上司や先輩とうまくコミュニケーションが取れない、言いたいことが言えない、また、後輩への指導やアドバイスの仕方で悩んでいるなど、人間を相手にする職業において、通常の業務以外にも様々な人間関係上の悩みがあるかと思います。
私自身、発達支援の現場で8年以上勤務するにあたり、人間関係やコミュニケーションの取り方についていろいろと考えてきました。
例えば、価値観の違う相手とどのようにしてコミュニケーションをとればいいのか、信頼関係を結べるのか、後輩へのアドバイスはどのようにしていけばいいのかなど今でも難しい課題です。
今回は私が発達支援の現場で働く職員とどのようにしてコミュニケーションをとってきたのか、その過程で大切にしてきて点をお伝えしていこうと思います。
その際、相手や文脈に応じてコミュニケーションの取り方も変わってくるかと思いますので、私が大学院を卒業して初めて療育現場に勤務した時の経験談に焦点を合わせてお伝えしていこうと思います。
発達支援の現場では、様々な年齢の発達につまずきのある人たちがおり、そこで支援する人たちのバックボーンも保育士、指導員、教員、看護師、栄養士、作業療法士、理学療法士、心理士、医師など様々な方がいます。
私が勤務した療育現場は、発達につまずきのある未就学児を対象とした施設であり、自閉症児、知的障害児、肢体不自由児、脳性麻痺児、ダウン症児など様々なお子さんたちがいました。職員は、医師、保育士、児童指導員、看護師、栄養士、作業療法士の人たちです。
私は児童指導員という形で職務につきました。一応、心理士資格ももっていました。私自身、過去にも発達につまずきのある人たちとの関わりはありましたが、未就学という年齢層、そして、重度の障害児などを相手にしたことはなく最初は右も左もわからない状態でした。
周囲の職員の大半は保育士、次に指導員といった感じで、主に保育士と指導員の人たちとのやり取りが大半を占めました。私は、大学で心理学を専攻していたこともあり、この職場においてはレアキャラでした!といったこともあり、周囲からは頭でいろいろと考える人と見られていたようです(後に知りましたが)。そうした、自分のバックボーンが他の職員との違いとなり、最初はコミュニケーションがあまりうまく取れなかったように思います。とにかく自分の感覚や視点がなかなかうまく伝わらなかったことを覚えています。
うまくコミュニケーションが取れないのであれば方法を変える必要があると思いました。とにかく、相手の視点、その職場の風土を理解することに努めました。また、一番重要なのは子供たちへ全力で向き合う姿勢です。こうした点を、日々、行動として重ねていくことで周囲から意見を求められることが増えてきました。それも、意外なことに心理学的な視点についてです!一年後には職員が私に対するまなざしが全く違うものになっていたと感じます(個人的な感想ですが)。
私は療育現場では徹底的にその日にできることに全力で取り組むということを心掛けながら、仕事を終えると一人黙々と現場での問いを考え続けたり、書籍などで情報収集する時間を意識的に作りました。これは義務というより完全に自分の探求心です。
こうした積み重ねをしていきながら、私は自分が学び感じたことを職場で意識的・無意識的に話す量が増えてきました。周囲は、大学で学んだことを話していると思っていたのかもしれませんが、話したことの多くは自分が療育現場に勤めてから学んだことが大半でした。
こうした経験を通して数年後には自分の主張が非常に通りやすい状態になりました。また、職員との信頼関係もできてきたと実感しました。大切なのは、困難な状態において、共に考え前進していこうとする姿勢や行動だと思います。私が周囲からの信頼やコミュニケーションがうまくとれるようになったのも、子供たちへの関わりを共に悩み考え実践してきたという基本的な積み重ねだと感じています。
ここで、新しい文脈において他の職員とコミュニケーションをとるにあたり私が心掛けてきた点を整理します。
①自分が全力投入できることを探し日々実践する➢私の場合には子供たちに全力で関わる、また知識の収集でした。
②他の職員の意見や考えをまずはしっかり聞いてみる➢時間はかかりますが相手との信頼構築にも非常い重要だと思います。
③①と②を通して、自分が疑問に感じる点などを自分なりに考え抜く➢他の職員の意見なども自分が納得のいくまで考えてみることが重要だと思います。
④③で考えた内容についてタイミングをみて発信する➢タイミングは非常に重要です。そして、伝え方も重要です。
私が実行してきた点は以上の4つに集約されるかと思います。特に①の自分なりにできることを探し実行すること、さらに言えば長期的な目標設定も重要だと思います。
最後にお伝えしたのは、特定の職場環境にこだわる必要はないということです。これまでみた内容でも、例えば、①の自分が全力投入できることを探し日々実践するにしても、実践が阻害される多くの要因があれば継続は難しくなります。また、③自分が疑問に感じる点などを自分なりに考え抜くにしても、その結果、その職場の人たちの考え方が自分とどうしても合わないということもあるかと思います。
ある程度の期間挑戦してみることは大切だと思いますが、精神が病んでからでは手遅れになります。そうした判断もある環境や文脈に自分が入る時には大切になります。
発達支援の現場はある種、感情労働の面もあり精神的に疲れることもありますが、他の職員とコミュニケーションがうまく取れるようになると現場は非常に楽しいものになると思います。そのためにも、相手との信頼や自分の探求心や自分には何ができるのかということを常に念頭においてこれからも行動していこうと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。