大人の発達障害のある人たちと関わっていると多くの困難さがあるのだと様々な場面で感じることがあります。
最近は、自閉症スペクトラム障害やADHDなど大人になってから診断を受ける人たちも増えてきており、今後ますます大人の発達障害への理解と支援の必要性を感じております。
そうした中で、当事者スタッフの方と日々の現場の中で話していると、不器用さなど運動面の困り感を持っているケースも多く見られます。
例えば、箸がうまく使えない、文がきれいに書けない、スポーツが苦手、運転が苦手など様々な内容が上がってきます。
そこで、今回は、大人の不器用さに焦点を当てて、大人に見られる不器用さの特徴に関して、文献と私の経験からお伝えしていこうと思います。
今回参考にする資料として、中井昭夫著「特集,そだちからみたおとなの発達障害,Ⅱ・そだちとそだてられ、発達性強調運動症のそだち」を参照していきたいと思います。
青年期・成人期に見られる不器用さの特徴について
最初に、上記の文献をもとに青年期・成人期に見られる不器用さの特徴について簡単に以下に列挙していきます。
- 不器用だと言われることが多い
- 細かい作業が苦手
- 口笛が吹けない
- 飲み込みにくくて苦手な食べ物がある
- よく食べ物をこぼす
- 箸やナイフ・フォークを使うのが上手でない
- 料理が苦手(切る、剥ぐなど)
- キーボードが苦手
- 字が汚い、自分で書いた字も読めない
- よくものを落とす
- 人や物によくぶつかる
- ドアノブ、瓶のふた、鍵など回すものが苦手
- 化粧・髪の毛のセットなどが苦手・下手
- 髭剃りが苦手、傷だらけになる
- ウィンクができない
- 姿勢良く長く座っていられない
- 自動車の運転が苦手・下手
- 服がうまくたためない
- 針に糸を通すのが苦手(視力の問題でなく)
以上が青年期・成人期に見られる不器用さの特徴になります。大人になると、化粧や髪の毛のセット、自動車の運転、仕事での手作業など子供とは異なる要素も入ってきます。
そして、こられの不器用さは個々に応じて困り感など苦手なところが異なるという特徴があります。
著者の体験談
次に、大人に見られる不器用さの特徴に関して、私の経験からお伝えしていこうと思います。
冒頭にも少し述べましたが、私は現在、発達支援の現場で当事者スタッフ(自閉症、ADHDなど)の方たちと一緒に仕事をしています。
その中で、当事者スタッフの方から運動など不器用さを主訴とした困り感を話してくれることがあります。
当事者スタッフの女性Aさんは、全身運動を苦手としています。
Aさんに運動についての話を聞くと、「体を動かすなどスポーツは好きですが、団体競技だと周りに迷惑がかかる」といったことを話していました。
Aさんは子供たちとの運動遊びを苦手としている一方で、工作や絵を描くのは得意としています。ですので、絵が好きな子供たちから人気を集めて子供と一緒に絵を描いて楽しく遊ぶ様子も見られます。
当事者スタッフの女性Bさんは、文字を書いたり、タブレット操作などを苦手としています。ですので、本人なりに努力して早くやっていても、周囲から仕事が遅いとして見られることがあります。
一方で、Bさんは一度しっかり覚えたことは、ゆっくりではありますが、たんたんと作業をこなし続けることを得意としています。Bさんなりに作業を構造化するということを意識されていると話していました。
他にも複数の事例があります。
大切なのは、そうした個々に応じて体の動かし方に困り感を抱えているという現状を周囲が理解していくことだと思います。
私自身も気をつけていることとして、相手の得意・不得意なところをよく理解しながら、お互いに助け合いながら仕事をしていくということです。当然、私にも苦手なところがあり、助けてもらっています。
支え合うという視点が一緒に支援をしていく上で重要で、その際に、不器用さなども考慮に入れていく必要があり、そうした理解は支援している子供たちの理解にも繋がっていくと思います。
大人の不器用に関する研究は、まだまだ研究が進んでいないのが現状です。不器用さを主訴とした運動に関する障害として、発達性協調運動障害というものがあり、これは発達障害の一種です。
発達性協調運動障害に関する書籍や論文は、自閉症やADHDなど他の発達障害と比べて非常に数が少なく、研究途上の分野でもあります。その中で、研究自体は子供を中心に進み始めています。
今後、大人の不器用さについても現場レベルから困り感の理解と対応策などを考えていきながら、より良い支援ができるように工夫をしていきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
中井昭夫(2016)特集,そだちからみたおとなの発達障害,Ⅱ・そだちとそだてられ、発達性強調運動症のそだち.そだちの科学,26,54‐58.