著者は長年、発達障害など発達に躓きのある子どもへの療育(発達支援)をしてきています。
様々な子どもたちとの関わりを通して、子どもたちが成長していく姿に喜びを感じています!
それでは、療育(発達支援)において、子どもたち一人ひとりの力を伸ばしていくためにはどのような取り組みが必要なのでしょうか?
そこで、今回は、療育(発達支援)で成果を出すために必要な5つのことについて、臨床発達心理士である著者の経験談を踏まえて理解を深めていきたいと思います。
今回は、療育(発達支援)で成果を出すために必要なものとして、1.自尊心を育むこと、2.自他を知ること、3.繋がりを作ること、4.様々な経験を与えること、5.好き・得意を見つけること、の5つの視点から見ていきます。
1.自尊心を育むこと
〝自尊心″とは、自己への評価(好き・嫌い、自分に価値がある・ない、など)のことを指します。
〝自尊心″は一人で勝手に育っていくものではなく、周囲で関わる大人との関係性が基盤となって育っていくものです。
つまり、信頼のおける大人が無条件の愛情を注ぎ関わり続けることで少しずつ育まれていき、徐々に小学校中学年頃から仲間関係の中で育まれる比重が強くなってきます。
著者は、子どもたち一人ひとりの〝自尊心″を育むために、大人との信頼関係に加え、仲間集団での自信を育むことを大切にしています。
自信がついてきた子どもは、日々の活動に意欲的になる姿が増えたり、仲間や自分を大切にする様子が見られたり、信頼のおける大人に相談する様子が増えているといった印象があります。
〝自尊心″は急激に高まることは少なく、また、日常のライフイベントなどによっても変化が見られることがあります。
だからこそ、日々の子ども〝心″に目を向けながら、育んでいくという視点がとても大切だと感じています。
2.自他を知ること
相手を知ることは他者理解に留まらず、自己理解にも繋がっていきます。
さらに、社会の中には、自分とは異なる多くの他者がいるといった多様性の理解にも繋がっていきます。
著者は、子どもたちが自他を知っていくために、自他の意図や思い、そして、良い所などをできるだけ言葉にして伝えるようにしています。
療育現場には、自閉症など自他の気持ちを直感的に読み取る難しさ(心の理論の困難さ)がある子どもたちが多くいるからです。
しかし、信頼のおける大人や仲間集団での関わりの積み重ねによって、自他を知る力は着実に高まっていることもまた実感としてあります。
だからこそ、日々の活動の中で、子どもたちの心を推測して言葉にしていく取り組みがとても大切だと感じています。
3.繋がりを作ること
家庭や学校以外の居場所を作ること、つまり、〝居場所支援″は非常に大切です。
子どもたちは、放課後等デイサービスといった第三の居場所(サードプレイス)で、普段関わることのない大人や他児と接点を持ちながら、新しいネットワークを構築していきます。
他児との接点は何も同年齢だけではなく、年齢差のある縦の関係からも作ることができます。
様々な居場所の存在があることで、仮に学校でうまく行かなかったとしても、第三の居場所がそれを補う役目を部分的に果たすことが可能であると思います。
また、新しい繋がりができることで、様々なコミュニティに参加しようとする動機も生まれるように思います。
実際に、著者が勤める放課後等デイサービスが第三の居場所として安心できる環境となった子どもや、新しいコミュニティに参加しようとする動機が生まれた子どももいます。
こうしたケースを通して、子どもたちが、自分では見つけることや繋がりを独力で作ることが難しい居場所を探し作っていくことの重要性を強く感じています。
4.様々な経験を与えること
子どもたちは様々な経験を通して、自分は何が好きで嫌いなのか、何が得意で不得意なのか、何に喜びを感じるのか、失敗からどのようにして立ち直ることができるのか、など多くのことを学んでいきます。
仮に知的障害があり、本来の年齢よりも2歳低い水準の発達年齢の子どもがいたとしましょう。
一方で、その子どもが生きてきた時間や経験値は、知的水準・発達年齢では解釈できないものだと思います。
そのため、様々な経験を積み重ねてきた子どもは経験からの学びがあるため、生きる力が強いと感じることが多くあります。
こうした経験談からも、著者は様々な経験を子どもたちに提供していくことが大切だと感じています。
5.好き・得意を見つけること
様々な経験がきっかけとなり、子どもは自分なりの好き・得意を見つけていくことができます。
著者は療育現場を通して、ある活動がきっかけとなり、好きな遊びが見つかった、好きな遊びを他者と楽しむ喜びを知ることができた、他者からのフィードバックにより自分の得意や良さを知ることができた、など多くのポジティブな発見がこれまでたくさんありました。
好き・得意を見つけるためには、様々な活動を提供していきながら、関わる大人もまた一緒に楽しむことが重要だと思います。
楽しい活動の場には、自然と子どもたちが集まってくることがよくあります。
また、様々な活動での子どもたちが見せる姿や取り組みに対して、肯定的な評価をしていくことで、子どもたちの力が伸びたと感じるケースも良くあります。
その力がある時に得意にものになっていたこともあります。
そのためには、子どもたちの興味関心を深く把握していく姿勢もまた必要不可欠だと感じています。
以上、療育(発達支援)で成果を出すために必要な5つのことについて見てきました。
今回取り上げたものは主に直接子どもに関わる内容です。
一方で、家庭や学校との連携、多職種連携、保護者支援なども療育で成果を出すために重要な要素だと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育(発達支援)で成果を出すために、どのような取り組みが必要なのかを試行錯誤してきながら、取り組みの中で感じたことを発信していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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