著者は長年、発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育をしてきています。
発達障害児、中でも、自閉症児に特に多い行動特徴として、〝思ったことを口にする″といったものがあります。
例えば、見た目の体型をそのまま口に出す(あの人太っているね!!)、勝ち負けのある遊びで負けた相手に(弱いね!!)とそのまま伝える、などがあります。
こうした行動の背景には、〝心の理論の弱さ″、つまり、〝他者視点の苦手さ″が影響していると考えられています。
それでは、思ったことを口にする子どもに対してどのような対応方法が有効なのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害児支援で必要な思ったことを口にする子への対応について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「加藤博之(2020)親も教師も悩み解決! こんなときどうする?発達が気になる子への指導・支援Q&A100.明治図書.」です。
思ったことを口にする子への対応についての注意点
以下、著書を引用しながら見ていきます。
明確に言えることは、口から出てしまった言動に対して、その都度注意をしても効果がないということです。
私たち大人は子どものよくない行動・振る舞いに対して注意をすることがよくあります。
一方で、発達障害児が見せる〝思ったことを口にする″行動の背景には、先にみた〝他者視点の苦手さ″が影響している場合があります。
〝他者視点の苦手さ″とは、他者の視点に立って物事を考える能力・イメージする力の弱さだと言えます。
こうした〝発達特性″に対して、いくら注意しても効果がないと著書には記載があります。
また、注意を繰り返すことで、叱責された体験が積み重なることで大人に対する信頼関係の欠如や自己否定感の高まりなど、ネガティブな経験が積み重なる恐れもあります。
最悪の場合、二次障害へと発展してしまう可能性もあります。
それでは、〝他者視点の苦手さ″に対して、どのような支援が必要なのでしょうか?
次に、この点について見ていきます。
他者視点を獲得するための支援方法について
著書には、相手の気持ちを読み取る支援方法として、様々なサポート方法が記載されています。
今回は、その中でも、実際に著者が療育現場で実践しているもので有効だと感じているものを取り上げていきます(以下、著書引用)。
日頃から周りが冗談を言う機会を設ける
イメージする力を育てる
他者と協力して何かを成し遂げる経験を増やしていく
以上の3つの支援方法は〝他者視点″の獲得において非常に効果を発揮すると実感しています。
発達障害児の多くは、冗談と冗談でないことを区別することを苦手としています。
そのため、日頃から冗談を言い笑い合える環境作りは、想像力を高める力に大きく貢献していくと感じています。
イメージする力は様々な遊びを通して鍛えることができます。
著者はよくごっこ遊びを行いますが、現実のように物事を再現すること、それを他者と共有する体験もまた想像力の力を養うことに貢献すると思います。
集団遊びの醍醐味は、共通の目標・目的に向けて他者と協力して成し遂げる達成感を味わうことでもあります。
ルール遊びやごっこ遊びの中で、他児と協力して何かを達成する活動内容を盛り込むことで、他者の行動・言動を読み取る練習にもなります。
著者はよく戦いごっこをやりますが、チームを分けて遊ぶ(大人チームVS子どもチームなど)ことで、チームで協力する喜び(他者視点の獲得)を得ることができると感じています。
以上、【発達障害児支援で必要な思ったことを口にする子への対応】療育経験を通して考えるについて見てきました。
相手の気持ちを汲みとる練習方法としては、〝ソーシャルスキルトレーニング″もまた有名です。
一方で、〝ソーシャルスキルトレーニング″は、特定の場面・状況が設定された中での練習方法のため、環境変化の激しい場面においては般化が難しいこともあると思います。
その他、最近では〝ソーシャルスキルシンキング″といったものも取り上げられるようになってきています。
関連記事:「【自閉症児への支援】ソーシャルシンキングを例に考える」
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で関わる子どもたちが様々な他者の思いや心情を汲みとっていける力を育んでいけるように、日々の実践と試行錯誤を大切にしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「【療育(発達支援)で大切なこと】〝イメージする力″を育てることの重要性」
関連記事:「【自閉症の心の理論への支援について】療育経験を通して考える」
加藤博之(2020)親も教師も悩み解決! こんなときどうする?発達が気になる子への指導・支援Q&A100.明治図書.