認知とは物事を知る働きのことを言います。
知的障害のある方は認知機能が定型児よりもゆっくりと発達していきます。
認知機能といっても非常に広義の意味なのでその中には様々な要素があります。
それでは、知的障害児の認知機能の特徴にはどのようなものがあるのでしょうか?
そして、療育で注意すべき点にはどのようなものがあるのでしょうか?
今回は、知的障害児の認知機能の特徴を説明していきながら、療育上で注意すべき点についてお伝えしていきます。
今回参照する資料は「立松保子・立松英子(2011)保育者のための障害児療育-理論と実践をつなぐー改訂版.学術出版会.」です。
知的障害児の認知機能について
以下、著書を引用します。
知的障害にはしばしば視知覚や協調運動の遅れ(不器用さなど)が伴い、身辺自立が難しかったり、他の子どもとの遊びに加われなかったりします。知的障害はこのような感覚-運動系およびそれらの統合の困難から発した遅れの結果ともいえます。
著書の内容から、知的障害の認知機能の特徴として、視知覚や協調運動の遅れが見られると記載されています。
視知覚とは、見て物事を理解すること・わかることです。
例えば、目の前にあるコップを見て「コップ」だとわかることなどがあります。
協調運動には、大きく粗大運動(全身運動)と微細運動(手指の細かい運動)の二つに分けることができます。
認知機能というと、言葉の機能や思考(考える)機能など、非常に高いレベルをイメージする方もいるかもしれません。
もちろん、こうした能力もまた認知機能に含まれます。
しかし、言葉や思考の機能を支えているものが、視知覚や協調運動です。
つまり、言葉や思考を操作するのは、その前段階に、様々なものに触る感覚経験、様々なものを操作(使ってみる)する経験、見る-操作するなどの協調運動の経験が必要になります。
発達には順序性・方向性があります。
高次の認知機能と言われている言葉や思考の機能は、こうした視知覚や協調運動など感覚・知覚といったより原初的な機能が支えとなり発達していきます。
それでは、次に、著者の療育経験も踏まえ、知的障害の認知機能への配慮事項についてお伝えします。
療育で注意すべき点
著者はこれまで多くの知的障害のある子どもたちを見てきました。
その中で、感覚と運動をより多く活用する活動を考えるようにしています。
厳密には、子どもたちの方が感覚と運動機能をより多く使う活動を求める傾向があります。
つまり、自分の行為の結果が、言葉や思考を多く使った活動よりもわかりやすいということになります。
活動内容の例としては、工作や制作遊びが多くを占めます。
例えば、武器作り、乗り物作り、ペーパークラフト、シール貼り、お絵描きなどがあります。
また、ごっこ遊びもよく行います。その際に、子どもたちがイメージしやすいものを、具体物を使用しながら展開していくことで満足感が増します。
運動遊びでは、ボール遊びや追いかけっこなど全身運動を使ったわかりやすい活動を行っています。
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著書の中でも次のように述べています。
粗大運動や制作活動など、感覚・知覚や運動機能を駆使する活動が保障される環境を整えることが大切です。
著書の内容では、感覚・知覚・運動機能を多く活用する活動の重要性を指摘していますが、著者の療育経験でも同様のことが言えます。
知的障害は他の発達障害とは異なり、全般的な遅れが特徴なので、どこに理解と支援の視点をフォーカスすればよいかわかりにくいこともあります。
著者自身がそうでした。
今回取り上げた、認知機能の特徴を踏まえ、実践していくことでまた彼らの特徴への理解が深まり、過ごしの安定に繋がってくれば幸いです。
私自身、まだまだ未熟ですが、今後も知的障害への理解を深め、現場での実践を大切にしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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立松保子・立松英子(2011)保育者のための障害児療育-理論と実践をつなぐー改訂版.学術出版会.