発達理解・発達支援・ブログ

人間の多様な理解と支援を目指して!

感覚運動期 療育 発達支援 発達理解

感覚運動期の発達と遊びについて考える

投稿日:2020年8月3日 更新日:

感覚運動期とは、感覚と運動から外の世界を理解していく時期であり、子どもは言葉を話す前の段階には、見る、聞く、触る、匂いを嗅ぐ、舐めるなどして外の世界への認識を広げていきます。

障害のある子どもたちは定型発達児と比べると、こうした時期が長く続く子も多く見られます。そのため、感覚運動期への深い理解が子どもたちの理解に繋がってくるかと思います。

私たち大人はこうした時期の記憶がほとんどないと思いますし、大人になるにつれて視覚や聴覚が有意になるため、原初的な感覚を認識する機会が少なくなると思います。

今回は、発語前の感覚運動期の時期を取り上げ、実際の療育現場でどのような関わりが必要であったのかを遊びを中心にお伝えしていこうと思います。

 

感覚運動期について

感覚運動期の子どもは、目の前にあることが世界の全てです。そのため、手を出す、なめるといった行為を行いながら、全身の感覚を使って外の世界を学ぼうとします。

この時期に大切なことは、「こうしたらこうなる」➢「行為と結果の因果関係の理解」です。例えば、「ボールをもって離したら床に落ちて音がした」というようにボールをもって離すという行為が、床に落ちて音がしたという結果になり、こうした関係を学習する時期になります。

こうして自分の行為とその結果とが結びつくことで(繰り返しの経験から)、自分の外の世界との関係を予測することができるようになります。これを、「表象機能」と呼びます。

この時期には、子どもたちが感覚と運動を使って、行為の結果を学習していくことが後の発達において大切になります。

 

著者のコメント

私がいた療育現場では、重度の子どもたちも多くいたため、様々な感触遊びや運動遊びを行ったりしていました。ご家庭ではなかなか実行するのが難しいかと思いますので、環境が整備された施設などでの経験がとても重要だと思います。

遊びの中でも、行為と結果が予測できる遊びで色々と工夫したものに「的当てゲーム」があります(詳しくは、発達支援(遊び編):「的当てゲーム」をご覧ください)。

これは当てる的の工夫や的に当てるボールなどの工夫、使える動作(離す、転がす、投げる、蹴るなど)のアセスメントなどがポイントになってくるもので、非常に奥が深い遊びです。行為と結果がわかりやすいため、ハマると繰り返して遊べると思います。

また、障害のある子どもたちはある程度年齢がいっても、感触遊びなどを好んでやることが多いため、それぞれの発達段階や興味の方向などを見据えて関わり方を考えていくといいかと思います(遊びに関しての具体例は、発達支援(遊び編)を参照して頂ける良いかと思います)。

大切なことは、年齢で見ることより、その子の発達段階を見ることです。そして、感覚や運動をたくさん使って興味のある遊びをたくさん行うことです。興味の内容はケースバイケースかと思いますが、色々と体験させることで、興味がわいてきたという事例もたくさんあります。

今後もより良い発達理解と発達支援を目指していきたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

文献

立松英子(2009)発達支援と教材教具 子どもに学ぶ学習の系統性.ジアース教育新社.

-感覚運動期, 療育, 発達支援, 発達理解

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

療育(発達支援)の成果は継続することで見えてくる

著者は療育(発達支援)現場で長年、発達に躓きある子どもたちを支援しています。 通所してくる子どもたちは非常に個性的だと感じます。 療育を通して子どもたちの成長を実感できることはこの職種ならではの喜びだ …

【実践を深掘りする理論の重要性について】療育経験を通して考える

著者は発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育をしています。 療育での実践を重ねていく中で、子どもたちの発達への理解が年々深まってきているという実感があります。 一方で、療育に関連する知識の収集 …

療育(発達支援)に関するおすすめ本【初級編~中級編】

〝療育(発達支援)″とは、一般的に、社会の中で生きていく力を育むことを目的としています。 その内容は、例えば、自己肯定感を育むこと、自律スキルやソーシャルスキルの獲得などがあります。   そ …

言葉の理解が進む時期について太田ステージから考える

療育現場で発語が見られるようになってきた子、あるいは発語のようにも思える言葉を発したケースなどこれまで多くの事例を見てきましたが、そのような子どもたちの発達を説明することは容易ではないと感じます。 太 …

【療育の成果を感じにくい時の改善方法】〝抜け感″をもった関わり方

著者は長年、療育(発達支援)現場で、発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの支援をしています。 現場での支援の継続により、成果が出ていると実感することがある一方で、成果を感じにくいなど行き詰まりを感 …