自閉症に人たちには様々な情報を統合することの苦手さ、つまり、〝弱い中枢性統合″があると考えられています。
一方で、物事の細部に注意が向く傾向があるといった細部知覚に優れている特徴もあります。
私たちは、日々の様々な情報を関連付けながら、物事の全体像を解釈・説明しようとします。
自閉症の人たちは、全体像よりも細部に目が行く傾向があります。
それでは、〝弱い中枢性統合″にはどのような具体的な特徴があるのでしょうか?
そこで、今回は、自閉症の中枢性統合の特徴について、臨床発達心理士である著者の経験談から、弱い中枢性統合に関連する事例を見ていきたいと思います。
自閉症の〝弱い中枢性統合″の事例
著者の療育現場には、自閉症の子どもたちが多くいます。
子どもたちに共通する特徴として、〝弱い中枢性統合″が見られます。
中でも、活動(遊び)の中でその特徴が見られます。
以下、1~4の事例を見ていきます。
事例1:アニメや映画の特定の部分を繰り返して観る
A君は、興味のある遊びを繰り返すことが好きなお子さんです。
以前、夏休みのプログラムで実施した映画館ごっこでクレヨンしんちゃんの映画を観たときのことです。
上映時間は2時間程度のものでしたが、その中の特定のシーン(数分程度)を大爆笑で観ているA君がとても印象的でした(笑)!
A君は周囲の子どもたちなどお構いなしにそのシーンを再び見ようと巻き戻しボタンをすかさず押しました。
もちろん、周囲の子どもたちからのクレームが出ましたので、映画上映後に一人で観られる環境を設定しました。
この映画以外にも、A君は好きなシーンを繰り返して観る特徴が他の場面でも多くあったように思います。
事例2:興味のあるキャラクターが限定している
ゲーム好きなB君はよくゲームの攻略本を一人黙々と見るお子さんでした。
B君が見ていた対戦ゲームには様々な登場人物がいます。
ざっと数十名はいたかと思いますが、著者がB君にキャラクターの話を持ち掛けると、ある特定のキャラクターしか話題にほとんど上がってきませんでした。
話を進めていくと、そのキャラクターのみを使用しているとのことでした。
それから、一年後、そのゲームの話をすると、一年経っても同じ特定のキャラクターを使用していました!
ゲーム以外でも、アニメや漫画で好きなキャラクターが限定しているなど似た傾向がB君にはあったように思います。
事例3:活動内容が特定の対象に集中しやすい
C君は、遊びの活動がとても限定しているお子さんです。
C君が一度遊びにハマると非常に高度なレベルにまでその遊びが熟達していくことがあります。
中でも、折り紙遊びは年中折り続けており、よく袋一杯に完成した折り紙をご家庭に持ち帰っていたことを今でもよく覚えています。
大人が折ることが難しいものまで容易にと折るなど、気づくと達人レベルになっており驚かされたことを今でもよく覚えています!
このように、C君は特定の対象にハマりやすく、一度ハマると、繰り返しその遊びに集中することが多くあったように思います。
事例4:車、電車、虫など特定の領域への興味が突出している
自閉症の人たちの中には、よく○○博士など特定の領域で突出した知識を持っているケースが多くあると言われています。
著者がこれまで見てきた子どもたちの中にも、車博士、電車博士、虫博士など、大人をはるかに凌駕する知識を持っている子どももいました!
一方で、興味の幅が狭いことも特徴としてあるように思います。
そのため、一度、興味のあることに目が行くと、高い好奇心を持って情報収集しようとすることがあります。
中には、道路標識やガソリンスタンドの記号など非常に限定した知識を豊富に持っているユニークなお子さんたちもおりました。
以上、【自閉症の中枢性統合の特徴について】療育経験を通して考えるについて見てきました。
〝弱い中枢性統合″の特徴は遊びの中では、興味関心の幅が狭い一方で、その領域について豊富な知識や理解を持っているケースもあります。
そのため、弱さと強さの両方を持ち合わせているように感じます。
著者ができることは、〝弱い中枢性統合″による強みを理解していきながら、生活の中での困り感をサポートしていくことだと考えています。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も自閉症の特性理解を深めていきながら、必要なサポートを試行錯誤していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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下山晴彦(監修)(2018)公認心理師のための「発達障害」講義.北大路書房.