〝ADHD(注意欠如多動性障害)″とは、不注意、多動性、衝動性を主な特徴とした神経発達障害の一つです。
ADHDへの対応方法の一つとして、〝薬物療法″が有名です。
それでは、ADHDの人たちのうち、どのようなケースにおいて服薬が必要だと考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、ADHDへの薬物療法について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、薬が必要となるケースについて理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「てんねんDr.(2025)子どもの発達障害がよくわかる本 これ1冊で理解もサポートも!SB Creative.」です。
【ADHDへの薬物療法について】薬が必要となるケースについて考える
著書には、薬が必要となるケースについて、いくつかのポイントが記載されています。
以下、著書を引用しながら見ていきます。
- 怒りっぽくなり、反抗的な態度や攻撃的な行動を起こすようになる
- 学習に遅れがみられるようになる
- 社会的スキルを身につけるのが苦手で友人とトラブルになる
- 周りの人ができることを自分はできないと感じたり、叱られ続けることで日頃から劣等感をいだいていると、自尊心や自己評価(セルフ・エスティーム)が低くなる
- 情緒面で不安定になる
著書には、ADHDの特徴である〝不注意″〝多動性″〝衝動性″が影響して、上記の症状や問題が生じている場合において、〝服薬″の検討が必要だと記載されています。
つまり、ADHDの特性が日常生活を困難にさせてしまう状態が続いているかどうかを確認することが重要だと言えます(生活のアセスメントと言われるものです)。
その上で、主治医と服薬が必要であるかを話し合う必要があります。
実際に〝服薬″してから、副作用の有無(生活への影響:食欲・睡眠・集中力など)を観察していきながら、効果を長期的に見ていくことが必要です。
著者の経験談
著者がこれまで見てきた発達障害児の中でも〝薬物療法″を取り入れた子どもは少なからずいます。
著者は医師ではないため、服薬の効果については療育現場での実体験と書籍からの情報収集が主となっています。
その中でも、最近、〝薬物療法″の効果を実感するケースが増えているといった印象があります。
〝薬物療法″を開始した子どもの中には、長期的使用によって、〝情緒面が安定″してきたというケースが多く見られています。
もちろん、〝薬物療法″以外での対応や脳の成熟の影響もあるかもしれませんが、複数のケースを通して、一貫して効果があると感じることが増えてきています。
〝薬物療法″をはじめた以降、必要なポイントは、生活の変化をよく観察していくということです。
これは、保護者との情報共有を含め、日々の睡眠リズムの変化、食欲の増減、日中の集中状態、疲労度の変化などを観察していくことが必要です。
また、〝薬物療法″は、使用後直ぐに効果が出るというものではなく、ある程度、期間が経たないと出ない場合が多いと感じます。
初期の服薬量は微量であるため、量の調整等もその後の心身の状態に影響していくのだと言えます。
ここでさらに、療育現場において特に大切だと感じるポイントがあります。
それは、継続した〝環境調整″の必要性です。
〝環境調整″には、〝物的環境″と〝人的環境″とがあります。
つまり、様々な発達障害の特性への配慮を行っていくことが前提として必要だと言えます。
例えば、感覚過敏の問題への配慮、事前のスケジュールの提示といった見通しへの配慮、安心できる空間づくりへの配慮、クールダウンエリアを整えておくことへの配慮、子どもの存在の承認や良い点をしっかりと見てくれる人の存在、子どもが好む関わりをしてくれる人の存在などがあります。
発達障害児に対して、まずは様々な特性を理解し、それに対する配慮・対応をしていくことが、〝薬物療法″も含めてとても大切だと言えます。
もちろん、〝薬物療法″の効果は子どもによって様々であることも抑えていく必要があります。
以上、【ADHDへの薬物療法について】薬が必要となるケースについて考えるについて見てきました。
療育で大切なことは、子どもが日々の生活を安定して過ごしていきながら、自尊心・自己肯定感を高めていくこと、社会的スキルを獲得していくことにあります。
ADHDも含めた発達障害児が、不適応状態に陥らないためにも、〝薬物療法″の視点はとても必要だと言えます。
そして、服薬後にも、継続した支援を行っていくことで、徐々に支援の効果が出てくるのだと感じています。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も薬物療法も含めて、発達障害児への支援の方法を検討していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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