発達障害には、自閉症スペクトラム障害やADHD、学習障害、発達性協調運動障害などがあります。
こうした発達障害は、重複(併存)するケースも多いと言われています。
関連記事:「【発達障害の強弱・重複(併存)について】療育経験を通して考える」
著者が勤める療育現場にも様々な子どもたちがいます。
また、一緒に働くスタッフにも当事者の方も多くいます。
こうした子どもたちやスタッフを見ていると、例えば、同じ自閉症の方であっても非常に個々によって状態像が多様であると感じます。
状態像の違いは、もちろん、個人要因と環境要因の違いから、異なることは当然ですが、その中でも、似た特徴もあります。
例えば、同じ自閉症の方では、興味関心に没頭する傾向がある、マルチタスクが苦手、その場の雰囲気をつかむのが苦手など共通する特徴も見られます。
それでは、発達障害に見られる様々な特性において、特性の強さ・弱さについてどのように考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害の特性の「強弱」について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回、参照する文献は、「本田秀夫(2018)発達障害:生きづらさを抱える少数派の「種族」たち.SB新書.」です。
発達障害の特性の「強弱」について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
発達障害の特性には「強弱」があります。特性は「有りか無しか」「1か0か」で考えられるものではありません。すべての特性に強さ、あるいは濃さのようなものがあります。それは濃淡のグラデーションのようなものです。
著書の内容から、発達障害の特性には、それぞれ「強弱」があり、同じ自閉症やADHDなどでも、連続体として濃淡の強さや弱さが生じるということです。
例えば、自閉症の方のコミュニケーションの苦手さ一つとってみても、明らかにその特徴が出ている方もいれば、少しだけでている方もいるということです。
また、ADHDの不注意も、極端に忘れ物が多い人から、それほど目立っていないが、幼少期からその特徴があるという方まで幅が広いということです。
そして、こうした特性は、「重複(併存)」もしている割合が高いことから、様々な発達特性を踏まえて、どの特性が目立っているのか、弱く出ているのかなどを考えると様々なパターンが想定されます。
それでは、次に、発達障害の特性の「強弱」について著者の体験談をお伝えします。
著者の体験談
冒頭にも述べましたが、著者の周囲には子どもから大人も含め様々な発達障害の人がいます。
当初は、発達障害と言えば、ある一つの特性が顕著に目立っているといった印象がありました。
自閉症の人であれば、対人コミュニケーションの苦手さやこだわりが強い、顕著に見られるといったイメージです。
一方で、長年、当事者の人と関わり続けていく中で、ある発達特性が顕著に見られるといった人が、思いのほか少ないのではないかと考えるようになりました。
その背景の例として、自閉症と診断を受けたAさんには、自閉症の特徴がはっきりと表れている一方で、Bさんには、自閉症の特徴が少し見られる(そういった場面がある)など、様々なバリエーションがあるということに気づかされたからです。
こうした気づきは、最近、よく聞くワードの「グレーゾーン」に繋がっていきます。
「グレーゾーン」とは、発達障害とまでは診断されずとも、発達障害の傾向があり、なおかつ、適応障害を有している人たちのことを言います。
「グレーゾーン」の人は、社会の中でわかりにくさがあるため、周囲からのサポートがうけずらい現状があると言われています。
著者の周囲にもこうした人たちがいますが、発達特性が目立つ場面とそうでない場面があるため、わかりにくさがあるといった印象を受けます。
発達障害の研究者はこうした「グレーゾーン」も含めると、発達障害の割合は相当の数になると考えている人もいます。
このように、発達障害には「強弱」があり、こうした特性の濃淡は人によって様々なパターンがあります。
また、特性が強くでる場面とそうでない場合もあるなど、環境・場面・状況なども関連してくると言えます。
以上、【発達障害の特性の「強弱」について】療育経験を通して考えるについて見てきました。
著者は、発達障害の「強弱」を現場の経験なども含め理解していくことで、一人ひとりの違いをより深く理解できるようになってきたと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も発達理解を深めていけるように、日々の気づきや学びを大切にしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
本田秀夫(2018)発達障害:生きづらさを抱える少数派の「種族」たち.SB新書.