愛着(アタッチメント)とは、〝特定の養育者との情緒的な絆″のことを指します。
幼少期からの養育者との情緒的な絆が不安定であると、愛着障害など愛着に問題を抱える可能性あると考えられています。
愛着障害に至る最たる要因として、〝虐待″があります。
そして、虐待を受けた養育者が自分の子育てにおいても同じように子育てをしてしまうといった問題、つまり、〝愛着の世代間伝達″があると言われています。
それでは、愛着の世代間伝達は本当に続いていくのでしょうか?
そこで、今回は、虐待の連鎖が続くのは本当なのか?について、臨床発達心理士である著者の意見も交えながら、愛着の世代間伝達をキーワードに理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「米澤好史(2022)愛着障害は何歳からでも必ず修復できる.合同出版.」です。
【虐待の連鎖が続くのは本当なのか?】愛着の世代間伝達について考える
以下、著書を引用しながら見ていきます。
専門家でも「虐待されて育った親は自分のこどもに虐待してしまう」という虐待の世代間伝達、連鎖の存在を指摘します。
著書の内容から、虐待の世代間伝達(愛着の世代間伝達)は、専門家においても指摘されているといった記載があります。
著者もこれまで、様々な愛着障害に関する書籍や、実際の現場において、愛着に問題を抱える子どもとその保護者と関わった経験が少なからずあります。
こうした経験を踏まえて見ても、虐待が連鎖する可能性は決して少なくないと感じています。
それでは、虐待の世代間伝達(愛着の世代間伝達)は、絶対に生じるものなのでしょうか?
以下、引き続き著書を引用しながら見ていきます。
しかし、それは絶対と言えることではなく、よい支援やよい経験と出会うことで変えていけることは実践研究や調査研究で明らかです。
「親がこども時代に経験した親からのかかわりで傷ついたことが、直接こどもへのかかわりに世代間伝達として影響しているのではなく、子育てのとき、改めて自分の親から直接的にも間接的にも、『二度傷つく』ことで、こどもへのかかわりに影響される」ということでした。
著書の内容から、虐待の世代間伝達は、絶対に生じるものではなく、経験によって変えていくことも可能であるとこれまでの研究から明らかになっています。
そのため、虐待の世代間伝達が見られるケースもある中で、親自身が良い支援を受けたり、良い人との出会いを経験していく中で、変わっていくことも十分にあると言えます。
負の連鎖が生じる要因として、著書にあるように、親が子育てをする中で、自分の親から直接的に自分の子育てについて批判されたり、あるいは、間接的に過去の親の育て方を思い出すといった背景があるとされています。
つまり、一度、養育者・親から傷つくことに加えて、さらに、自分の子育てにおいても、直接的・間接的に〝二度傷つく″ことによる影響が、虐待の世代間伝達(愛着の世代間伝達)の要因だと考えられています。
そのため、負の連鎖を断ち切るポイントとして、親が自分の親と関係を修復したり、逆に、様々なサポートを受けたり、良き理解者と出会うことで、親と心理的な距離を取って子育てができることが大切だと言えます。
つまり、一度は傷ついた親との関係性を修復あるいは見つめ直し整理していくことで、二度傷つく状態を作らないことが必要だと言えます。
支援の上でも、子どもへの対応に加えて、親への心理的な支援はとても重要な観点になってきます。
著者は、愛着に問題を抱えている子どもの親支援において大切にしていることは、良き理解者になる姿勢を見せ続けることだと考えています。
良き理解者とは、親の思いに寄り添いながら、日々の子どもの対応を丁寧に行い、その状況を共有していくことだと思います。
支援は簡単には進まないこともありますが、親支援がうまく行きはじめると、親が自分の力だけでなんかとか子育てしようとはせずに、他者に頼ることの大切さを感じ始める頃から変化の兆しが出てくるのだと思います。
そして、親が変わり始めると、子どもの関わり方にも変化が生じ、情緒的な交流の増加、子どもの視点に立って物事を考える様子が増えるなど、より親子関係が安定していく可能性が高まります。
もちろん、愛着障害の親支援以上に、子どもへの支援を優先することが必要だと言えます。
それは、親の方が介入の難しさが多く、子どもの方が介入のしやすさが高いからだと言えます。
以上、【虐待の連鎖が続くのは本当なのか?】愛着の世代間伝達について考えるについて見てきました。
繰り返しになりますが、虐待の世代間伝達、つまり、愛着の世代間伝達は必ず起こるわけではなく、負の連鎖を断ち切ることは十分可能だと言えます。
そのためにも、愛着障害の子どもへの早期発見・早期支援が大切になってきます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も愛着障害への理解を深めていきながら、今後の療育実践に役立てていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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米澤好史(2022)愛着障害は何歳からでも必ず修復できる.合同出版.