自閉症(自閉スペクトラム症:ASD)とは、〝社会性の障害″〝コミュニケーションの障害″〝こだわり行動″を特徴とする発達障害です。
上位の特徴にもあるように、自閉症の行動特徴を理解し対応していくためにも、〝こだわり″行動への理解はとても大切です。
それでは、自閉症児のこだわり行動への対応方法にはどのようなものがあると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、自閉症児のこだわり行動への対処法について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「白石雅一(2024)おもちゃ教材で育む人間関係と自閉スペクトラム症の療育~親・保育園・幼稚園・学校・児童発達支援・放課後等デイサービスのためのガイド~.東京書籍.」です。
自閉症児のこだわり行動への対処法
自閉症の〝こだわり行動″の特徴には、①変えない、②やめない、③始めない、といった特徴があると考えられています。
関連記事:「【自閉症児のこだわり行動の3つの特徴】〝変えない″〝やめない″〝始めない″を通して考える」
それでは、次に①~③のそれぞれの特徴について、著者の経験談も交えながら具体的に見ていきます。
①変えない
以下、著書を引用しながら見ていきます。
ルーチンの中に、緩やかに変化を加える
著書には、〝こだわり行動″に対して、否定的な対応・関わりはせず、まずは①変えない(変えたくない)といった本人の思いを受容する姿勢が大切だと記載されています。
その際に、①変えない、といった行動の内容をよく観察することも大切です。
著者は、自閉症児・者との関わりが多くありますが、〝こだわり行動″の対象や強度などは人によって異なると実感しています。
そのため、①変えない、といった〝こだわり行動″の内容について、よく把握していくことが必要です。
そして、次に、①変えない、といった〝こだわり行動″に対して〝緩やかに変化を加える″ことが大切です。
著書には、少しの変化に応じられた際に、即時のフィードバック(褒めるなど)を活用することが大切だと記載されています。
著者も、子どもがこだわっている内容、例えば、物へのこだわり→貸し借りが難しい、順番やルールがうまく守れない、といった内容に少しでも変化が見られた場合には、褒めることを心がけています。
②やめない
以下、著書を引用しながら見ていきます。
交換条件を提示して、やりとりする
著書に〝交換条件の提示″とは、例えば、子どもがこだわっていることを止めることが難しい状況に対して、○回までなら良い、○分までなら良い、など回数や時間などで交換条件を提示する方法です。
著者もこの方法は療育現場ではよく活用しています。
例えば、特定の遊びに没頭しており、帰りの時間が迫っていても遊びを終えることができない②やめない(やめることができない)、といった状況に対して、回数や時間による事前の提示を行い、交渉の余地を作るといった方法です。
ここで大切なことは、②やめない、といった状態を否定的に見ない態度だと思います。
そして、その上で、②やめない、ことを〝次の行動に切り替える″方法を個々に応じて見出していくことだと思います。
〝切り替え″のポイントは様々かと思いますが、その中でも、回数や時間による提案は効果的だと思います。
③始めない
以下、著書を引用しながら見ていきます。
見通しをもたせる
著書には、③始めない、ことの背景には、不安感や過去の否定的な体験等が影響していることも想定されるため、その上で、〝見通しをもたせる″関わりが大切だと記載されています。
つまり、本人の不安感などネガティブな感情に対して、事前に対策を講じる(見通しを立てる)必要があります。
著者もこの〝見通しをもたせる″関わり方は非常によく行います。
というのも、自閉症の人は過去のネガティブな体験を明瞭に記憶してことがあるため、何かきっかけがあるとその記憶がフラッシュバックすることがあります。
そのため、ネガティブな記憶に対して、事前に安心感が持てる環境調整が③始めない、ことへの対応においてとても重要になってきます。
以上、【自閉症児のこだわり行動への対処法】療育経験を通して考えるについて見てきました。
〝こだわり行動″の特徴でもある①変えない、②やめない、③始めない、にはそれぞれ異なる背景があると思います。
そして、それぞれの対処法にも子ども一人ひとりに応じて個別性があると感じています。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場でよく見られるこだわり行動に対して、効果的な支援方法を見出していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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