発達理解・発達支援・ブログ

人間の多様な理解と支援を目指して!

大人 発達障害

大人の発達障害の困り感について

投稿日:2020年9月20日 更新日:

発達支援の現場などでよく「困り感」という言葉が使われることがあります。

私自身も長年、療育現場など発達支援の現場に関わる中で、大人の当事者の「困り感」を理解することの重要性を認識する機会が増えています。

それでは、どのようにして大人の発達障害の「困り感」への理解を深めることができるのでしょうか?

また、「困り感」を理解することでどのような展開が期待できるのでしょうか?

今回はこれらの問いについて私の考えをお伝えしていこうと思います。

 

 

スポンサーリンク

困り感の理解

最初に、「困り感」の理解の深め方についてお話します。

これは何といっても当事者の方の声に耳をしっかりと傾けることです。その際に、自分固有の考えなどは一度脇に置いた方が良いです。

その理由は、当事者の「困り感」は、その人でないとわからない面が多くあるため、先入観を持って見てしまうと、当事者の思いに共感することが難しくなってしまうからです。そうなると、関係構築は難しくなかなか心を開いてくれること、自分の悩みを打ち明けてくれることが少なくなります。

また、「困り感」は長期にわたって継続していることも多いため、簡単にわかったような態度をとるのもよくありません。相手からすると、困り続けてきたという長い歴史がありますので、その思いも含めて理解していこうとする姿勢が大切です。

こうした「困り感」ですが、理解を進めるために最も良い方法に、一緒に何か活動をしてみることです。体感を通して相手を知ることが、最も理解を進める上で効果的だと思います。

私は、当事者の方と一緒に活動する機会が多くありますが、その中で、困っている内容だけではなく、その時の気持ちなども大切にしています。人はできたか、できないか、だけではなく、その時に、楽しい、辛い、悲しい、怒りなど様々な心理が生じています。そうした心理も感じることが相手を理解するには大切です。

また、一見するとできそうに思えてしまうことも、活動を共にすると、色々と難しさが見えてくることがありますので、繰り返しになりますが、先入観を持たずに関わっていくことが重要です。

「困り感」を理解するためには、先入観を持たずに、できれば活動を共にし、その中で共感を大切にすることがまずは大切かと思います。

 

 

困り感の理解から期待できる展開

次に、「困り感」を理解することで期待できる展開についてお話します。

「困り感」について、完全に理解するという状態は難しくても、少しずつ理解ができてくると(あるいはそのような態度でいると)、相手の方から色々と話しに来てくれることが増えてきます。

つまり、信頼関係がでてきます。

そうなると、こちら側からの問いかけや提案などにも耳を傾ける様子が増えてきます。相互的なやり取りが増えることで、「困り感」の実態がより客観的に理解できるようになってきます。

もちろん「困り感」の理解には発達特性など様々な経験や知識が必要となりますが、この段階になって、少しずつ相手の特性に応じた環境調整など提案を考えていっても良いかと思います(発達特性については、「発達特性の理解について」に記載しています)。

実は「困り感」の実態を知ることはそれほど簡単なことではありません。それは、様々な環境や活動など変化の激しいなかで、どのように「困り感」が生じるのかは、予測や特定ができない部分が多いからです。

ですので、「困り感」がどのような文脈や場面で生じるのかを理解できれば、必然的にどういった配慮が必要なのかが見えてきます。

こうした「困り感」の実態把握は、私自身の感覚でまだたまだ途上の段階だと思っています。なので、当事者の方と一緒に試行錯誤していくことが双方にとって最も大切なことだと思っています。

 

 


以上、大人の発達障害の「困り感」について、理解の深め方とその後の展開の仕方についてお伝えしてきました。

大人の発達障害への理解や支援はまだたまだ途上です。私自身もわからないことが多くありますので、日々、学びの姿勢を忘れずにやっていきたいと思っています。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

スポンサーリンク

-大人, 発達障害
-

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

【発達障害児の〝問題行動″の理解の仕方について】療育経験を通して考える

発達障害のある子どもの中には、癇癪やパニックなど〝問題行動″が見られることがあります。 定型発達の人とは異なり、問題行動の理由がわかりにくいことも特徴としてあります。   それでは、発達障害 …

発達障害の原因について機能的結合の視点を通して考える

発達障害(神経発達障害)には、ASD(自閉症スペクトラム障害)、ADHD(注意欠如多動性障害)、SLD(限局性学習症)、DCD(発達性協調運動障害)、ID(知的障害)など様々な症状が含まれています。 …

【発達障害児のうつ・気分障害の関係について】療育経験を通して考える

発達障害者と〝二次障害″の関連性が高いことが指摘されています。 〝二次障害″に至る背景は、人によって異なります。 中でも、〝二次障害″における〝内在化″のうち、うつなどの〝気分障害″が大変有名です。 …

【知的障害と発達障害は併存するのか?】療育経験を通して考える

医学界においては、知的障害も発達障害(神経発達症)の一部に含まれています。 一方で、日本において、法制度上、両者は別ものとされています。   関連記事:「【知的障害と発達障害の違いについて】 …

【発達障害は重複しやすいのか?】ASDとADHDの重複を通して考える

発達障害には、ASDやADHD、SLD、DCD、IDなどが含まれています。 著者は療育現場で様々な子どもたちを見てきていますが、診断名のある子やない子など、その状態は様々ですが、気になるのはメインの診 …