発達理解・発達支援・ブログ

人間の多様な理解と支援を目指して!

療育 自尊心 自己肯定感

療育で重要なこと-自尊心・自己肯定感の視点から考える-

投稿日:2022年6月4日 更新日:

療育現場で発達に躓きのある子どもたちと関わっていると、どうしても子どものネガティブな行動に目が向いてしまうことがあります。

一方で、ネガティブな行動にばかり目が向き続いてしまい、子どもに対する肯定的な関わりが不足してしまうと、子どもの〝自尊心“〝自己肯定感“がうまく育つことが難しくなっていきます。

それだけ、療育において〝自尊心“〝自己肯定感“を育てることは大切だと言えます。

 

それでは、そもそも自尊心・自己肯定感にはどのような意味があるのでしょうか?

また、自尊心・自己肯定感が低下すると、どのような状態になっていくのでしょうか?

 

そこで、今回は、療育において自尊心・自己肯定感を育てることの重要性について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回、参照する資料は「平岩幹男(2012)自閉症スペクトラム障害:療育と対応を考える.岩波新書.」です。

 

 

スポンサーリンク

 

 

自尊心・自己肯定感について

以下、著書を引用しながら見ていきます。

叱られたり、注意されたりばかりですと、自分に対する自信がでてくるとか、明るい笑顔が出てくることは考えられません。そのために、セルフ・エスティーム(self-esteem)が低くなります。セルフ・エスティームには、自尊感情、自己肯定感、「自分を大切だと思える」などさまざまな訳がありますが、要は自信を持って生活できることだと考えています。

 

著書の内容から、セルフ・エスティーム、つまり自尊感情(自尊心)や自己肯定感は、自分に対する自信や自分を大切に思える感情ということになります。

○○さんはいつも自信があるなどと使われることがありますが、こうした自分に自信がある人は、他者からの肯定的評価を多く受けている場合が多いと言えます。

また、肯定的評価をしていく上で必要となるのが、他者との比較ではなく、その子の頑張りを褒めたり、認めるなど、その子自身をとても大切に思うことで、子どもの内部で揺らぐことのない自信が育っていくと言えます。

 

 

自尊心・自己肯定感が低いとどうなるのか

以下、再び著書を引用しながら見ていきます。

「自分は駄目だ、うまくいかない」ことに慣れてしまうと、プライドも低くなり、生活や将来に対する意欲も低くなります。子どもから大人まで、発達障害を抱えている場合には、セルフ・エスティームの障害がでやすいのです。(中略)まだ言葉の話せないカナー型自閉症の場合には、まず言葉を話せるように療育し、社会参加ができるようにしていくことが一つの目標になりますが、その療育の過程においてもセルフ・エスティームは大切にすべきです。

 

著書には、自尊心・自己肯定感の低下は、生活の様々な場面で負の影響が出てくること、そして、療育の中で、目標をもって少しずつ取り組みを進めていく過程の中にも自尊心・自己肯定感の視点は大切にすべきだと記載されています。

発達障害のある人たちは、能力の凸凹といった周囲との違などが影響して、注意や叱責を受ける対象になりやすい傾向が場合もあります。

叱責や注意を受け続けると、うつやひきこもり、反抗挑戦症など様々な二次障害に繋がると言われています。

療育において大切な視点に〝二次障害の予防“があります。

二次障害を防ぐためにも、普段の子ども関わりから、個別のニーズを理解すること、個別の配慮をすること、そして、その子の頑張りなどをしっかりと観察し褒めるといった自尊心・自己肯定感を高める取り組みを怠らないことがとても重要だと言えます。

 

 

著者の経験談

最後に、著者の療育経験から自尊心・自己肯定感の視点の重要性についてお伝えしていきます。

当時小学5年生のA君は、忘れ物が多く、すぐに人の話に割って入るなどの落ち着きのなさ、時間の管理の苦手さから注意や責を受けることが多くありました。

それが、学年が上がり、関わる周囲の大人たちが変わったことで、褒められる頻度が増え、注意や責などがとても少なくなっていきました。

これは、A君自身が変わったというよりも、周囲の大人の対応が変わったという印象がありました。

その後、数年が経ち、A君は忘れ物も減り、状況理解もできることが増え、時間を見て行動する様子も増えていきました。

中でも、自分に対する自信が表情などからも見てとれるようになってきました。

以前は、どことなく自信がない様子で、どうせまた怒られるのだろうといった感じがありました。

自信がついてきたA君は、活動に取り組む意欲も向上し、日々、活き活きと生活する様子が増えていきました。

こうしたケースは他にありますが、療育を通して、自尊心・自己肯定感を高める関わりは、様々な生活場面やその後の人生に大きく影響するのだと実感させられた重要な事例になります。

 

 


以上、療育で重要なこと-自尊心・自己肯定感の視点から考える-について見てきました。

私自身、まだまだ子たちの良いところや頑張りなどを観察する能力は未熟ですが、今後も、子どもたち一人ひとりの良い所を褒めていきながら、自尊心・自己肯定感を高められるような関わりをしていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

関連記事:「自閉症療育で大切な視点-自尊心について-

 

平岩幹男(2012)自閉症スペクトラム障害:療育と対応を考える.岩波新書.

スポンサーリンク

-療育, 自尊心, 自己肯定感

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

療育で大切な視点—ADHD児への基本対応について-

ADHD(注意欠如/多動性)とは、多動性・衝動性・不注意を主な特徴としています。 ADHDにも多動性・衝動性が強くでるタイプ、不注意が強くでるタイプ、両者の特徴が混ざっている混合型など様々なタイプがあ …

発達支援(理論編):療育施設で役立つ視点について②

今回は前回の続きとして、私が以前の療育施設の職場で非常に役に立った視点についてお伝えしていこうと思います。 (前回の記事では、①太田ステージ、②感覚と運動の高次化理論についてお伝えしました。どちらも、 …

発達支援(遊び編):「トイレットペーパー遊び」

私がいた療育施設では、様々な遊びを考え実践してきました。その中で、子どもたちが興味関心を示す遊びを構想することは思いのほか難しいです。 せっかく考えた遊びも直ぐに興味をなくしてしまうなど、新しい遊びを …

発達支援(回想編):療育施設の初日を振り返る

私はこれまで様々な療育現場に携わってきました。こうした現場は、発達につまずきのある子どもたちが利用しており、そうした多くの子どもたちとの関わりからの学びは今の私を支えるものとなっています。 昔だからこ …

発達障害とSNSやゲーム依存について-療育経験を通して考える-

発達障害のある方は、過集中傾向が強いことや、対人関係よりも他のことを求める傾向、そして、二次障害などからSNSやゲームに依存する人も多いと言われています。 SNSやゲームは、使い方さえ間違わなければ現 …