発達理解・発達支援・ブログ

人間の多様な理解と支援を目指して!

ゲーム 療育 発達障害

発達障害とSNSやゲーム依存について-療育経験を通して考える-

投稿日:2022年6月22日 更新日:

発達障害のある方は、過集中傾向が強いことや、対人関係よりも他のことを求める傾向、そして、二次障害などからSNSやゲームに依存する人も多いと言われています。

SNSやゲームは、使い方さえ間違わなければ現代社会を生き抜くため、楽しく生きるために大切なものにもなります。

著者もSNSやゲームなどに対して、ネガティブな印象はそれほどもっていませんが、日常生活を狂わすほど没頭してしまうことは使い方などを見直す必要があるかと思います。

 

それでは、発達障害のある方の中で没頭しやすい対象とされるSNSやゲームなどに対してどのようなリスクがあり、また、対応方法が必要なのでしょうか?

 

今回は、著者の療育経験も含めて、発達障害とSNSやゲーム依存についてのリスクやその対応方法などについて考えていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は、「田中康雄(2019)「発達障害」だけで子どもを見ないで:その子の「不可解」を理解する.SB新書.」です。

 

 

スポンサーリンク

発達障害とSNSやゲームとの関係について

①リスクについて

以下、著書を引用します。

そこで注意したいのが、SNSやゲームに依存的に見えるほど没頭してしまうことです。コミュニケーションが難しい「リアル」から、「バーチャル」へとシフトすることで一定の安心を手にすることができるーそのために昼夜関係なくどっぷりはまってしまうと、生活リズムがどんどん乱れていきます。

著著の内容から、SNSやゲームに没頭・依存してしまうことのリスクは、バーチャル空間に安心感を覚え、リアルから遠ざかることだとされています。さらに、こうした没頭や依存は日常生活を狂わすものにもなります。

今後、テクノロジーの進化でバーチャル空間がより進化していくことは必ず起こると思いますが、その中でも、リアルな世界に対しても直接かかわる経験や関わる楽しさを知っていく必要があると著者は考えています。

リスクは、ある特定のバーチャル空間に没入することで身体性が失われることや、リアルな空間からの学びや楽しさに出会いたいといった動機が減少してしまうことだと思います。もちろん、人生の選択肢も減少します。

 


次に、リスクに対する対応方法について著書を引用します。

 

②対応方法について

以下、著書を引用します。

オンラインゲームなどは、使い方のルールをしっかりと決めておくことで、真のリアルと彼らの“リアル”の折り合いをつけることが大切かもしれません。その上で、真のリアルに話を聞いてくれる誰かを探し続けてほしいと思います。

著書の内容から、SNSやゲーム等に対して、まずは使用法のルールを決めておくことが前提として必要だということと、バーチャルではなく、リアルな世界に相談できる人など探すことが大切だとされています。

バーチャルな空間で出会った関係も大切ですが、さらに重要なのは、リアルな空間で出会った人の方が直ぐに関係を断ち切れず、継続して関係を維持しやすい場合が多くあるかと思います。

もちろん、リアルな空間では、直接傷つくこともありますし、バーチャル空間での出会いの方が、話が分かりやすい・チャットなど文章の方が会話をしやすい方もいるかと思いますが、少数で良いのでリアルな空間で信頼できる人を作っておいた方が良いかと思います。

また、使用方法は、時間などある程度枠を作っておいた方が良いかと思います。

特に発達特性のある方は、没頭しやすい傾向もあるため、事前に使用の時間やリスク(脳への影響や課金など生活への影響など)を伝達していくことも重要だと思います。

 

 


それでは、最後に著者の療育経験から、ゲームのやりすぎや依存について考えていきたいと思います。

 

著者の経験談

著者が関わる子どもたちの中には、ゲーム大好きなお子さんが多くおります。

そういう著者も小学生の頃は大のゲーム好きでした。

そんな子どもたちの保護者からよく相談を受けるのが長時間のゲームの使用による生活のリズムの乱れや使用方法の問題(課金など)です。

ゲーム自体の楽しさは子どもにとってはとても貴重な体験です。

しかし、ゲームといったバーチャル空間に偏ってしまうと、リアルな空間に対する期待や意欲などが消失してしまいます。

元に著者が見ている子どもの中にもこうした傾向のあるお子さんがおりました。

しかし、療育を通じて、他児と関わることの楽しさを知り、リアルな空間での充足感を持てるようになりました。

その後は、バーチャル空間もリアル空間のどちらにも興味を抱き意欲的に行動しています。

学校や他児との関わりなどでうまくいかないとバーチャル空間に偏ることはありますが、重要なことはリアルな空間で信頼できる大人や他児と関わった経験だと思います。

人は、例えばバーチャル空間でも、リアルな空間を基盤に物事を考え発展していくと思うからです。

 


今後も、バーチャル空間での楽しさを受け止めながらも、そのリスクや対応方法なども検討しながら、リアルな空間での楽しさを、療育を通して実感してもらえるような関わりをしていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

田中康雄(2019)「発達障害」だけで子どもを見ないで:その子の「不可解」を理解する.SB新書.

スポンサーリンク

-ゲーム, 療育, 発達障害

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

療育的視点について-現場の「なぜ」に応えるために-

発達に躓きのある子どもたちと関わっていると様々な疑問が浮かぶことがあります。   例えば・・・ なぜ○○くんは、他児トラブルをよく起こすのか? なぜ○○くんは、スキンシップ遊びを避けるのか? …

【不登校の原因について】発達障害と心の病気を通して考える

不登校児童の数は年々増加傾向にあることが分かっています。 不登校に至る要因には、様々なものがありますが、中でも、無気力や不安感などが大半を占めていると言われています。   関連記事:「【不登 …

【発達障害の重複(併存)を理解する難しさについて】療育経験を通して考える

療育現場で発達に躓きのある子どもと関わっていると、様々な発達特性が見られます。 例えば、コミュニケーションの難しさやこだわり行動のあるASD(自閉症スペクトラム障害)児や、不注意・多動・衝動性のあるA …

【社会性への支援①】発達障害児支援の現場を通して考える

〝社会性″とは、様々な定義や表現があるかと思いますが、一つ定義を取り上げると、〝人とある対象を共有し、その共有体験を楽しむといった共同行為″だと言えます。 著者は、発達障害など発達に躓きのある子どもた …

発達障害への包括的アセスメントについて

発達障害児・者へのアセスメントには様々なものがあります。 アセスメントとは、査定・評価のことですが、アセスメントを通して、本人の強み・弱みなどの理解に役立てることが大切です。 著者は療育現場をはじめと …