発達障害児・者へのアセスメントには様々なものがあります。
アセスメントとは、査定・評価のことですが、アセスメントを通して、本人の強み・弱みなどの理解に役立てることが大切です。
著者は療育現場をはじめとして、発達障害児・者との関わりが多くありますが、その中で対象者のより良い理解と支援に繋げていくためにはアセスメントは重要なものであると感じています。
それでは、アセスメントにはどのような種類のものがあるのでしょうか?
アセスメントの種類について知ることで、対象者を理解するためにどのような情報が必要なのかを知る手掛かりになります。
そこで、今回は、特定のアセスメントというよりも、対象者(発達障害児・者)の全体像を知るための〝包括的アセスメント″を例に取り、発達障害へのアセスメントの考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「黒田美保(編著)(2015)ハンディシリーズ 発達障害支援・特別支援教育ナビ これからの発達障害のアセスメント ー 支援の一歩となるために.金子書房.」です。
発達障害への包括的アセスメントについて
以下、著書を引用しながら〝包括的アセスメント″について見ていきます。
包括的アセスメントの要素とは、大きく分けると①発達障害に特化したアセスメント、②知的水準・認知特性のアセスメント、③適応行動のアセスメント、④感覚や運動のアセスメント、⑤併存する精神疾患、⑥心理社会的・環境的アセスメントだと考えられる。
著書の内容では、包括的アセスメントの要素には以上の6つが主な構成要素としてあると記載されています。
もちろん、こうした6つの情報すべてが必要不可欠というよりも、対象者にとって必要となるアセスメント情報には違いがあるため、それぞれのアセスメントの意味ついての理解と、そのアセスメントがなぜ対象者に必要なのかを判断する力もまた重要になります。
大切なことは、本人理解を深めるということ、アセスメント結果を支援に繋げていくということです。
以上を踏まえて、上記の構成要素(①~⑤)について見ていきます。
①発達障害に特化したアセスメント
発達障害に特化したアセスメントとは、例えば、ASDやADHDなどの特性を理解するアセスメントになります。
そして、大きくは「スクリーニング」と「診断」のアセスメントに分けることができます(以下、著書引用)。
スクリーニングとは、なんらかの障害や問題を抱えている可能性がある児者を発見するためのアプローチである。
その後、個々の特性をきめ細やかにみていくのが、診断・評価アセスメントである。
著書にあるように、発達障害に特化したアセスメントには、いくつかの段階があります。
スクリーニングにも1次スクリーニング、2次スクリーニングがあります。
1次スクリーニングでは、ASDやADHDなどの発達特性がどの程度あるのかを振るいにかけて、2次スクリーニングでは、発達特性が強い人をさらに深く理解するために、診断・評価に繋げていくためのアセスメントということになります。
関連記事:「発達特性の理解について」
②知的水準・認知特性のアセスメント
知的水準・認知特性のアセスメントは、対象者を理解するために必須と言ってもいいほど重要なものとなります。
例えば、①で見てきた発達特性の濃淡も知的水準や認知特性の違いのよって状態像も非常に変わってきます。
それは、IQ(知的レベル)の違いや認知傾向の偏り(群指数の個人内差など)があります。
代表的な検査には、ウェクスラー式知能検査(WISC)や新版K式発達検査など様々な検査があります。
ここで重要なのは、知的水準・認知特性のアセスメントの結果から、発達障害へと拡大解釈しないということです(以下、著書引用)。
知能検査や認知検査では、発達障害であるかどうかの診断や判断はできない。わかるのは認知特性であるということを忘れてはならない。
発達障害の診断には、医師による医学的診断が必須であるため、知能検査や認知検査の結果を発達障害へと繋げてしまわないように注意する必要があります。
関連記事:「ウェクスラー式知能検査とは【発達障害の理解と支援で役立つ視点】」
③適応行動のアセスメント
アセスメントの結果を支援に繋げていくためには、現実の生活での適応力を高めていくということが大切です。
そのために、現実の適応力をアセスメントすることもまた重要です。
以下、著書を引用しながら見ていきます。
発達障害の場合、知的水準から期待されるような適応行動は達成されないということが明らかになっている。
著書の内容から、発達障害児・者の場合には、②で見たきた知的水準がそのまま適応行動に反映されずに、それよりかは適応行動が下回る傾向があることが分かっています。
そのため、知的能力や認知能力と実際の生活での適応能力との乖離を理解することはとても大切だと言えます。
適応行動のアセスメントで代表的なものには、〝ヴァインランド″という検査があります。
教育・心理系の領域では非常に有名でよく活用されるものとなっています。
④感覚や運動のアセスメント
以下、著書を引用しながら見ていきます。
発達障害では、感覚の偏りや不器用といった運動面の問題が明らかである。
著書に記載があるように、発達障害の多くは感覚の問題(感覚過敏・鈍麻)や不器用さといった協調運動の問題があります。
そのため、感覚と運動に関するアセスメントも重要なものとなってきています。
関連記事:「発達障害の感覚処理過程の問題【感覚調整障害とプラクシクの障害から考える】」
⑤併存する精神疾患
以下、著書を引用しながら見ていきます。
発達障害は、それぞれの障害がオーバーラップする場合や他の精神疾患を合併する場合が多い。支援のためには、併存する発達障害やうつや不安障害といった精神症状などを調べることが重要である。
著書に記載のある通り、発達障害は単独で発症するケースもあれば、併存しているケース(例:ASD+ADHDなど)も多くあります。
さらに、一次障害として発達障害があり、二次障害として、うつや不安障害、反抗挑戦性障害、愛着障害などが見られるケースもあります。
そのため、発達障害の併存への理解、発達障害の二次障害の理解もまたアセスメントをしていく上で重要なものとなります。
関連記事:「発達障害の重複(併存)について-療育経験から理解と支援について考える-」
関連記事:「発達障害の二次障害について【療育経験を通して考える】」
以上、発達障害への包括的アセスメントについて見てきました。
今回は、包括的アセスメントについて見てきましたが、どのアセスメント内容も発達障害児・者を理解していくために非常に大切なものだと感じます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も発達障害への理解を深めていけるように、そして、より良い支援に繋げていけるようにアセスメントについての学びも継続していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
黒田美保(編著)(2015)ハンディシリーズ 発達障害支援・特別支援教育ナビ これからの発達障害のアセスメント ー 支援の一歩となるために.金子書房.