に応じた行動パターン
・幾何学的な図形、デジタルな情報
・機械的記憶
・マニアックな知識
著書の内容から、〝こだわりの対象“にも様々なものがあります。
それは、身体的といった動作に関すること、物の並び、予定に関すること、特定の人への特定の行動様式、図形やIT情報が好き、機械的な記憶が得意、オタク的な知識の多さ、などがあります。
著者も、こうした〝こだわりの対象“が自閉症児・者には確かにあると経験的にあると感じています。
例えば、手をひらひらさせる子、ミニカーなど物を並べて遊ぶ子、常に先の予定を聞いてくる子、この人とこの遊びをするなど特定の人への特定のパターンを持つ子、車輪が回るのをずっと眺めている子、誕生日・カレンダー・電話番号のすべてを覚えてしまう人(映画:「レインマン」など)、オタク的に豊富な知識を持つ子、などがあります。
以上が、自閉症のこだわり-こだわりの強さとその対象について考える-について見てきました。
自閉症の〝こだわり行動”は、自閉症の大きな特徴の一つでもありますが、その強さやこだわる対象は人のよって異なります。
大切なことは、こだわり行動を理解していきながら、その強みを活かしていくことだと思います。
関連記事:「【自閉症児・者のこだわり行動の強みについて】療育経験を通して考える」
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今度も、より良い発達理解と発達支援を目指していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
自閉症に関するお勧め書籍紹介
関連記事:「自閉症に関するおすすめ本【初級~中級編】」
本田秀夫(2017)自閉スペクトラム症の理解と支援.星和書店.