障害児の発達は定型発達児と比較すると、成長がゆっくりであったり異なる点が多くあります。
著者は療育施設での経験を通して、様々な子どもたちとの関わりの中で、人の発達は非常に多様であり、その中で障害児の発達をどのように理解し支援していく必要があるのかを考える機会が豊富にあります。
そして、発達を理解することは、過去‐現在‐未来を関連づけて考えるということでもあります。
それでは、障害児の発達を理解する上でどのような視点が大切なのでしょうか?
そこで、今回は、太田ステージから見た発達段階について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「永井洋子・太田昌孝(編)(2011)太田ステージによる自閉症療育の宝石箱.日本文化科学社.」です。
太田ステージから見た発達段階:シンボル機能の発達段階を例に
太田ステージは、スイスの発達心理学者であるジャン・ピアジェの発達理論を参考にして作られたものです。
以下に、太田ステージにおけるシンボル機能の発達段階について見ていきます。
StageⅠ~StageⅣまでの段階があります。
‟シンボル機能”とは、‟目の前に存在しない物を思い浮かべたり、相手の気持ちを理解するような働きのこと”です。
心理学や発達心理学ではよく出てくる用語です。
それでは、以下、著書を参考に、StageⅠ~StageⅣまでのシンボル機能の発達段階について見ていきます。
StageⅠ:シンボル機能がまだ認められない段階➢物に名前があることが分からない段階(感覚運動期:前言語期)
StageⅡ:シンボル機能の芽生えの段階➢物に名前があることが分かりかけた段階(シンボル機能への移行期)
StageⅢ‐1:シンボル機能がはっきりと認められる時期➢物に名前があることがはっきりした段階(シンボル機能の初期)
StageⅢ‐2:概念形成の芽生えの段階➢大小などの比較の基礎ができた段階
StageⅣ:基本的な関係の概念が形成された時期➢空間関係の理解ができた段階
以上が、太田ステージのシンボル機能の発達段階になります。
このプロセスは言葉を話す前の段階から言葉を話しはじめた段階、そして、概念の理解までの発達過程を示したものになります。
子どもたちがどのステージにいるのかを簡単に調べる方法もありますので、興味のある方は太田ステージ関連の書籍を調べてみるといいと思います。
今回参考にした資料にも載ってます。
著者のコメント
発達を理解するためには、過去‐現在‐未来を関連付ける必要があります。
太田ステージでは、子どもがどの発達のステージにいるのかがわかるため、時系列で子どもの現状を把握するのに役立つと思います。
もちろん、子どもたちの発達には様々な要因が影響していますので、ある一つの指標だけを取り上げて理解することには限界があります。
しかし、著者の個人的な経験から言えることは、ある指標や基準から子どもたちの発達を把握する視点を持っておくことも大切だと思います(経験則や主観に依存しすぎないようにするため)。
そして、太田ステージのように、言葉の前の段階から、概念理解までの段階を非常にわかりやすく解説している理論は少ないように思います。
そして、障害児の発達を理解するために、様々なヒントを与えてくれる視点だとも言えます。
実際に著者がいた療育施設では、太田ステージの発達段階の視点を通して、職員間で情報共有をしていくことで、それ以前とは異なる見方ができたことで、子どもたちの発達の理解にさらに近づいたといった実感がありました。
現場に理論を取り入れることは簡単ではありませんし、取り入れる過程において多くの思考錯誤が必要になると思いますが、少しでも子どもたちの理解とより良い支援に繋げていくためには、必要なことだと思います。
今後もより良い発達理解と発達支援を目指していきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
関連記事:「社会性の発達段階について太田ステージから考える」
永井洋子・太田昌孝(編)(2011)太田ステージによる自閉症療育の宝石箱.日本文化科学社.