現場で発達に躓きのある子どもたちと関わる際に大切な視点が多くあります。
その中でも、著者がともて大切だと感じるものに「自己有能感」があります。
それでは、自己有能感とは一体どのようなものなのでしょうか?
そこで、今回は、療育で大切な視点について「自己有能感」をキーワードに説明していきたいと思います。
今回参考にする資料として、「育てにくい子にはわけがある:感覚統合が教えてくれたもの」を参照していきたいと思います。
自己有能感について
最初に「自己有能感」の定義について見ていきます。
「自己有能感」については、心理学領域では様々な定義がありますが、今回は参考書の内容を引用致します。
「自己有能感」とは「自分がこの世に生まれてきてよかったと思える心のはたらき」、「自分を肯定的に受け止め、自分を励まし、ほめる心の働き」
著書の中では、「自己有能感」をこのように表現しています。
「自己有能感」は他者との比較ではなく、個人内の比較というところが大切です。
そのため、育ちの中で、自分を励ます事ができる自分自身に育っていることが重要です。
思春期になると体も心も急激に発達するため、こうした激動の時期を乗り越えるためにも、学童期までの「自己有能感」がとても大切になってきます。
「自己有能感」が低いと、その不安定なエネルギーが内に向かうことで、不登校・引きこもり・うつなどの症状に繋がることがあります。
一方、外に向かうことで、暴力的・破壊的行動として、外に表出されることがあります。
自己有能感を育てるためには
それでは、「自己有能感」を育てるためには何が必要となるのでしょうか?
著書の中では5つのポイントを上げています。
①幼少期からの「励まされる」経験の積み重ね
②自分の存在を無条件に受け止めてくれる他者の存在
③「興味・関心・好奇心」にもとづく「自己選択・自己決定」
④「成功体験」に伴う「達成感」
⑤できたことの「共有感」や「共感性」
「自己有能感」は、赤ちゃんの頃から、無条件の信頼関係がとても大切になってきます。
まさに、安定した愛着関係ともいいますが、情緒的結びつきを作るために、安心感・安全感を子どもが感じることが大切です。
安全・安心感の中で、子どもが探索行動を増やしていきながら(励まされながら)、子どもの成長や頑張る過程を応援することが重要です。
外の世界に興味・関心が芽生えてくると、それに対して人は主体的に行動することが多くなってくるため、興味・関心・好奇心による自己選択・自己決定も大切になってきます。
主体的な行動から生じる成功体験に伴う達成感も大切です。
達成感を感じるためには、他者と一緒に何かができた・できたところを見てもらったという「共有感」や「共感性」がベースにあることが大事です。
以上が、「自己有能感」の説明と、「自己有能感」を育てるためのポイントになります。
著者のコメント
著者は、これまで、そして現在において、発達に躓きのある未就学の子ども、学童期のお子子どもたちを多く見てきています。
思春期といった激動の時期を乗り越えるためにも、愛情のエネルギーや何かに挑戦するエネルギー(意欲のエネルギー)をその前段階までに蓄えておくことがとても大切だと考えています。
今回参考にした本を読んで、愛情エネルギーや意欲のエネルギーを蓄えるためのキーワードとなるのが「自己有能感」であると腹落ちした感覚がありました!
他人との比較ではなく自分を基準として、自信をつけていけることが療育においてとても大切なことだと思います。
著者が見てきた子どもたちの中にも、「自己有能感」が高まり、自分に自信を持てるようになった子どもたちが多くいます。
こうした感覚を伸ばすためには、子どもたち一人ひとりの頑張りをよく観察し評価していくことが大切なのだと思います。
今後も日々の現場の中で子どもたちの様子をよく観察し、それぞれの頑張りを励ましていけるような存在でありたいと思います。
関連記事として「自閉症児が思春期を乗り越えるために大切なことについて考える」を載せます。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
木村順(2006)子育てと健康シリーズ㉕:育てにくい子にはわけがある:感覚統合が教えてくれたもの.大月書店.