療育の成果について、どのような働きかけが成果に繋がったのかを特定することは難しいことです。まず、何を持って成果と言えるのか、そして、成果には様々な要因が絡んでいるからだと思います。
さらに、成果(変化)にも、短期のものと長期のものなど時間軸の捉えの違いによって見えてくるもの、内容が異なるかと思います。
そこで今回は、私自身の放課後等デイサービスでの長期の子どもたちとの関わりからポジティブな変化が見られた例を短期・長期の視点から以下に2事例を簡単に紹介したいと思います。
今回は自閉症スペクトラム症のこだわり行動を例に取り、その変化を記載していこうと思います。今回の事例を取り上げるにあたり、参考になると思われる記事を次に記載(「自閉症児のこだわり行動についてその意味を考える」、「自閉症児の見通しについて:発達的な視点からその意味を考える」、「自閉症児と合意をとることの意味について考える」)しますので、興味のある方はぜひ参照していただければと思います。
療育の成果について-こだわり行動について-
A君の事例→こだわり行動が変化してきた例
A君は小学校3年生であり、ASD(自閉症スペクトラム障害)の特性があるお子さんです。A君は私が所属している放課後等デイサービスを一年生から利用しており、当初は、帰りの順番で一番が良いというこだわり行動がありました。
我々スタッフは、A君のこだわり行動に対して、できるだけ配慮を行ってきました。しかし、どうしても配慮できない要素も出てきます。
例えば、他児が「なんでいつもA君が一番!ずるい!」など、他児とトラブルになることもありました。
こうしたトラブルに対して、事前に見通しを伝えながら対応してきました。例えば、活動前に(あるいは前日に)、今日は帰りの順番が2番目、明日は1番目など、できるだけ急な予定の変更を避けるように事前の伝えを大切にしてきました。
3年生になったA君は、「帰り一番じゃなくても良い」、「○○君が一番でいいよ」など、これまでこだわってきた行動に変化・柔軟性が出てきました。
こうした行動の変化もA君の成長と我々スタッフがA君の特性を理解し配慮を継続してきた結果かと思います。
B君の事例→こだわり行動が変化してきた例
B君もA君と同様にASDの特性があり、現在小学校3年生で、私が所属している放課後等デイサービスを一年生から利用しているお子さんです。
B君のこだわりは、お気に入りのアイテムを常に持って放デイ内を動きまわるというもので、そのアイテムが必ずいつも同じものでした。そのため、いつも放デイに着くと他児が使う前に足早にそのアイテムを取りに行きます。
こうして物へのこだわりがあるため、物をめぐってトラブルになることがあります。例えば、他児から「なんでいつもB君が○○を使っているの?僕も使いたい?」といった感じです。
我々スタッフは、B君にみんなが使うおもちゃであるため、今日は貸してあげようと提案するも、急な変更が苦手なB君は絶対に譲ることができません。
そのため、月曜日はB君の番、火曜日はC君の番というように事前に使える日を提案し、当日も早めに提案した内容を再度伝えました。ちなみに、この提案にB君は合意しました。
翌日、B君は、普段使っているアイテムとは違うものを自分で選択することができました。
こうした結果を踏まえて、改めて急な変更ではなく、事前の提案と合意が必要であると感じました。
ASDのこだわり行動は、成長と共にその内容が変化するとも言われますが、何かにこだわる行動じたいがなくなるわけではありません。
こうした特性を踏まえた配慮を怠ることなく、中長期的なスパンで子どもたちの生活に寄り添うことが大切かと思います。
今後も子どもたちの発達特性への理解を深めながら、より良い支援ができるよう日々の実践を大切にしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。