〝社会性″とは、様々な定義や表現があるかと思いますが、一つ定義を取り上げると、〝人とある対象を共有し、その共有体験を楽しむといった共同行為″だと言えます。
著者は、発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育をしています。
療育経験を通して、子どもたちの〝社会性″の育ちを実感する機会が多くあります。
それでは、発達障害児への支援を対象とした際に、どのような社会性への支援方法があるのでしょうか?
そこで、今回は、療育現場(発達障害児支援の現場)における社会性への支援について、臨床発達心理士である著者の経験談をもとに理解を深めていきたいと思います。
社会性への支援③:発達障害児支援の現場を通して考える
著者が〝社会性への支援″として、大切にしていることの一つが〝他児の強みや良い性格などを通して関わりを発展させる″です。
子どもたちには、一人ひとり強みや弱み、得意・不得意などがあります。
例えば、○○が得意、○○に詳しい、○○が好き、優しい性格、面白い性格、気遣いができる性格など人それぞれ個性があります。
こうしたお互いの違い、個性を知ることは社会性の育ちにおいてとても重要です。
なぜなら、人はもともと多様であるため、多様性を理解すること、つまり、他者との違いを理解していきながら、他者と共に生きていくことが社会を生きることだからです。
それでは、次に、他児の強みや良い性格などを通して関わりを発展させることができた事例を見ていきます。
事例1:お互いの長所を理解して関係が深まったAちゃんとBちゃん
小学校高学年のAちゃんとBちゃんは高学年になってから著者が勤める事業所で知り合うことになった子どもたちです。
当初は、著者からみてAちゃんとBちゃんは仲良くなれる予感はしていましたが、なかなか接点が持てず、あまり話すことはありませんでした。
同じ事業所で活動する時間があっても、それぞれ別の活動をしていることが多くありました。
著者はAちゃんとBちゃんの性格はよく把握していたため、時間のある時に、お互いの良い点を意図的に伝えるようにしていました。
例えば、〝Aちゃんは面白く優しいところがたくさんある性格″、〝Bちゃんは明るく前向きで優しい性格″、などそれぞれの良さを伝えていました。
こうした取り組みが少なからず影響したのか、AちゃんとBちゃんとの間で接点が出てきました。
二人は互いの良さを実感できるようになり、気づくといつも一緒にいるようになりました。
学校であった出来事や楽しかったこと、嫌だったことを共有・共感できる大切な仲間になることができました。
そして、お互いの性格も言葉にできる部分は少なかったかもしれませんが、感覚としては理解しているように感じました。
この事例は、直接関わりの無かった子どもたちの良さ(主に性格について)を著者が双方に伝えていくことで、お互いが接点を持ちはじめ、最終的には深い友人関係にまで発展させることができたケースです。
この事例から、子どもたちの良さを大人が伝えていくことで、子ども同士に接点が生じ、そして、時間をかけて仲間関係を発展させることができるのだと実感させられました。
事例2:お互いの好きなことを知って関係が深まったCくんとDくん
互いに小学校高学年のCくんとDくんは一年経過した時点では、ほとんど関わりがないほど距離感のある子どもたちでした。
不仲だったわけではありませんが、もともと遊びの内容が違っていたため、同じ空間にいることが少なく、そのため関わることはほとんどありませんでした。
一方で、著者はCくんとDくんのそれぞれと関係を深めていきました。
その中で、著者はCくんとDくんの興味のツボにある種の共通性を見出すことができました(感覚的にではありますが)。
それ以降、著者は興味のツボを相手も同じようにもっていることを伝えるようにしていきました。
例えば、著者がCくんに対して、〝Dくんがこの間○○の話を楽しそうにしていた″、〝○○の絵を笑顔で描いていた″、などCくんが興味を引く話題をDくんのいないところで意図的に伝えていくなどです。
すると、これまでお互い話すことのなかったCくんとDくんとの間で会話が生まれるようになりました。
その会話は日に日に増えていき、今では、一方から他方にその興味のある話題を嬉しそうに話しかける様子も出てきました。
この事例は、直接関わりの無かった子どもたちの好き(興味があること)を著者が把握して、両者を意図的に繋げる関わりを工夫したことで、良い友人関係にまで発展させることができたケースです。
この事例から、子どもたちの共通の好きなことを大人が伝えていくことで、子ども同士に接点が生じ、そして、時間をかけて仲間関係を発展させることができるのだと実感させられました。
以上、【社会性への支援③】発達障害児支援の現場を通して考えるについて見てきました。
子どもたちには一人ひとり輝かしい個性があります。
その個性・性格を関わる大人が把握してくことは、他児との交流を増やす大切な要素になると思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も子どもたちの個性を深く理解していきながら、子ども同士がお互いの良さを知るためのきっかけ作りとその発展に貢献していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
参考となる書籍の紹介は以下です。
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