
療育の成果について、どのような働きかけが成果に繋がったのかを特定することは難しいことです。
まず、何を持って成果と言えるのか、そして、成果には様々な要因が絡んでいるからだと言えます。
さらに、成果(変化)にも、短期のものと長期のものなど時間軸の捉えの違いによって見えてくるもの、内容が異なります。
そこで、今回は、私自身の放課後等デイサービスでの長期の子どもたちとの関わりからポジティブな変化が見られた例を長期の視点から以下に事例を簡単に紹介したいと思います。
※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。
療育の成果について-イメージを形にする力-
Aさんの例→イメージを形にする力がついてきた例
当時小学校中学年のAさんは放課後等デイサービスを利用して3年程度になります。
放課後等デイサービスを利用した当初は「○○作って!○○作ってほしい!」など、遊びたい大人に色々と作ってほしいことをお願いすることが多くありました(もちろんその後もあります)。
工作遊びなどの経験値がそれほど多くはないAさんは、とにかく車や飛行機など壮大なものを作ってほしいとお願いすることが多くありました。そして、自分のイメージと違うとイライラすることが多くありました。
工作をしていても、実際に切ったり貼ったりするなど道具の使用も得意ではありませんでした。そのため、作る作業の多くは大人がやる場面が多くありました。
イメージを大人と共有することが難しく、手先も不器用さがありました。
そのため、スタッフの取り組みとしては、Aさんの好きなことを知ること、そして、その中で、どのようなイメージを思い描いているのかを、様々な遊びを手掛かりに共有していくことから始まりました。
最初は「違う!こうしたかった!」など、すれ違う場面が多くあり、また、途中で飽きてしまうこともしばしばでした。
それが長い時間をかけて関わり続けることで、徐々に、Aさんが好きなこと、どのようなイメージを思い浮かべているのかを推測することができるようになってきました。
それは、完成した工作をAさんが見た時の反応から読み取ることができました。
Aさんと徐々にイメージを共有できる頻度が増すと、次は、口頭での伝えや大人がイラストに書くだけではなく、iPadで写真を見せるなどして最初にイメージを共有する取り組みへと移行していきました。
これには、大人も写真を見て段ボールなどでAさんが好きな作品を作れるのかといった(あるいはこういったものが好きそうだといった)Aさんとの共有体験が非常に重要だと感じます。
それに加え、Aさんは、ハサミの使用や、色を塗るなど、徐々に1人でできることも増えていきました。これは、学校や家庭での経験も大きかったと思います。
こうして、大人とイメージを共有し、それを作るにあたり、作業を役割分担し(Aさんは切る・塗るなど)、長時間(長いと数時間)作業に集中し、作品を多く作ることができるようになっていきました。
完成した作品を得意げに周囲に見せる様子も増え、達成感をもつことも増えました。
こうした成功体験を重ねることで、イメージを形にする力が経験をもとに構築されてきたのだと思います。
大人から見ると少しずつの進歩も、数年の関わりを振り返ると大きな成長であると実感します!
以上、療育の成果について-イメージを形にする力-について見てきました。
こうして、イメージを形にする力が徐々についていく過程には、イメージを大人と共有する経験、そして、イメージを具現化するために様々な道具などを活用する力(操作性の向上)、試行錯誤して作品を作ることの繰り返しが重要かと思います。
何かを形にするには、子供1人では難しい場面が多くあります。
私自身、1人の支援者として、子供の能力を分析することが大切であり、その前提として、普段の子どもとの関わり、共有体験の蓄積が重要であると実感します。
今後も今回の事例のように、長期的な関わりから子どもたちの成長、療育の成果を振り返っていく中で、今後の支援に繋げていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
療育実践で参考になる書籍一覧に関する記事を以下に載せます。
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