発達障害への支援として様々なものがあります。
支援する上で大切なことは、アセスメントを実施することです。
アセスメントとは、評価のことを指します。
それでは、療育現場などでどういったアセスメント方法が必要になるのでしょうか?
今回は、著者の療育経験を交えながら、発達障害へのアセスメントについて大切だと考える視点についてお伝えします。
著者は療育経験を通して、トップダウン的なアセスメントとボトムアップ的なアセスメントを取りながら、現場での課題解決に役立てています。
それでは、以下にそれぞれ詳細をお伝えします。
トップダウン的なアセスメントについて
トップダウン的なアセスメントとは、ある程度、問題や課題に対して当たりをつけて、その根拠となる情報を収集するというイメージです。
例えば、A君の問題や課題はおそらく○○が想定され、その根拠となるものは○○と○○の情報から●●と評価されるというイメージです。
それでは、具体例をもとに説明していきます。
ADHD特性のあるA君は、著者が関わり始めた当初は自分に自信がない様子に見えるお子さんでした。
事前の情報で、A君には友だちがほとんどいなく、それもあり著者が所属している事業所で友だちを欲していました。
この場合、A君のニーズは友だち関係を作ること、友だちとの関係を通して自分に自信をつけることだと考えました。
中でも、失敗経験を重ねないような環境調整や、肯定的な声がけを心掛けました。
ここで、トップダウン的なアセスメントを自然と取り入れていました。
ADHDの人で多いと言われているのが、失敗経験や周囲からの過度な叱責を受けることでの自信の低下です。
これがエスカレートすると二次障害に繋がります。
A君自身は自分から困っていることや悩みなどを話すことがうまくできませんでしたが、A君の発達特性から他児とうまく関わる機会を通して、自分に自信をつけることが課題としてすぐに想定できました。
こうしたアセスメントから課題を設定できたのは、現在の情報を知っていたのに加え、ADHD特性へのある程度の知識があったからだと思います。
このように、トップダウン的なアセスメントには、ある程度の経験や知識が必須かと思います。
関連記事:「ADHD児への療育の大切さ-不適切な関わりをやめるだけで子どもは変わる-」
ボトムアップ的なアセスメントについて
ボトムアップ的なアセスメントとは、様々な情報を得ることでこれまで見えていなかった問題が発見される、または、様々な情報を整理した結果、問題や課題が明確になるというイメージです。
例えば、複数の情報からのアセスメント結果として、A君の問題や課題は●●になるというイメージです。
それでは、具体例をもとに説明していきます。
自閉症の診断を受けたBさんは、対人・コミュニケーションの困難やこだわり行動などを特徴としているため、社会生活の中で、対人面でうまくいかないことが多くありました。
自閉症の診断を受けたBさんは、診断名の影響もあってか、支援の多くは対人・コミュニケーションなどのサポート多く受けている状態でした。
しかし、Bさんは、就労を通して、作業がなかなかうまくいかないなど、新たな困り感がでてきました。
その後、Bさんの就労での困り感を、詳細に聞き取っていった結果、Bさんには幼少期から手先の不器用さが見られていたことが新たな問題として浮上してきました。
この不器用さのため、生活のいたるところで困り感が生じており、本人の自信の低下を招いているといった新たな発見がありました。
現在では、発達性協調運動障害(DCD)といった診断名があるほど、不器用さなど、運動に関する障害なども顕在化してきています。
Bさんのケースのように、生活の中での困り感などの情報取集をしていきながら、アセスメントを行い、新たな問題の発見に繋がる場合も多くあります。
以上、ボトムアップ的及びトップダウン的なアセスメントから、発達障害へのアセスメントの大切さについて述べてきました。
ボトムアップ的なアセスメントとトップダウン的なアセスメントは、明確に区切ることはできない場合も多くあります。
ある程度当たりをつけながらアセスメントをしていく一方で、様々な情報を収集していくといった両輪の中で、その子にとって重要となる問題や課題が整理・発見されることがよくあります。
大切なことは、仮説をもって様々な情報を得ること、そして、相手を理解するために必要不可欠な情報を得ながら、問題や課題の本質に向き合うことだと思います。
私自身、まだまだ未熟ですが、今後も相手を理解するために様々な情報を得ていきながら、自分の頭で何がその人の本質的な課題であるかを考えていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。