不登校生徒数が増化していく中で、その背景要因にも様々なものがあると考えられています。
不登校生徒の中には、〝発達障害″の特性を抱えている子どもたちも多くいると言われています。
それでは、発達障害児と定型発達児の不登校には、どのような違いがあるのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害児の不登校と一般的(定型発達児)な不登校の違いについて、臨床発達心理士である著者の意見も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「本田秀夫(2025)発達障害・「グレーゾーン」の子の不登校大全.フォレスト出版.」です。
発達障害児の不登校と一般的(定型発達児)な不登校の違いについて考える
以下、著書を引用しながら見ていきます。
一般的な不登校では何か問題が解決すれば通えることもあるのに対し、発達障害の子の不登校では、環境的な要因の比重が大きくなります。発達特性のある子が居心地よく過ごせるよう環境を調整することが、とても重要になるのです。
著書の内容から、発達障害児は定型発達児以上に、環境要因の方が不登校の問題の比重が大きくなるといった違いがあると記載されています。
発達障害児が抱える様々な発達特性は、生まれ持っての特徴であるため、本人の独力ではなかなか改善が難しいことが多くあります。
そのため、本人に合った学習内容、本人の特性を理解し配慮してくれる先生、相性の良いクラスメイトなど、ある種、運の要素も多く含まれていると言われていますが、こうした環境要因の影響が学校への適応に強く関わってくるといった特徴があります。
そして、大切なことは、著書にあるように、発達特性のある子どもが安心感を持って過ごせる環境だと言えます。
環境には大きく、人的環境と物的環境とがありますが、この両者を調整していくことがとても重要になってくると言えます。
人的環境においては、子どもの事を理解してくれる(特性や性格など)人の存在や子どもがこの人の事が好きだと感じる人の存在、物的環境においては、子どもが安心して過ごせる空間の調整、学習の仕方・遊び方・片付けの仕方などの手順の分かりやすさの調整などがあります。
どちらの環境調整も発達障害の特性を踏まえた視点が非常に重要になります。
関連記事:「【発達障害児への環境調整で大切なこと】3つの環境の特徴を通して考える」
著者のコメント
著者は現在、放課後等デイサービスで療育をしていますが、その中には、不登校の子ども、学校への行き渋りが見られている子どもも少なからずいます。
こうした子どもたちは学校という環境において、周囲から理解されにくい様々なストレスを抱えていると感じます。
例えば、人とうまく会話ができない問題、じっとしていることができない問題、些細なことでイライラ・癇癪が起きてしまう問題、読み書き計算がうまくできない問題、不器用さがあり特定の作業を苦手としている問題、学校行事に苦手さがある問題、自分のやり方やルールに強いこだわりがある問題、感覚過敏が強いといった問題など、非常に多様なストレスがあると言えます。
こうした問題は個人の努力では改善が難しい上に、定型発達児よりも些細な負荷がかかることで問題が顕在化してしまうことで周囲からの分かりにくさ、そして、どうしても少数派としてネガティブに捉えられてしまうことがあります。
そのため、こうした本来的に持っている特性に対して、早期に環境調整をしていかないと、学校に行きたくないといった思いが徐々に高まっていくのだと思います。
著者は上記の問題に対して、うまく環境調整が行われなかった結果、学校への行き渋りが見られたケースが少なからずあったと感じます。
一方で、環境調整を行う先生たちにも様々な苦労があると感じます。
学校にはどうしても、一定の基準やルールが存在するため、個々に応じた環境調整が難しくなってしまうといった問題があると言えます。
そのため、先生によっては個別な配慮を行いたくても、学校側の意向や教育方針、また、他のクラスメイトとの兼ね合いもあり、実行が難しくなることがあるのだと思います。
実際のところ、学校よりも個別の配慮を行いやすい環境である放課後等デイサービスでさえ、個別の配慮が難しくなる場面があると感じます。
しかし、こうした状況においても、個別への配慮を行うことが、中長期的な視野に立つと、子どもが安心して過ごせる居場所作りにおいて確実に必要になってくるといった実感があります。
実際に、著者が見ている子どもたちの利用動機の有無は、個別の理解と支援が鍵を握っているといっても過言ではありません。
そのため、発達障害の子どもにおいては、定型発達児以上に、個々に応じた環境をどのように作っていけるかが非常に重要な視点だと言えます。
以上、発達障害児の不登校と一般的(定型発達児)な不登校の違いについて考えるについて見てきました。
発達障害の子どもたちは、定型発達児・者が想像する以上に、環境からの負荷が強くかかっていると言えます。
そのため、支援において、環境調整の視点がとても大切になってくると言えます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も不登校並びに発達障害への理解を深めていきながら、その知見を実際の支援の現場に役立てていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「【なぜ学校はつらいのか?】発達障害児支援の経験を通して考える」
不登校に関するお勧め書籍紹介
関連記事:「不登校に関するおすすめ本【初級編~中級編】」
本田秀夫(2025)発達障害・「グレーゾーン」の子の不登校大全.フォレスト出版.